今はエンジニアだけどプロジェクトマネージャー(以下、PM)になりたい人、なりたくないけどやらなければいけない人、気づいたらPMっぽいこともやっている人、色々居ると思います。
ですが、いざやろうと思っても何をしたら良いか分からないと言う人も多いでしょう。
そのため、まずは上司や経験者にどうすれば良いか?という質問をすると思いますが、
- やってみないと分からないので、とりあえず実践だ!
- 習うより慣れろ!
- 経験に勝るものは無い!
- 失敗して覚えろ!
などという、ありがたくも役に立たないお言葉を頂くことも多いはず。
しかし、
- 何事も最低限の知識は必要
- 経験する前に学習したいのに、いきなり経験しろっておかしくない?
- しなくてもいい失敗は避けるべき
と言うのが、言われた側の本音だと思います。
そのため、今回は以下の3点でPMの勉強法について書いてみたいと思います。
1.資格勉強で基礎知識を覚える
2.現場で覚える
3.読書で覚える
■資格勉強で基礎知識を覚える
PMの知識に限らず、体系立てて覚えたり網羅的に覚えたい場合は、資格取得の勉強を行うのが一つの手です。
そして、プロジェクトマネジメントに関しては、PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)という資格が存在します。
PMPの取得には条件もあるので無理に資格を取得する必要はありませんが、知識を蓄える為に勉強するというのは有効な手段となります。
ただし、面倒なのでここでは細かい学習内容には触れません。
PMPの概要とメリット程度の記述になりますので、興味がある人はご自身で学習してみてください。
PMPとは
- PMIという組織が定めた "知識体系" に沿って理解していることを証明する国際資格
- 知識体系標準(所謂あるべき論)を理解するというのがポイント
- 資格取得には条件があり、更新するためにも継続的な活動(3年間で60時間以上の学習実績)が必要
- 更新費用も掛かるので、取得する際はなるべく会社に費用を出して貰いたい資格
PMP的なプロジェクトマネジメントとは
- 「立ち上げ、計画、実行、監視/コントロール、集結」というプロセスがあり、「スコープ、品質、スケジュール、予算、資源、リスク」の制約条件のバランスをとること、という定義
- PMPの資格を取るには、PMBOKガイドに沿った学習が必要
PMBOKガイドとは
- 共通(標準)用語って重要だよね、すべて網羅するのは無理だけどガイドは必要だよね・・・という考えから作られた分厚い本のこと
- 数年単位で見直しが入るので、資格取得を目的にする場合は版番号に注意(結構中身が変わる)
- 書籍はでかい、重い、高い、読みづらいというハイスペック鈍器
- PMI会員なら無料でPDFをダウンロード可能
- 真面目に理解するなら必読だが、概要を押さえるのが目的ならPMP受験用の書籍を探した方が良い(その後にPMBOKガイドで深掘りする方が理解しやすい)
学習するメリット
1.標準的な知識(あるべき姿)を得られる
管理系の仕事は、一般的に経験則を重視しがちです。
ですが、経験則だけでは初心者にいきなり応用問題をやれというのに等しいです。
それでも無理にやらせる人や現場も多いため、PMの能力はピンキリになりやすいという問題があります。
管理というのは誰でも簡単にできるものでは無く、特殊技能の一つです。
そのため、知識も経験も無い状態だと失敗するのが当然ですので、まずはPMPの勉強を(流し読みでも良いので)行い、どんな知識が必要か、どういう点に気をつけるべきか等を抑えておくと良いでしょう。
なお、PMPは日本の商習慣に合わせた内容にはなっていないため、現場と乖離している部分も多々あります。
ですが、「本来ならこうあるべき」という内容が記載されているので、まずはあるべき姿を覚え、その上で現場に合わせた管理を行う方が自然です。
(逆に、現場で管理を経験した後にPMPの資格を取ろうと勉強すると、現場との乖離によって悶絶することが多々あります。)
2.関係者と意思疎通がしやすくなる
普段、エンジニアとして働いていて、なんでPMやPL(プロジェクトリーダー)はそんなことを聞いてくるのか?なんでそんなことを問題視しているのか?別にそんなのどうでも良くないか?という疑問が湧くことはありませんか?
これは、PMやPLがエンジニアでは無く管理者としての視点で物事を見ていることに起因します。
PMPの学習を行うと、管理者側の視点を(多少なりとも)得ることが出来るようになり、PMやPLが気にしていることを理解しやすくなります。
そのため、エンジニアとしてPMやPLと会話するときでも、相手の本当に聞きたいことがなんなのかを理解した上で話が出来るようになり、無駄な会話のやりとりや軋轢を生まずに済みます。
また、自分がエンジニアからPMになった場合、エンジニア視点での見方も出来るため、エンジニアが回答しやすい質問をすることも出来るようになります。
結果として、話の通じやすいPMになるため、プロジェクトの運営がしやすくなります。
話の通じるPMって良いですよね・・・
■現場で覚える
さて、PMPの勉強によるメリットまでお伝えしましたが、
- 別に資格はいらないし試験勉強はつまらない
- 忙しくて勉強する時間が取れない
- 現場で仕事しながら出来る学習って何か無い?
という人も居ると思います。
そのような方には、現場で人を見るというのをお勧めします。
現場で人を見よう
1.PMやPLの動きを見よう
上手く回っているプロジェクトには、上手く立ち回っているPMやPLがいます。
上手く立ち回れると言うことは、その人なりの上手くいくやり方や失敗しない(しにくい)方法を確立していることが多いです。
ですので、手っ取り早くその人たちから色々と吸収を・・・そんな人いない?そもそも接点が無い?PMは居るけど役に立っていない?むしろ邪魔?
そういう残念な現場で働いている場合は、次の項目へ。
2.似たような役割をしている人を見よう
プロジェクトメンバーの中には、役職としてのPMじゃなくても似たような役割(人・物・金・リスク・時間・品質の管理)をしている人が必ずいるのでその人を探しましょう。
ここでも居ないと回答する人が居るかもしれませんが、居ないとプロジェクトが破綻するので絶対どこかにいます!
たとえば・・・
- PMの代わりにPLが兼任している
- PMが頼りなくて自発的に頑張ってる人がいる
- プロパーの代わりにパートナーが(仕方なく)やっている
- 実は複数人で役割を分担している
というパターンが考えられますので、周りをよく見て探しましょう。
複数人で分担している場合は、本人が役割を受け持っているという自覚が無いまま行っていることもありますので、本人がどう考えているかではなく、行っている仕事から判断しましょう。
また、管理を細分化しているパターン(たとえば、1つのプロジェクトをいくつかのグループに分けて、グループ単位で管理している等)もあります。
それでも居ない場合は、炎上して手が付けられなくなっているか、既にPMが体調不良等で離脱しています。
3.どう見れば良いか?
・自分の立場から(客観的に)相手を見る
前述のPM、あるいはPMの役割を兼ねている人を見つけたら、以下の様に見てみましょう。
- その人の ”PMとしての” 良いところと悪いところを客観的に見る
- 性格的に合わない人でも、管理の手腕がある人なら割り切って見る(無理に好きになる必要は無い)
- 良いところは取り入れ、悪いところはどうやったら防げるかを考える(自分ならどうするか考える)
ここでのポイントは、 自分が相手をどう思っているのかは置いておいて、客観的な視点で相手を見ること です。
能力の高さが人柄の良さとイコールであるとは限りません。
だからといって、自分と合わないからその人の働きを見ないというのは非常に勿体ないです。
あくまでも、PMとしてその人がどういう考えで動いているのか?技術的・手法的に自分でも活用出来そうなものは無いか?何故、上手くプロジェクトが回っているのか?(または、上手く回っていないのか?)と言うのを 意識しながら 見ましょう。
その結果、相手の良さを知って上手くつきあえる様になる場合もあります。
逆に、やっぱり合わなかったというパターンもありますが、その場合でもPMとしての動きに注目することで何かしら吸収できると思います。
・相手の立場から(相手の主観で)自分を見る
自分の立場から相手(PM)を見ることが出来たら、今度は相手(PMの役割を持つ人)の立場から自分を見てみましょう。
- 相手から、自分はどう見えるか?
- 相手は、自分がどう動いたら嬉しいか?
- 相手が自分に質問をしたとき、どういう答えが欲しいか?
ここでのポイントは、 相手の視点(相手の主観)からは、自分がどう見えているのか?相手は自分にどういう振る舞いを期待しているのか?を考えること です。
(自分の主観ではありません。)
例えば、PMから突然作業の進捗や課題等を聞かれた場合、PMはどういう状況でその話を振ったのか?と言うのを考えてみると、
- 何か問題が発生したのでそれを解決したいのか?
- 顧客から今後のスケジュールを聞かれたので、最新情報を取得したいのか?
- 他に仕事を割り振りたいので、負荷状況を確認したいのか?
- 全然違う話をするための前振りなのか?
- 暇だから雑談したいのか?
等のパターンが思い当たります。
この時、相手の立場(PMは今どういう状況で、どんな返答を求めているのか?)を考え、自分に何を求められているのかを 意識してみてください。
そして、自分がPMの立場だったら、PMは自分にどういう返答をしてもらいたいか?自分がどう反応すれば、PMはその後の作業が進めやすいか?と言うのを考えながら対応すると、PM側の視点をなんとなく得ることが出来ます。
そうすると自分がPMになった場合に、どういう聞き方をしたらチームメンバーは自分(PM)が求める返答をしやすいのか?と言うのを考えることに繋がり、意思疎通がスムーズに行えるようになります。
(PMとして相手への情報開示の方法や与える情報量を判断し、欲しい返答を貰いやすくすることが出来るようになります。)
PMPの学習メリットでも似たようなことを書きましたが、結局のところPMの役割とは あらゆる関係者(経営者、上司、チームメンバー、顧客、人事、経理、etc)と調整を行い、プロジェクトを成功に導くこと です。
調整を行うには対話を初めとした対人スキルが必要となりますので、自分の立場と相手の立場、双方の視点を得ることを 意識しながら 仕事をすると、後々PMとしての仕事が楽になります。
・とにかく意識することが大事
人を見ることを "意識する" というのは凄く重要です。
意識していないと見逃すけれど、意識して人の動きを(分析目的で)見ると、見えてくるものが多々あります。
まずは、今の現場で試してみましょう。
これまで一度も意識したことが無かった場合、必ず何かしら得られるものがあります。
もしかしたら、PMになるために最適な人や状況が身の回りに存在しているかもしれません。
■読書で覚える
さて、最後は隙間時間にも出来る読書です。
プロジェクトマネジメントの書籍は色々ありますが、個人的には「トム・デマルコ」という方の書籍(通称デマルコ本)をお勧めします。
「トム・デマルコ」とは、プロジェクトマネジメントといえばこの人!的な存在です。
※個人の主観です。
デマルコ本とは
デマルコ本には、以下のような特徴があります。
- 現実のプロジェクトを調査した結果をまとめているので「SEあるある」な話が多く、単純に読み物としても面白いものが多い
- 10年以上前の書籍なのに、今でも頷ける内容が多い(つまり、本質を突いている、または10年前からあまり進歩していない・・・)
- PMPとは真逆な内容も多いので、資格取得を考えている人は資格取得後に読んだ方が衝撃が少なくて良い(PMPが理論上のあるべき論だとするなら、デマルコ本は現場の理想論)
- 本ごとに文体が違うので、一冊くらいは自分にヒットするはず
以下、各書籍のタイトルと抜粋した一文、および個人的な雑感を記述していきます。
1.ピープルウェア
実際のところ、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的と言うより社会学的なものである。
<雑感>
- 人、環境、チームが主体の内容
- 内容のバランスが取れているのでどれかは役に立つはず
- なるべく上の人(特に経営層や現場の作業環境をいじれる人)に読んでほしい一冊
- 全部は読めないのでとりあえず一冊だけというのなら、ピープルウェアを推奨
2.デッドライン
プレッシャーをかけられても思考は速くならない
<雑感>
- 小説形式で読みやすい
- 稀によくあるプロジェクトの問題と解決策を示唆している
- 実際にどこまで出来るかはともかく、この本に書かれている問題点を認識している人がPMをやると大失敗は少ない
- デスマーチ経験者にお勧め
3.アドレナリンジャンキー
25:沈黙は同意とみなされる
相手には、あきらめの沈黙と同意の区別がつかない
Amazon:アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン
<雑感>
- プロジェクトでよくあるパターン86種が載ってる(引用文は25パターン目)
- 1パターンにつき1~3ページなので隙間時間に読める
- 長文が苦手な人にお勧め
4.ゆとりの法則
管理がむずかしいのは、習得がむずかしい技能を必要とするからだ
Amazon:ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解
<雑感>
- 忙しい人こそ読むべき一冊
- 効率を高めることに囚われると変化が出来ない、という言葉が響く人へ
- 変化、成長、組織的学習とかに興味があればどうぞ
5.熊とワルツを
リスク管理は、プロジェクトについて心配することとは違う
<雑感>
- リスク管理に特化した一冊
- リスク=避ける という固定観念を持ってる人は読むと良いかも
- 管理の経験があると、過去の経験との照らしあわせで刺さるものがあるはず
以上、デマルコ本の普及活動プロジェクトマネージャーになるための勉強方法でした。