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KubernetesのPodの削除のときの動作を見る

Last updated at Posted at 2020-04-26

はじめに

Kubernetesを使ってアプリケーションを公開する場合、Podという形で実行されます。
そのPodの中に複数のContainerが存在し、そのContainerの中でプログラムが実行されます。
Podは一時的なリソース( relatively ephemeral (rather than durable) entities )です。
なので、中に含まれるContainerも一時的なリソースです。

永続的なアプリケーションを提供する場合、一時的なリソースであるいう部分に気を付けなければなりません。
そのアプリケーションの一部のPodが削除されることを想定しなければなりません。
削除された後に再度Podが立ち上がる機能はKubernetesが DeploymentStatefulSetDaemonSet で提供しています。

という訳でPodが削除される際のKubernetes上での処理の流れをPodへの設定値とともに追いかけたいと思います。
なお、その項目に関する公式ドキュメントは Podの終了 にあります。

この記事内で使用するソースコードは、 walk8243/kubernetes-pod-delete にありますので、是非ご利用ください。

全体の流れ

仮にPodの中に3つのContainerが含まれているとします。
そのPodにおいて、Podの削除処理が始まりました。
すると、Podのステータスを Terminating に変更して、Pod内のそれぞれのContainerにおいて preStop で定義されている処理の内容が実行されます。
preStop の処理が完了した後、Containerの実行コマンドに対してシグナルの TERM が送信されます。
このシグナルはNode.jsの場合、 process.on('SIGTERM', () => {}) でイベントとして受け取ることができます。
Pod内の全てのContainerにおいて実行処理が終了したときにPodも終了します。

下の図は、上の説明を図化したものです。
青い枠はPodの削除処理が始まってからの生存期間、緑の枠はContainerの削除処理が始まってからの生存期間を表しています。

全体の流れ.jpg

Pod内のContainerは、Podの削除処理が始まってから terminationGracePeriodSeconds で定義される猶予時間(grace period)の間に実行処理を終了させなけれなりません。
もしContainerが終了しなかった場合は、Containerの実行処理に対して SIGKILL が送信され、強制終了させられることとなります。
但しこれには例外があり、猶予時間が来た時にまだ TERM シグナルを送信されていなかった場合には、 2秒間 の猶予が与えられた上で TERM シグナルが送信されます。

猶予時間の追加.jpg

実際に試してみる

以下の例では、全て猶予時間を 15秒 に設定しています。
また、 SIGTERM を受信してからは 1秒ごと にログを出力するようにしています。

この検証で使用したものは以下です。

preStopの処理時間 ≒ 猶予時間

preStopの処理時間を 15秒 として実行しました。

slack-1.jpg

内部処理の実行速度の関係でログの順序は逆転していますが、 preStopを実行してから15秒後のログと SIGTERM 受信のログはほぼ同時刻に送信されていることが分かります。
また、猶予時間の15秒を経過してからも多少の猶予時間があることが確認できます。

preStopの処理時間 < 猶予時間

preStopの処理時間を 10秒 として実行しました。

slack-2.jpg

preStopを実行してから15秒という時間を待つことなく、preStopの処理が完了後に SIGTERM 受信のログが送信されています。
また、preStopを実行してから15秒後にはログが送信されなくなりました。猶予時間が伸びていないことが確認できます。

preStopの処理時間 > 猶予時間

preStopの処理時間を 20秒 として実行しました。

slack-3.jpg

preStop が実行されてから20秒が経過しました。 というログが送信されてきませんでした。
つまり、その前にPodが強制終了したということです。
また、preStopの処理時間を15秒に設定したときと同様に、preStopが実行されてから15秒後に SIGTERM 受信のログが送信されています。
こちらも15秒以降の猶予時間を確認できました。

おわりに

正常に処理が終了しないまま終わってしまうと、保持しているデータに不整合が起こり、システムエラーを引き起こしたり復旧に時間がかかったり、最悪の場合復旧不可能なんてことになってしまうかもしれません。
安定稼働のためには、常に正常に終了させる状態を作ることが大切です。

正常に終了させる方法として、Podの削除時、Podの猶予時間を延ばすことで各Containerが正常に処理が終了することを待つようにすることはできます。
しかし、むやみに延ばしてしまうと、ローリングアップデートの時間が長くなってしまいます。
それはリリース時に旧バージョンと新バージョンが入り混じった状態が長くなるということです。
また、いくら猶予時間を延ばしても、延ばすことにも限度はあるでしょう。

なので、大切なことは次の3点でしょう。

  • 一連の処理にかかる時間を短くする。
  • 処理の途中にセーブポイントを用意し、処理の途中でも正常に終了できるポイントを作ることを考慮する。
  • 正常に終了するための処理を作成する。

事故の少ない世の中を作るために。

おまけ

TERMシグナルの送信先

TERM シグナルの送信先は常にContainerのコマンドで実行しているプロセスです。
そのため、Node.jsの場合の npmyarn 経由で実行しているような場合には、処理には TERM シグナルが届きません。

以下は猶予時間を15秒、preStopの処理時間を10秒とし、実行コマンドを yarn run start とした場合のログです。

slack-4.jpg

SIGNAL SIGTERM を受信しました。 というログが送信されてきませんでした。
終了処理をTERMシグナルを使って実装しようとしていた場合には注意が必要です。

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