この記事は個人ブログにも同時に投稿しております。
先日NTTからこんなニュースリリースが配信されました。
NTTとIntel、新たなコミュニケーション基盤「IOWN」の実現に向けた共同研究契約の締結について
かっこいいですね!横文字と専門用語が多くてイマイチ何者か分かりませんがなんかワクワクしてきます。
IOWN構想というのは去年末辺りからチラホラと目にしていましたが、よく分かっていません。
せっかくこんなカッコいい構想がなされているのに、キャッチアップしないのは勿体ないですね。IOWN構想が何を目指していて、どんな技術で実現しようとしているのか、その技術はどこまで研究されてるのかくらいは知っておいて損はないのではないかと思います。
IOWN構想1
IOWNはInnovative Optical and Wireless Networkの略語で、簡単に翻訳すると「光と無線の革新的なネットワーク」となります。
ここからおよそネットワーク関連の技術なのかなと伺えます。
これだけだと単純に5Gのような次世代通信規格だったり、今の光回線よりも早い通信方式なのかなと勘違いしてしまいますが、実はIOWN構想はネットワークレイヤを超えた次世代情報処理基盤の構想です。
ちなみに読み方はアイオンです。
IOWN構想を語る上で、以下の3つの要素が重要になります。
- オールフォトニクス・ネットワーク
- デジタルツインコンピューティング
- コグニティブ・ファウンデーション
早速一つずつ説明していきましょう。
オールフォトニクス・ネットワーク 2
物理学に関しては門外漢なのであまり触れませんが、一般知識として光速が一番速いという認識を皆さん持っていると思います。
タキオンとか原子炉内のベータ線とかの話は今はしていません。情報は光速以上では伝わらないから光速が一番速いという意味です。
結果、情報を伝える手段として光を基にした技術がたくさん研究されています。しかし皆さんの周りのインターネット環境を見て分かる通り、End-to-Endの通信において光が使われているのは一部分(光ファイバなど)のみで、端末そのものは光のままデータを扱うのは現状とても難しいです。
しかし端末から端末まで全てが光で通信できた場合、さらには伝送容量が大きく増えた場合、とても魅力的な世界になるのは手に取るように分かりますね。
事実5Gが整備され、主にIoTデバイスなどが大量につながる事で今以上の伝送容量が必要になり、医療や自動運転のミッションクリティカルな分野のため相当な通信速度を保証しないといけなくなります。
オールフォトニクス・ネットワークとは、その名の通りネットワークから端末まで、出来る限りの全てに光技術を用いて
- 電力効率100倍
- 伝送容量125倍
- E2E遅延1/200
を目指す、IOWN構想においても重要な土台に関する要素です。
実際にNTTでは1Tbit/s
の光信号を1,122km
の距離伝送することに商用環境で成功しているようです。3
その他にも光電融合技術と呼ばれる、光を用いた演算を行うチップや、
量子コンピュータとはまた別の、光技術による物理的な実験を通じてグラフ問題の解を求める次世代コンピュータ「光イジングマシンLASOLV」などの光技術を用いた技術全てを含んでオールフォトニクス・ネットワークになります。
デジタルツインコンピューティング 4
デジタルツインといった言葉はNTTやIOWN構想から出たものではなく、DARPAが造った単語です。
この時点での意味合いは現実世界に存在するデータを、センサなど様々な手法でコンピュータ上に集約し、現実世界の特定要素の複製を仮想空間に擬似的に生成する技術概念です。
目的は複製された仮想要素から先を予測し、現実世界の要素にフィードバックするといったもので、
例えば身近なものでは気象予測や、
話題になったのでは2018 FIFAワールドカップでも利用されたEPTS5などがあります。
IOWNにおけるデジタルツインコンピューティングは、このDARPAの造語であるデジタルツインを拡張したものになります。
デジタルツインはあくまで「気象」や「選手の動き」、「MRI」や「自動車の動き」など、個々の要素に対し用いられていました。
こういった現存する様々なデジタルツイン技術や、IoT機器等から集まった膨大なデータを融合し、「モノとヒト」、ある種世界そのものとも捉えられる空間をコンピュータ上に生成します。
これにより、地球・宇宙規模のシミュレーションや、都市課題の発見と解決、個々人の意思決定・能力開発などを行うことが目的となっています。
目的は違いますがSAOに登場するアンダーワールドに似てますね!フルダイブはできないと思いますが・・・
コグニティブ・ファウンデーション 6
IOWN構想全体に共通する関連技術の中にIoTと5Gがあります。5Gが整備され、IoTデバイスが増え、様々なICTソリューションが生まれ、中でも増えたIoTデバイスとエッジコンピューティングにより管理が必要な機器が爆発的に増えることが予想されています。
こういった、あらゆるモノをつなぐデバイスとその制御を行うための目的としてコグニティブ・ファウンデーションという概念が存在します。
Kubernetesはコンテナを管理する「オーケストレーションツール」の一種ですが、コグニティブ・ファウンデーションはあらゆるデバイス・ICTリソースの「マルチオーケストレーションツール」を含んでいると捉える事ができます。
データストアや、分析基盤としての一面も持ち合わせています。
この概念の理解を助けるものとして、スマートシティが挙げられます。
例えば会津若松市では、会津若松+7といった市民・移住者・観光者向けプラットフォームがあります。
これは「会津若松+」といった名前で提供されているデジタルコミュニケーションプラットフォームと、それを支えるデータ収集・分析基盤としてのデータプラットフォームから成り立っています。
これはある種のコグニティブ・ファウンデーションによるサービスであると捉える事ができます。
(※開発時にこの単語を意識したかどうかは置いといて)
IOWN構想は、これら3つの要素を持って2024年に仕様の策定を行い、2030年に実現することを目指しています。
IOWN構想は全体を通して、他者との相互理解と多様性、視点・体験を共有し、人々の価値観をアップデートすることが目的になっています。
そこから、新たに未来予測という価値を新たに創出し、正確かつ迅速な予測と分析を通じて未来を変える事が鍵となっています。
また、現在ではNTT、intel、SONYの三社によりIOWN Global Forumが立ち上げられています。8
ここまででIOWN構想が何者で、どんな技術が用いられていて、何が目的なのか、大雑把にでも理解できたかと思います。
ここから更に詳しい技術的な事や研究成果などは、参考文献として下記にまとめているのでそちらを参照ください。