Agile Japan 2020
この記事は、2020/11/17-18に開催されたAgile Japan 2020のレポートです。
リーンDXが実現する!顧客のビジネス価値を素早く生み出すアジャイル開発
KDDI株式会社 グループリーダー プロジェクトマネージャー 荒木 利幸 氏
KDDI株式会社 課長補佐 スクラムマスター 鈴木 政喜 氏
CI&T株式会社 プロジェクトマネージャー 松下 慶子 氏
CI&T株式会社 オペレーションマネージャー 橋永 ローズ 氏
CI&T株式会社 カスタマーサクセスリーダー 川渕 洋明 氏
このセッションのターゲット
法人向けの事例紹介として
KDDIとの1年半の実施事例
KDDI
2013年 アジャイル開発を初導入。
2015年 アジャイル開発の対象領域を拡大。
2016年 アジャイル開発センター発足
2018年 法人向けアジャイル開発サービスを開始(Scrum inc.Japan設立)
アジャイルを組織の中で広げていくために
アジャイル開発への理解があること、それを進めていく環境があること
法人案件でアジャイルは難しい!?
荒木氏(PM)
予算を決済するときに、スコープやスケジュールなど明確な根拠を元に決済をする。
アジャイル開発をするとき、ステークホルダーが関わってくるときに納期・スケジュールのコミットが強くなる。
アジャイル開発がコミットメント達成のためになり、WFに近くなってくる。
法人向けに提供するときに、課題が5つある。
- 法人案件に必要なプロジェクト管理
- 開発項目の工数根拠
- 生産性の統一基準
- 要件やゴール認識とビジネス価値のズレ
- チーム状況の把握
橋永氏
これは日本特有の話ではない。ブラジルでも同じ。
これまでやってきたことを「分からない、新しいものに変える」のが難しい。
大事なのはいいものを残して、新しいものを試していく、少しずつカイゼンする、というのはブラジルでもアメリカでも日本でも同じ。
川渕氏
各企業に合わせて必要なものを選んでいくことが大事
どんな感じで進めた?
橋永氏
- 現状分析フェーズ
- 課題が何なのか、アクションアイテムは何があるか、という現状を分析するフェーズ
- リーン・アジャイル協働開発フェーズ
- リーンは限りなく無駄をそぎ落として、必要なものは何なのかを考える
- デジタルを作って実現を考えていく
- KDDIの上層部も含めて巻き込んで進めていった
- 自立・成果獲得・信頼増幅フェーズ
荒木氏(PM)
課題の見える化かからスタートして、2チームで協働でプロジェクトを開始。
チームがプロセスを学びながら、自分たちなりにプロセスを変革しながら、守破離を通してKDDIとしてのプロセスを確立する形を作れたのがよかった。
プロジェクトの目標は?
A3ワークショップ
松下氏
開発プロジェクトに特化するのではなく、KDDIが抱えている課題やカイゼンアクションが何か、どのような形でいつまでに達成するのか、というのをデザイン思考のワークショップをして話し合った。
A3ワークショップを実施。
なぜなぜをして課題の根本を掘り下げていき、戦略・アクションを決めていった。
目標を定めて、誰がオーナーシップを持って実現していくのかを纏めていくことで、マネジメント・管理者だけでなく、チーム全体で意識をしながら目標設定できた。
橋永氏
チーム皆で目標・ゴールを見ながら、毎日の作業をしていくのが大事。
荒木氏(PM)
いつ誰がいつまでに、というアクションレベルまで落とし込まれるので、着実にゴールに向かっていっているという納得感が合った。
川渕氏
A3ワークショップはCI&Tでもよく取り入れられている。
クロスポリネーション開発
松下氏
アジャイルコーチ橋永が現場に行き、クロスポリネーション開発を実施。
CI&Tの開発チームと、KDDIの開発チームが同じチームとして共同で作業をする手法を取った。
それぞれがSMを出し、それぞれが開発者を出し、というような手法。
ミツバチが花粉を探して花を咲かせるのがクロスポリネーション。
KDDIの抱えている課題や、日本特有の話を毎日の作業から感じ取ることで、お互い実践で感じ取っていく。
Learn by Doing/実行しながら学んでいく、というのを意識して最初の4か月を実行した。
鈴木氏(SM)
本から学ぶのではなく、実際に行いながら文化や考え方などをいい意味でしみついていくことができた。
デザイン思考の活用
川渕氏
デザイン思考を使って、検証できるアイデアを素早く出していく。
最初の1年-1年半はエクゼクティブも巻き込んで行った。
アジャイル開発にプロジェクトマネージャーは必要ない?
プロジェクトマネージャーの役割
鈴木氏(SM)
チームの支援や顧客の要求窓口も全て自分が行っていた。
結果として業務が輻輳して、影響が出てしまった。
CI&Tの中ではPMが体制として存在。荒木氏(PM)がステークホルダーとの調整、リソース調整を行っていた。
荒木氏(PM)
以前はPOとして入っていたが、チームの開発よりも全体のプロジェクト管理を行い、ステークホルダーへのレポートをしたりして、理解を進める作業をした。
お客様に理解してもらい、スムーズに作業が出来るようになってきた。
プロジェクトの透明性・計画性を保つには?
現状把握と予測
松下氏
現状がどうなっているのか、この先どうするのかが明確にしないといけない。
色々とCI&Tで用いているツールを使いながら、アジャイル開発で使っているデイリースタンドアップなどを使って、PO含めて透明性高くコミュニケーションしていった。
絶対指標「BCP」で複雑性を見積もる
橋永氏
BCP/Business Complexity Pointを使って、デイリー会議やレトロスペクティブを行っている。
川渕氏
CI&Tの中でも根幹になっている。
BCP・生産性から開発ロードマップ策定
松下氏
BCPからタスクの大きさが見えてくるので、優先順位の高いタスクが度のスプリントに入るのかをお客様と合意する。変更管理も顧客と共有しながら進めていくのを意識した。
メトリクスでプロジェクト状況を可視化
松下氏
生産性・タスクにかかった時間はどれくらいか、ビジネス価値の大きさ、というのを可視化することで、チーム・お客様を含めて進捗を可視化していた。
ふりかえりの実施
チームの成熟
鈴木氏(SM)
根拠のある数値にはなっていなかった。ふりかえりのときに主観的な判断に基づいたアクションにどうしてもなってしまう。説明の根拠にもならないし、効果も薄い。
生産性・スピード・メンバーのスキルなども可視化していった。
お客様交えてのふりかえりの中で、お客様自身も納得いただけるようなアクションを開示して、アクションを推進していくことができた。
Gemba Walk - 現地現物で得るステークホルダー理解
鈴木氏(SM)
開発メンバーがプロジェクト外のステークホルダーを呼んで、仕事のことを説明する。
顧客の生の声を聴くことで、現場のことを知ることにもなる。
開発メンバーからすると、プロジェクトの外の人に自身のことを発信する場でもある。
誇りを持ってプロジェクトに参加してもらえるようになる。
外の人からの意見も取り入れて、カイゼンに繋げるということも行っている。
川渕氏
プロジェクトルームの中に貼ってある内容を見つつ、理解を深めてもらったりしていた。
ドキュメントは必要?
ビジネス要件定義書
荒木氏(PM)
リリースの承認のために必要なドキュメントもある。
- 必要な資料は作る
- 社内ルールで必要なものは作る
- ビジネスの価値を生むためには必要
- スプリント開始からスムーズに実施できる
- ビジネス要件定義書にストーリーを記載して、POの承認を得てからスタートする
- 過去経緯の確認も用意
平準化 - 計画性・生産性の向上
荒木氏(PM)
リファインメントの中で要件定義書を作っている。全員のメンバーが平準的に作業をでき、常に作業をし続けられるようになっている。
川渕氏
リーンでも常に価値を生み出し続けるのが大事。
解決できない問題があったときにそこで止まらないように、事前に潰して、開発できる状態にしておく。
チームって変わった?
KDDI開発チームのコメント
鈴木氏(SM)
一番変わったのが、チームの全員が一体感を持ってプロジェクトを遂行できるようになった。
プロジェクトを可視化して、プロジェクトの理解をお客様も持っている状態にする。
また、一連の活動がお客様にとって前向きに進める結果となった。
つくるもの・成果は変わった?
作るもの・成果の変化
荒木氏(PM)
ビジネスとして生み出す価値を意識した開発に取り組めるようになった。
モチベーションも上がっている。
BCPでロードマップを描いて、リソースの調整や機能の調整もして、全体感を描いているので、納得感のある内容になっている。
得たもの
荒木氏(PM)
自分たちが持っているプロセスから、パートナーへ。
安心できる開発ができるようになっていった。
発注・請負からパートナーへなっていった。
鈴木氏(SM)
エンゲージメントを維持するのが大事。
発注・請負というエンゲージメントではなく、一緒のチームとして改善していくメンバーとして進めていくことが出来るようになったのが、一番の得たもの。
関係性こそが得られたもの。
質問
Q. リーンDXの定義は?
橋永氏
変革は人から始めるもの。
お客様も、チームも、みんな一緒で価値に向かって、ゴールに向かって一緒に歩いていく、何かをしていくということ。
少しずつ改善しながら、何かを変革していくこと。
何を解決して、どのようにカイゼンしていくかが大事。
松下氏
これという定義は難しいが、問題になっていたものをどういう風に人を絡めて、ビジネスを進めていく上での問題に対して、できるだけシンプルに進めていけるか、というのが簡単なようで忘れがち。これを意識していくことが大事。
Q. エンドユーザーが法人なのか?
川渕氏
法人(KDDI)が受託した内容をCI&Tが支援する形
Q. BCPについて教えてください
川渕氏
別途情報を提供できるようにします
Q. 契約は請負?
** 荒木氏(PM)
準委任契約。
Q. 契約の交渉は誰がやったのか?
** 荒木氏(PM)
契約もチームで出来るかなと思ったが、難しい。
プロジェクト全体を大きな目で見て分けてやる、というのは大事だと思う。
Q. 残業が削減できたのはなぜ?
鈴木氏(SM)
チームが価値のあるものに着手するようになった。
以前はスプリントに若干の変更があって、それが積み重なることがあったが、今回のフローによって予定外の作業を削除することが出来た。
今後の展望
荒木氏(PM)
請負のアジャイルのケイパビリティとして、新しいビジネスの価値創造をしていきたい。
感想
- プロジェクトの内容はほとんど明かされなかったものの、BCPやクロスポリネーション開発など、新しい考え方に触れることが出来たのはよかった。
- アジャイル系の話でA3が出てきたのは珍しい気がする?仮説検証のやり方として優れているということなのかな。私も聞きかじった程度なので、体験してみるのはいいかもしれない。