MITのMedia Labo、Lieberman教授の論文を読みました。
HCI(Human Computer Interaction)とAIの関係について、現在進めている製造業向けのAIプロジェクトにおいて、密接に関連してきます。つまり、AIで補うことがきないものを、UI,UXを含めたHCIでカバーすることで、解決できそうな感じです。これからは、このコラボが重要になるのではないかと思っております。
と、実務サイドから、そのように感じておりましたので、「AIとHCI」というテーマで色々と調査しており、面白い論文を見つけました。
下記、要点だけをまとめ、私見のコメントを入れています。
どうやら、HCIとAIの分野は、長年、対立とは言いませんが、意見が分かれていたみたいです。(おそらくアカデミックな領域だと思います。実務では、あまり考えられないと思います。)HCI側は、AIは信頼できない、AI側は、インターフェイスは単なる化粧品である。。みたいな相違です。
HCIの目的:コンピュータをより使いやすく、よりユーザーの役に立つものにすること
AIの目的:人間の思考をモデル化し、そのメカニズムをコンピュータに具現化すること
HCIの世界では、多くのAIアルゴリズムのヒューリスティックな性質が、インターフェースの信頼性を低下させることを懸念しており、AIが人間の意思決定機能を模倣することに重点を置くことで、人間のユーザーが持つ意思決定の特権を奪ってしまうのではないかと心配している。AIの大きな問題を見ていると、ついつい落胆してしまう。実際、そのような問題は「無限」にあるし、人間が知っている事実も無限にある。また、アクセントやスピーチパターンも無限にあると想像するかもしれません。問題は、どのくらい無限なのかということ。多くの領域では、誰にもわからないのです。
AIプロジェクトでは、ユーザーインターフェースの設計が不十分と言われている。これは多くの場合、AIシステムのユーザー・インターフェイスを作ることを主目的とした人々が急いでいることに起因しているとのこと。例えば、インターフェイスそのものではなく、学習アルゴリズムの詳細に取り組むことに興味がある。(これは、なんとなく分かる。AIのモデルを開発するエンジニアにあてはまるような気がします。) しかし、これではユーザーテストの結果が悪くなり、結果的にエンドユーザーや資金提供者からAIの有用性という考え方そのものが否定されてしまう可能性があり、残念なことになる。
しかし、AIがHCIに注目する最大の理由は、それがAIの科学を向上させることにつながるからです。AIは人間の推論を真似ようとしているのですから、これまでの知的システムの最良の例である人間を研究して、実際にどのように機能するのかを確認すべきではないでしょうか。AIは、人間の行動を理解するための認知科学からインスピレーションを受け、それを取り入れてきた長い伝統があります。HCIは、ある意味では「応用認知科学」であり、今日のような人とコンピュータのハードウェアやソフトウェアとの相互作用に適用されるものです。
<AIアプリケーションのためのHCIデザインの課題>
AIシステムは、学習や推論などの複雑な意思決定アルゴリズムを含んでいることがあるため、従来のツールベースのインターフェースにはない特別な問題をインターフェースデザインにもたらす。これまでのデザインや評価の方法論は、AIのインターフェイスに関しては見直す必要があるかもしれなし。私たちは、これらの問題をAIを否定する理由にするのではなく、HCIはこれらの問題に正面から取り組むべきだと考えています。これらの課題が解決されれば、従来のインターフェースにも必ずやメリットがもたらされるはずです。
第一に、AIアルゴリズムが複雑であることから、インターフェイスのデザインには、伝達性と説明に特別な注意を払う必要があります。複雑なアルゴリズムは確かに「ユーザーよりも賢い」かもしれないし、そこに価値があるかもしれないので、プログラムとそのユーザーの両方が、プログラムが何をしているのか、どのようにユーザーの役に立てるのかについて、コミュニケーションにある程度の努力を払う必要があるかもしれません。つまり、AIプログラムは、その機能をユーザーに理解してもらうために、よりチュートリアル的なインターフェースや段階的な機能の導入を必要とするかもしれない.
==> これは、まさにそう思いますね。。過去のWEBサイトやEコマースとは違うので、AIで何をしようとしているのか、そのメカニズムを理解しないと、UI,UXをデザインすることは難しいですね。。(AI開発の代表なので、Pythonでコードを書けなくても、定式化までは理解しないとプロジェクトは進みません。)
第二に、ユーザーがプログラムに信頼を寄せるためには、(完全ではなくても)ある程度のレベルで理解できなければならない。つまり、プログラムが「何をしたのか」「なぜしたのか」を説明できる状態になっていなければなりません。
==> ユーザーが、AIのアルゴリズムを理解するのは難しいので、何をしているのか、説明してあげないと駄目でしょうね。。でも、そこを面倒と思わずに説明すると信頼関係が醸成できます。
幸いなことに、AIとHCIが手を組むことで、両分野の期待に応えることができると考えています。つまり、どちらの分野も単独で行う必要はないということです。AIインターフェースは、ユーザーの問題をすべて自力で解決する必要はなく、ユーザーが何をすべきかわからないときや、確認や修正が必要なときには、直接操作による明示的なインタラクションに頼ることができます。HCIインターフェイスは、AIの技術を用いてユーザーの意図を暗黙的に認識することができるので、ユーザーがやりたいことのためにいちいちメニューやアイコンの操作を明示する必要がありません。
<テクノロジーはユーザーに合わせるべきであり、その逆であってはならない>
AIのアプローチは、コンピュータシステムへの入力の柔軟性を高めることも可能です。従来のHCIインターフェースは、指示を受け付ける順番や要求される詳細度が厳しい傾向にありました。しかし、人間のコミュニケーションは、高度な意思表示やアドバイスと、詳細で具体的な指示や質問を自由に組み合わせられるという点で、より柔軟な傾向があります。意図の認識、発話行為の分類、学習、混合型インターフェースなどにより、システムは人間の入力をより幅広く受け入れ、人間の特異性にも寛容になることができます。
<インターフェイスは、ユーザーにとって自然な入出力方法を採用すること>
グラフィカル・ダイレクト・マニュピュレーション・インターフェイスは、ユーザーが現実世界のメタファーを使ってシステムに入力し、出力を受け取ることができるという点で、大きな進歩でした。 ファイルなどのアイコンのことです。人にとって最も自然な入出力とは、世界を感じ取り、相互に作用する自然な能力を働かせるものです。
<コラボレーションを促進するインターフェイス>
従来のHCIでは、離れた場所にいる人間同士のコラボレーションが中心でしたが、AIでは、ユーザーとコンピュータのコラボレーションを実現し、コンピュータがより積極的な役割を担うようになります。コンピュータは、人と人とのコラボレーションのための単なるパイプ役ではなく、コラボレーションの相手の一人であると考えてください。
人間同士の共同作業では、目標の理解と伝達、目標達成のための計画の作成と認識、物事がうまくいっているときの理解とそうでないときの修正など、多くの問題が発生しますが、機械の問題解決をモデル化しようとするAIにおいても同様です。これらの問題を理解することで、共同作業のためのインターフェースを改善することができます。たとえ片方の頭が機械であっても、一人より二人の頭の方が良いのです。
<AIをインターフェースに組み込む>
AIをユーザーインターフェースに統合することで、ユーザー中心のデザインとAIが提供する表現、推論、認識の長所を組み合わせることで、未来は明るいと考えています。AIコミュニティは、アルゴリズムに集中してインターフェースを「後回し」にするのではなく、HCIの問題にもっと注意を払うべきだと考えています。HCIコミュニティは、AIの失敗に対する麻痺した恐怖を克服し、インターフェースをよりインテリジェントにするための機会をしっかりと見極める必要があると考えています。
AIとHCIの両方にまたがるインターフェース知識工学という新しいサブ分野が生まれるかもしれません。
==> これは、面白い見解ですね。。
過去に、シリオンバレーで、eBayで働いていたこともあり、データ= コンピュータやシステム上から発生するもの(Eコマース)をどうしてもイメージしてしまうのですが、製造業の現場では、人間の行動の中に、エラーのケース、イレギュラーのケースが発生してしまうのですよね。
Google,Amazon,Facebookのようなデジタルな世界だけのデータではない、ものづくりならではのAIに、HCI,HUMAN(人間)の要素が入ってくる、これが日本の強みになるかもしれない・・・と感じている今日このごろです。
(12月の)30日の年末のお忙しいところ、Y社長、ZOOMで戦略会議の時間を作ってくださり、ありがとうございました!