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ゆめみAdvent Calendar 2018

Day 14

同人誌を会社の経費で精算した話

Last updated at Posted at 2018-12-13

これは ゆめみ Advent Calendar 2018 の14日目の投稿です。

概要

技術書典5で購入した同人誌(いわゆる技術同人誌)を会社の経費で精算したので、その中で個人的に思ったことを購入側の視点でツラツラと書きます。

恐らく、同人誌を経費で買える会社はあまりないと思いますし、そもそも経費で精算しようと思う人もそれほど多くないと思いますが、同人誌だからといって特別なことは何もないよ、という事を示して世の中に技術同人誌を広めようと画策すると共に、もっとこうあってほしい、こうすれば参加への後押しになるのではないか、と思う所がいろいろあったので、この記事を書きました。

なおここでは、紙/電子等の媒体を問わず、イベント等で売買され一般的な出版流通に乗らない、個人あるいは団体が出版する書籍を総称して同人誌と呼びます。

購入から精算まで

はじめに

私が現在所属するゆめみという会社には、勉強し放題制度というものがあります(参考:勉強し放題制度|Ray Kataoka|note)。端的に言えば、学習内容のアウトプットを行うことで、そのインプットの経費を会社が補助してくれる制度です。
今回私は、この制度を利用して技術書典5で購入した同人誌を会社で経費精算することにしました。

ちなみに、ゆめみは技術書典5のスポンサーとなっていましたが、今回の内容はそれとは全く無関係に、参加した1ユーザの視点で書いた記事であることをお断りしておきます。

決済方法

経費とするためには、当然ですが支払いの証明、いわゆる領収書が残る必要があります。こうした同人誌即売会イベントにおいて、領収書を出してくれるサークルは通常ありません。しかし、技術書典では後払いで決済可能なモバイルアプリが提供されています。今回は、この電子決済を利用することにしました。

技術書典 - Google Play のアプリ
‎技術書典 on the App Store

詳細は、かんたん後払いシステム提供のお知らせ | 技術書典ブログに書かれています。支払いに関する部分を以下に抜粋します。

  • 後払いの決済システムを提供します。
    • 決済システムが利用可能なのは会期中のみです。
    • 後払いはイベント翌日以降にWebシステムのMyPage上でPayPalまたはStripeにてお支払いいただけます。
      • 3日以内にお支払ください。
    • 支払いの準備完了の通知はメールと公式Twitterで行う想定です。
    • 機能はお金の仲介のみです。
  • 購入者は専用アプリを使ってQRコードを読み、支払いを行うことができます。

PayPalアカウントは持っていたので、PayPal決済の領収書で精算を行うこととしました。

ちなみに、今回はあまり支払いを複雑にしたくなかったので、pixivPayなど他の決済は利用していません。

書籍の購入

イベント当日、アプリ決済または現金決済で書籍を購入して周りました。購入した書籍は合計17冊、そのうちアプリ決済ができたものが12冊。アプリ決済できなかったのは、そもそもサークルが対応していなかったためです。これらは、精算の対象外としました。

PayPalでの支払い

イベント翌日の夕方に、後払い決済の通知がメールで届いたので、PayPalから支払いを行いました。支払い完了後、取引履歴にある「詳細を印刷」リンクから明細印刷ができるようになります。
明細の取引先は「株式会社達人出版会」、購入内容の詳細は「技術書典 決済システム精算 ¥[購入金額] 商品番号tbf05-market」となっていました。購入した書籍の一覧情報はありません。
ちなみに、クレジットカードの明細には「PAYPAL *TATSU-ZINE」と記録されます。

精算まで

購入した書籍に対するアウトプットについては、以下の記事を対象としました。(これはちょっと少ないかも…)

技術書典5で買った本の感想いくつか - Qiita
https://qiita.com/wa2c/items/1210a825504a3aee237e

あとは、PayPalの明細を印刷した紙と経費精算の申請書を会社に提出して完了です。これは一般的な会社の手続きと同様です。

気になったポイント

この全体のフローの中で気になったポイントを挙げてみます。

アプリ決済利用率の高さ

今回、アプリ決済が出来た書籍は12/17なので、約7割となりました。自分が想定していたよりも遥かに高い割合でアプリ決済を行うことができたという印象です。これは私がアプリ決済可能なサークルを優先していたという点もありますが、過去の技術書典で利用実績があること、イベントの特性上参加者のITリテラシが極めて高い水準であること、主催側が決済アプリを公式に提供していており、さらに手数料がかからないこと、などが考えられると思います。また購買者視点から見ると、ほぼ共通化された決済手段が提供されているため、利用における煩雑さが少ないという点が、利用の拡大を後押ししていると感じました。さらに言えば、「公式が提供しているから」「皆使っているから」という安心感は結構大きいです。QRコードは現金よりもやや時間がかかるので「周囲に迷惑をかけるのではないか」という不安を煽るのですが、この感覚がかなり薄れるのは心強いと感じました。
これが一般的な即売会イベントなら、電子決済が可能なサークルは0か、良くて1,2件といったところでしょうか。サークル側は、1日いて1件ぐらいしか使われないという話を聞いたことがあります。今後は徐々に増えていくでしょうが、現状ではその程度の感覚なので、技術書典の電子決済可能なサークル率はこうしたイベントの中において驚異的といっていい水準だと思います。
近年では個人間決済アプリが徐々に現れてきており、将来的にはその他のイベントでも電子決済が一般的に利用されていくようになると思いますが、そうした未来の光景を垣間見ることができたことが、今回のイベントで一番印象に残った点でした。

決済アプリの使用感

技術書典側が提供する決済アプリのAndroid版を使ってみましたが、次のような感じでした。(iPhone版はしりません)

  • 購入時の決済は、QRを読み取ってから画面から購入対象を選択する。サークル側が自分の端末で購入の確認が取れた段階で、売買が成立する。時間はそれほどかからないけれど、現金で買うよりはやや時間がかかる。大規模な列だとちょっと厳しそう、ぐらい
  • 機能的には、支払いをすることと、その取引履歴を残すことぐらい。取引履歴はあとから参照できる。
  • 通信が繋がらない場合に決済ができなくなる可能性があるとの注意書きはあるが、今回の会場内で特に通信エラーとなることはなく、全ての決済を問題なく完了できた。
  • アプリ起動時になぜかログアウト状態になることがよくある。もう一度開くとログイン済みになっていたりする。支払おうとした時にこれが出るととても焦る。
  • 取引の段階では実際には支払いはされておらず、翌日以降に支払いが可能になるのでそこで全額一括支払う。ユーザの信用をどう担保しているのかは知らない。

ざっと使ってみた感じ、技術書典で使う必要最低限の機能の実装だけという印象ですが、とりあえず(ログアウト状態になってしまう以外の)トラブル等はなかったです。現場の取引はアプリで行いますが、実際の支払いWebブラウザから行うので、やってるのは取引の仲介までという感じでした。アプリで完結できると良かったかなという気はしましたが、金銭を扱うと開発の難易度が一気上がると思われるので、この辺が現実的な落とし所なのでしょうか。多分。

Screenshot_20181212-200903.png

できれば良かった事

今回のイベントで、こうあったら良かったと思った点について書きます。即売会イベントの範疇ではないような部分も含まれますが、あくまでもこうであればいいなぁという個人的願望です。

100%の決済履歴

今回、現金で支払った分については決済を証明する履歴はありません。いくらで買ったか自分でも忘れました。なのでこれらは自腹になりますが、いつもなら全部自腹なのでその点は特に気にしていません。
出来ることなら全ての書籍に対してアプリ決済のように決済履歴が残る形で支払いをしたかったところですが、対応がサークル側に委ねられている現状では難しいのだろうと思います。
近年では、個人間の電子決済サービスが登場してきたことに加え、技術書典という場の特性上、会社で購入するなどの需要がある可能性は高く、領収書精算が可能であれば購入する、というユーザは多少見込めるのではないかと想像しているので、そうした需要が高まれば自然と増加していくのではないかと考えています。

余談ですが、民法486条には、「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる」と規定されていますので、こうした場でも紙の領収書を求めること自体は法的に間違ってはいようです(多分)。ただ、領収書を書くのに時間がかかるため周囲に迷惑になりやすいことや、そもそもサークル側が用意してない、書いたことない、めんどくさいといった事情もあるので、普通はやりませんし、現実的ではないと思います。今回の技術書典5では、紙の領収書発行を掲げたサークルも見かけましたので、そういう場合であれば快く書いていただけると思いますが。

電子データの提供

これだけ情報技術の知が集積しているイベントにも関わらず、販売は紙媒体の書籍がメインというのも不思議な感じですが、認知度、アピール、利便性、立ち読み、取引といった運用を考慮すると現状では最適解なのだと思います。
それはさておき、多くのサークルでは書籍が販売されていますが、書籍のみでなく、電子データのみ販売する所、電子データを併売する所、書籍を購入したら電子データをおまけで付けてくれる所など、いくつかの対応が見られました。フォーマットはpdf、epub、mobi辺りが一般的のようです。ただ、これらは対応がバラバラで、あるところはダウンロード用のQRコード、あるところは圧縮ファイルの解凍パスワードといった具合です。ダウンロード先も統一されていません。また、有効期限が設けられている場合も多く、早々に取得しておく必要があります。
私は電子書籍データをサーバに保存して参照、検索ができるようにするのですが、一通り掻き集めるのは、正直かなり面倒くさかったです。(書籍のみ販売している場合についてはどうしようもないので、自前でスキャンしたりしますが。)
この辺についてはアプリ決済した場合、電子データを一括でシステム上から提供してくれると非常に助かると思いました。

内訳の印刷

アプリ決済の内訳はアプリ内から参照することができますが、Web側から参照することができないようです(少なくとも、自分はその手段を見つけられなかったです)。自分としては購入した一覧の情報は欲しかったので、アプリの画面上でしか見られない現状は不便に感じました。
また今回、経費精算する上で購入品の内訳は求められなかったものの、私が以前いた会社なら間違いなく経費精算で内訳を求められていたと思います(そもそも経費精算させてもらえたかどうかは疑問ですが)。そうした会社でも対応できるよう、Web画面から購入品の一覧を印刷するといった機能があれば、より使いやすくなるのではないかと思いました。

決済の分割

これは実に個人的な話です。同人誌の中にはあまり表に出てこない、ちょっと行儀の良くないテーマが扱われることがあります。私自身は特に気にしないというか、むしろいいぞもっとやれ派なのですが、あくまでも個人での購入として扱い、経費精算はしたくないという状況があります。今回使用した決済アプリは全ての支払いを一括で決済してしまいますが、これをいくつかのグループで分割することができれば便利かなぁ、と思いました。

最後に

自分自身は技術書典にサークル参加したことはありませんが、某イベントで技術系の同人誌(っぽいもの)を何度か出している人間なので、この手の技術同人誌は大好きです。なので、技術書典が徐々に大きくなっている状況を、それなりに楽しんでいます。

個人的な見解ですが、こうした個人レベルの技術同人誌販売は今後さらに広まっていくと考えています。理由としては次のような感じです。

  • Web検索結果について、結果の上位が広告サイトや謝った情報、古い情報で占められることが多く、Web検索による情報の精度が年々低下していると感じている
  • 情報技術の発展速度に対して、通常の出版では速度がボトルネックになる可能性がある
  • BOOTHKindle ダイレクト・パブリッシングなど電子販売サイトによって、個人レベルでも書籍が販売しやすくなり、一般書籍との垣根が徐々に薄れている

正直なところ、同人誌は品質にかなりバラツキがありますし、コストパフォーマンスもあまり良くないとは思っているので、そこまで重要度が高くなるかは少し疑問ではありますが、Web以上専門書未満のような中間的な存在や、普通の人がやらなくて需要もなさそうだけど物凄く尖った研究の成果などの存在は、決して無価値ではないと思いますし、こうした活動が全体の技術レベルを上げていくことに繋がると信じています。

最近では、品質はそこそこに可能な限り早く電子書籍を出す「マッハ新書」という動きも見られました。これは後から内容がアップデートされること前提の、いかにもソフトウェア的な発想ですが、これも現代的な書籍の形なのだと思います。

こうした動きを見ると、小規模な単位の情報を、必要に応じて、金を支払って手に入れる、というオンデマンドに近い情報メディアとして進化していくのではないかと想像しています。

そうなると、技術書典ような一度に同人誌が発行されるイベントの認知度は徐々に上がっていくのではないかと思っています。ただ、それよりこの手のイベントが重要になるのは、締め切りとしての役割だと思っています。個人の経験で恐縮ですが、この手の本は作るのが面倒なので、イベントでも無い限りまず作ろうと思いません。逆にイベントがあると、そこに向けてとりあえず形にしようというモチベーションが働きます。こうした同人誌作成において、書き手に執筆を促す何らかの目標やマイルストーンとなる存在は極めて重要な要素だと考えています。作られなければ、提供されなければ、情報の価値は生まれないわけですから。

そして近い将来は、技術同人誌を普通に技術資料として経費で購入するのが普通の世の中になっていくのではないかなぁ、と考えています。
…などと、脇道にそれた内容を最初のテーマに強引に関連付けたところで、記事を終わります。
内容にあまりまとまりが無くてすいません。

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