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ソートアルゴリズムを可視化してみよう(5)

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JavaScript によるソートアルゴリズムの可視化

こちらのつづきです。
これで最終回です。

プログラムの解説 - ソートアルゴリズム(2/2)

algorithms.js で、クイックソートとマージソートの実装です。
これらは平均計算量が $O(n\ log\ n)$ のシリーズです。
このへんは処理の様子がちょっと分かりづらいので、
main.js 側から呼び出すときにデータを多めに渡すことで
俯瞰できるようにしてあります。

QuickSort クラス

クイックソートを実装します。
データから適当な値を取り出して(※)、
それより小さいもの/大きいものに選り分ける、を繰り返して
ソートを完了させていきます。
※この値の取り方は計算量に関わる重要ポイントですが、
 今回は、渡された区間の真ん中を取るだけにしています。

QuickSort.png

algorithms.js QuickSort クラス
/**
 *  クイックソート O(n log n)
 */
class QuickSort extends VisualizedAlgorithm {
    *generator ( ) {
        const len = this.arr.length;
        yield* this.partition( this.arr, 0, len - 1 );
        return this.resultProperties();
    }
    *partition ( arr, left, right ) {
        const pivot_index = Math.floor( ( left + right ) / 2 );
        const pivot = arr[pivot_index];
        let [i, j] = [left, right];
        for ( ;; ) {
            while ( arr[i] < pivot ) {
                i++;
                this.loops++;
            }
            while ( pivot < arr[j] ) {
                j--;
                this.loops++;
            }
            yield this.yieldProperties( pivot_index, i, j );
            if ( i >= j ) {
                break;
            } else {
                if ( arr[i] !== arr[j] ) {
                    [arr[i], arr[j]] = [arr[j], arr[i]];
                    this.swaps++;
                }
                i++;
                j--;
            }
        }
        if ( left < i - 1 ) {
            yield* this.partition( arr, left, i - 1 );
        }
        if ( j + 1 < right ) {
            yield* this.partition( arr, j + 1, right );
        }
    }
}

*generator () // QuickSort

前回分のジェネレータと比較すると中身が少なく見えますが、
ここで大事なのは以下の部分です。
yield* this.partition( this.arr, 0, len - 1 );

こちらは、partition メソッドへ処理を委任する、というものです。
理由についてはそちらのメソッドの方で解説します。
yield* が、別のジェネレータへの委任 をあらわしています。

*partition ( arr, left, right )

クイックソートというアルゴリズムの肝にあたる部分です。
さきほどの generator メソッドからジェネレータを委任したのは、
このメソッドで再帰をしたかったからです。

partition は、引数の配列を左右に分けていきます。
具体的には、呼び出されたときに pivot を選定したあと、
データの先頭(左)から pivot より大きいもの、
データの末尾(右)から pivot より小さいもの、を
順番に取り出し、それらを入れ替えていきます。

この動作で、左右からの探索が交差した時点の位置から見ると、
左側(pivot より小さい) / 右側(pivot より大きい)に
選り分けられた状態となります。

このようにして分割ができたところで、
左右の配列をそれぞれ partition (=自分自身) に渡して
さらなる大小の選り分けによる分割を進めていきます。

最終的に pivot との大小比較・入れ替えが発生しなくなる
つまりソート済みでない要素がなくなるまで繰り返せば、
ソートが完了した状態を実現することができます。

赤が partition により pivot とした値で、
青が探索中の左側(pivot より大きい)、
緑が探索中の右側(pivot より小さい)をあらわし、
青と緑が入れ替わっていきます。
次に赤が動いた瞬間が、分割後の再帰呼び出しの始まりであり、
引き続き青と緑の入れ替えによってソートが進んでいきます。

MergeSort クラス

マージソートを実装します。
データの分割と、分割した配列の併合 (マージ) を繰り返して、
ソートを実現するものです。
このマージの際に、小さい(あるいは大きい)ほうを取り出す、
というルールを設けることで、結果的にソートされる仕組みです。

MergeSort.png

algorithm.js MergeSort クラス
/**
 *  マージソート O(n log n)
 */
class MergeSort extends VisualizedAlgorithm {
    *generator ( ) {
        const len = this.arr.length;
        yield* this.mergesort( this.arr, 0, len );
        return this.resultProperties();
    }
    *mergesort ( arr, left, right ) {
        const _arr = [];
        if ( left >= right - 1 ) {
            _arr.push( arr[left] );
        } else if ( left == right - 2 ) { 
            if ( arr[left] < arr[right - 1] ) {
                _arr.push( arr[left], arr[right - 1] );
            } else {
                _arr.push( arr[right - 1], arr[left] );
                this.swaps++;
            }
        } else {
            const mid = Math.floor( ( left + right ) / 2 );
            const leftArr = yield* this.mergesort( arr, left, mid );
            const rightArr = yield* this.mergesort( arr, mid, right );
            for ( let [i, j] = [0, 0]; ; ) {
                if ( leftArr[i] < rightArr[j] ) {
                    _arr.push( leftArr[i] );
                    arr[left + i + j] = leftArr[i];
                    i++;
                } else {
                    _arr.push( rightArr[j] );
                    arr[left + i + j] = rightArr[j];
                    j++;
                    this.swaps++;
                }
                yield this.yieldProperties( left + i + j - 1, left + i, mid + j );
                if ( i >= leftArr.length || j >= rightArr.length ) {
                    _arr.push( ...rightArr.slice( j ) );
                    _arr.push( ...leftArr.slice( i ) );
                    _arr.forEach( ( value, index ) => arr[left + index] = value );
                    break;
                }
                this.loops++;
            }
        }
        return _arr;
    }
}

*generator () // MergeSort

構造的にはクイックソートと同様で、
こちらも大事なのは以下の部分です。
yield* this.mergesort( this.arr, 0, len );
詳しくはそちらのメソッドで解説します。

*mergesort ( arr, left, right )

名前のとおりマージソートを実現するメソッドで、
こちらも再帰的に呼び出していきます。

条件分岐の記載順序とは前後しますが、
ポイントであるマージ処理は else 句のところです。

引数の配列を単純に2分して mergesort (=自分自身) を呼び、
その結果を leftArrrightArr でそれぞれ受け取ります。
これらはソート済み状態の配列になっているので、
それぞれの先頭を見比べて小さい方を取り出す、を繰り返せば
マージしたソート済み状態の配列ができあがり、
それを結果として返却していきます。

また、条件分岐の冒頭部分に戻って見ていくと、
配列の分割を繰り返すことで要素が1つか2つになるので、
1つならそのまま、2つならそれらを比較した結果を返します。

最小単位でのソートはこれで完了となるため、
あとは呼び出し元側の mergesort で併合してくれるので、
最終的に最初の呼び出しまで戻ったら、全体のソートが完了します。

最後に可視化する部分ですが、
ここで実装したマージソートはインプレースではなく
画面表示してない別の配列(先ほどのleftArrrightArr)を
用いてソートしているので、実は中身を表現しきれていません。
よってインデックスの動きだけを雰囲気で表現しています。

緑は分割した左側、青は分割した右側のインデックスで、
緑と青のそれぞれ小さいほう(見えない)を取っていっており、
赤がマージした分だけ進んでいく、という見え方になっています。
やる気が出たらいい感じに見せる方法を検討したいです。

最後に

記事を分けていったら5本にもなってしまいました。
JavaScriptとかアルゴリズムを勉強しはじめた、ぐらいの方への
何らかヒントになれば幸いです。

また、他にもソートアルゴリズムはいろいろあるので、
そのうち追加してみようと思います。
(解説はしませんでしたが、シャッフルするクラスが既にあるので、
ボゴソートなら10秒くらいで実装できそうでしたが、
延々とデータを散らかし続けても仕方がないのでやめました。
疲れているときは見てると癒されるかもしれません。)

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