ステガノグラフィ(隠写術)
ステガノグラフィ(Steganography) とは、秘密の情報を一見普通のデータに見える媒体に隠す技術であり、たとえデータが傍受されたとしても、秘密が含まれていることに気づかれないようにします。
通常は、暗号化されたメッセージをさらにステガノグラフィで画像や動画に埋め込むことで、「二重の保護」が実現されます。
簡単な理解
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暗号化:情報の内容を読めなくする(が、暗号だとバレる)
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ステガノグラフィ:情報を送っていること自体を隠す(「不可視の通信」)
一般的なステガノグラフィの媒体
媒体 |
隠蔽方法 |
画像 |
ピクセルの最下位ビット(LSB)、透明度レイヤー、色チャネルの微差など |
音声 |
音声波形の微弱な変調、エコーに埋め込む手法など |
動画 |
各フレームへの情報埋め込み、フレーム間の明度差の操作など |
テキスト |
空白の数、綴りのバリエーション、フォントの微小差異、Unicode操作など |
ネットワーク |
TCP/IPパケットの順序や偽装されたフィールドに情報を埋め込む |
暗号化との違い
項目 |
ステガノグラフィ |
暗号化 |
気づかれにくさ |
情報があるとは気づかれにくい |
一目で暗号文と分かる |
改ざん耐性 |
一般的には弱い |
通常は強い(鍵あり) |
情報の守り方 |
情報を「隠す」 |
情報を「鍵でロックする」 |
主な利用シーン
シーン |
説明 |
デジタル著作権透かし(例:抖音の「隠しコード」) |
画像や動画の出所追跡、無断転載防止に活用 |
情報対抗(例:ダークウェブ通信) |
機密情報の存在を隠しながら安全に伝達する手段 |
データ完全性検証 |
改ざん検出のための不可視マーカーとして使用 |
マルウェア通信 |
画像やDNSパケット内にコマンドを隠す(APT攻撃でよく使われる) |