Developers Summit 2021
この記事は、2021/02/18-19に開催されたDevelopers Summit 2021のレポートです。
チーム参加してきました
aslead Agile のチーム「オキザリス」にて参加してきました。
チーム5人中、4人で参加して、その場で実況しつつ、記事も作っています。
三越伊勢丹リモートショッピング
どんなアプリ?
非来店で接客を受けて店頭の商品を購入するアプリ。
販売員とビデオ越しに商品説明を受けられたり、ECサイトに載っていない商品も見ることができる。
開発について
初期開発は約3か月間。
緊急事態宣言が出てから、百貨店はクローズ。
その中で、2020年4-5月で顧客が求めているものは何かをワークショップ。
6月に開発チームを編成し、7~10月で開発し、11月に正式リリース。
現在も毎週リリースを継続している。
開発スタイル
フルリモートのスクラム開発。
APIチーム10名、モバイルチーム6名。
AWS Fargate/Aurora/Kafka...
Sprint Boot, Vue.js
何が挑戦だったのか?
これまでの購買体験
- 店舗に行って、接客を受けて購入
- 家にいて、ECサイトにアクセスして、セルフサービスで購入
新しい購買体験
- これらの合わせ技
- 家にいて、接客を受けて購入
1. リモート接客
販売員からは「何かお探しですか?」といった話すとっかかりがない。
顧客も「どうやって声をかければいいのか分からない」。
お客様を迎え入れるところから、サービスの設計が根本から違う。
2. チャットで接客
会話の行間が見えない。
チャットのラリーをずっとするわけではないので、接客のテンポが掴みづらい。
3. ビデオで接客
三越伊勢丹の営業中の店舗からやるわけにもいかないので、専用のスタジオでやっている。
店舗を回遊しながら購入するケースが多いが、それができない。
リモートだと、お客様を他の場所に連れていくことができない。
4. 店頭商品のオンライン決済
従来の決済フローとは違い、「店頭商品をお客様のカートに登録して、オンライン決済を依頼する」というフローになる。
こうした業務はいままでやったことがないので、フロー作成やルール整備をする必要があった。
350年間の歴史・常識が通じない
店頭接客の元祖が三越伊勢丹。
1673年 三越(越後屋)創業から、店頭販売が始まった。
これから培ってきたものが、使えない。
開発プロセスへの取り組み
- 三越伊勢丹+IMDL(デジタルサービスデザイン)
- POチームは2社で混成
- 週次で意思決定ミーティングを実施
- 双方の役員(部長・技術担当役員・etc)が参加した場で優先順位を決定
週次で意思決定と現場調整ができるようにする
意思決定ミーティングで優先順位決定+リリース判定。
POチームで優先順位判定+要件設計+…+リリース後確認。
開発チームで1週間スプリントを実施し、毎週リリース。
現場で実際に導入する「導入チーム」とも毎週1時間情報共有し、フィードバックをする。
役員を交えた情報共有・意思決定も、週次で行うようにしている。
2か月分の案件リストを毎週調整
案件規模によってはリードタイムが異なる。
小さいものは2週間、大きいものは3か月。
これを4-5個並行で回している状態。
現場の状況に応じて微調整しながら、同時進行で案件を進めている。
実現できているもの
- サービスの状況と開発内容がリンクしている
- 現場や顧客の声で優先順位を決めるため、具体的な要望があってから開発するため無駄がない。
- 機能要求ではなく目的を共有している
- 「こういうことがやりたい。なぜならば」を共有し、細かい仕様はPOと開発チームに委任している
- 目的に合った最適な機能の提供ができている
- 提供スピードと機能のバランスを判断している
- スピード感を持って改善するのを意識しており、それがプロジェクトメンバー全体で揃っている。
- 「機能が50点でも、リリースして業務で補う」といった判断ができている。
- 品質をお客様起点で考えている
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「お客様にご迷惑がかかるか?」が最重要。
- お客様に迷惑が掛からなければ、テストを完璧にするよりも、素早く対応するほうが全体が早くなる。
- 「アプリが使えない」「購入できない」といった問題は絶対に発生させない。
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「お客様にご迷惑がかかるか?」が最重要。
- 全員が同じものを見て考える
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開発チームには「なんのためにやるか」を共有している。
- ビジネスとしてこう拡大していきたい、といった内容を共有して、そこから開発チームが提案する。
- 全員で同じチャットに入って情報共有
- 毎日の売上情報
- リモートショッピングの利用状況
- モチベーションの向上や、提案にもつながりやすい
-
開発チームには「なんのためにやるか」を共有している。
- 桁違いのスピードでの改善
- サービスとして試行錯誤するとき、システム側の開発プロセスが出来上がってきている
-
「なんだかわからないけど、ものすごいスピード感で改善されていく(部長)」
- 毎週のように課題が出てくるが、それに合わせて優先順位を変えながらシステムが改善されている
- スピード感はあるのに、いま何が行われているのか、今後どうなるのかが分かるから見通しがよい
リモート接客への取り組み
- 接客を形に残して活用する
- 自動接客に活用するデータを残す
- 「なぜこのお客様は、この商品を購入したのか?」がリモート接客には残る
- 違う形でお客様を知る
- 雰囲気が分からなくても、他の要素で分かるものがたくさんある
- リモート接客だからこそわかるものがある
- 継続的な関係づくりへ
- 今まで以上に深くお客様と繋がることが出来る
- どんな売り場で何を買ったのか、といった情報を元に、お客様が本当に欲している情報を考えることができる
- より深い提案ができるようになる
- 今まで以上に深くお客様と繋がることが出来る
とはいえ‥
-
いろいろな軋み音が聞こえてきている。
- まだまだ不安や不満は出てきている。
- 地道に成功事例を積み重ねていく必要があると感じている。
- 常識の変革には積み重ねが大事。
- 導入を指示するのではなく、寄り添う
- 長年販売を経験してきたお買場のメンバーをフォロー
- デジタルツールの導入には、アナログな部分が重要
- お買場のメンバーが満足しなければいけない
トレーニング中!
筋肉痛が凄い。
これまで使ってなかった筋肉を筋トレするだけでなく、基礎体力(組織体制・ルール・ノウハウ)づくりも並行していき、
1年後にはリモートもあたりまえの世界にしていきたい。
お客様の声
- 要望からお客様が教えてくれることも
- 「仕事の合間合間に使いたい」
- 「当日の店頭での滞在時間を短くしたい」
まとめ
350年の常識を変えようとしている。
変わっていく時間に柔軟に対応するために、お客様の声を元に、開発プロセスを改革。
また、接客を形に残して継続的な関係性を残す「リモート接客」。
Boost the Classic
百貨店の強みは「人」。
デジタルツールを使えば、人が生み出す体験や感動は作り出せる。
伝統を革新する。
「人」は変われるし、そこから新しい伝統を生み出せると信じているし、挑戦していこうと思っている。
感想
百貨店の事例は珍しい、と思いつつ聞かせていただきました。
お客様と現場と寄り添いながら変化していく、まさにアジャイルを体現した活動だと感じました。
ユーザーの声をいかに近くに置くか、がプロダクト開発における肝だと、再認識させられました。