この記事について
ふりかえりの手法を1つずつ紹介していきます。
ふりかえりをより楽しくしていくためにお使いください。
出典
この内容は ふりかえり読本 実践編~型からはじめるふりかえりの守破離~ 3章(3.6.2) で紹介しています。
Timelineとは
Timelineは事実と感情を両方合わせて書き出していき、全員で共有するための手法です。事実と感情を共有して、チームの持つ情報を整理し、カイゼンのためのアイデアを出しやすくするために用います。感情を引き出すし、チームのことを「自分事」としても考えやすくなります。
Timelineでは、「どんなことが起こったか」「どんなことを行ったか」という事実と、「それに対してこう思った」「こう感じた」という感情を、事実とあわせて1枚の付箋に書き表します。
例えば、「Aさんに資料作成を手伝ってもらえてうれしかった」といった具合です。このとき、「嬉しかった」「楽しかった」といったポジティブな感情と、「悲しかった」「つらかった」というネガティブな感情は、別々の色の付箋で表します。ホワイトボードに時系列が分かるような横軸を引き、その上に事実と感情を記載した付箋を貼りだしていきます。
1週間分のTimelineを作成する場合は、初めての場合は25分程度を予定しておきましょう。
付箋は、ポジティブ/ネガティブの2色用意しておきましょう。
進め方
個人ワークの時間と共有の時間を分けます。
個人ワークの時間は、1週間のふりかえりであれば8分程度取りましょう。個人ワーク中には、できる限りPCや手帳などは見ないで、記憶のみを頼りに思い出します。そうして、思い出したものから順に書き出していきます。PCや手帳を見ない理由は、書いてある内容を書き写すことに集中してしまって内容が頭に入ってこない人もいますし、チームにとって全く影響のないとても些細なことまで意見が挙がってしまい、他の意見の重みが薄れてしまう場合もあるためです。
個人ワークの時間中に思い出せるものがなくなったり、行き詰ったりして、時間が余ってしまった場合は、Timeline上に自分の意見を貼っていきましょう。また、他の人の貼った事実・感情を見ながら、「そういえば自分はこう思っていた」という同意意見・反対意見があれば、思い出した内容を新たに書いて貼りだします。
個人ワークの時間が終わったら、共有を行います。共有は10分から15分程度です。共有をしながら、似た意見はグルーピングをしたり、ラベルをつけてまとめたりすると次の手法がスムーズに行えるようになります。
写真:Timelineの例。色によって事実や感情の偏りが見えてきます。
共有の時間の中では、事実や感情の偏りにも意識を向けて、議論してみましょう。いつ偏りがあるか。どんな事実に対して偏りがあるか、という傾向を見ると、チームが何に取り組むべきかがぼんやりと見えてきます。下表では、偏りと、それをどう捉えるかという考え方、そしてその偏りからさらに情報を引き出すための問いかけの例を記載しています。
進め方のポイント
Timelineのポイントは4つあります。
意見の出し方
1つ目のポイントは、意見の出し方です。
意見を出すときには、「できるだけ他の人と被らない意見を出そう」という意識が働きがちですが、ふりかえりに関してはその考え方を捨ててください。「他人と全く同じ意見」「他人と少しだけ違うけどほぼ同じ意見」どちらも、気にせず書いて共有してください。
ふりかえりのときは「誰がどんな意見を言ったか」よりも、「チームがどんな意見を持っているか」のほうが大事です。個人の意見の大きさよりも、チームの意見の大きさを重視します(無論、少数派の意見をないがしろにするわけではありません)。
複数人が同じ意見を持っていることが分かれば、チームとしても「そのような意見を持っているからこそ、変えていこう」という意思が働きやすくなります。このチームの意見の大きさを可視化してくれるのは、付箋の枚数です。他人と同じ意見だとしても、思ったことはどんどん付箋に書いて貼り付けていきましょう。それが、チームの意見の大きさを表してくれます。
前回のアクションをふりかえる
2つ目のポイントは、「前回のふりかえりで決めたアクションの結果を書く」ことです。
ふりかえりは、何度も継続して行う活動であり、チームをカイゼンするためのアクションを必ず1つ以上決定します。そのアクションは、実践されて初めて、チームに変化をもたらします。
実践されたアクションも完璧ではなく、100%成功するとは限りません。アクションを実践した結果を次のカイゼンへと活かすために、必ず結果を書きましょう。
効率の良い共有方法
3つ目のポイントは、共有のしかたにあります。
よくありがちなのは、ファシリテーターが左上から順番に付箋を読み上げ、「〇〇と書いてありますが、これは誰の意見ですか?」と聞いてから、聞かれた人が答えていくパターンです。これは、問いかけと同じ内容を繰り返すだけだったり、ファシリテーターから聞かれた人へ会話のバトンの受け渡しにタイムラグが生じたり、とかなり非効率です。
共有するときには、参加者が自分の判断で、自分が貼った付箋を自分から発言しましょう。発言の際には、左から順(時系列順)に読むとよいでしょう。ただし、必ずしも正確に順番通りに読む必要はありません。次に発言しようと思ったらどんどん発言していくように促します。こうすることで、効率よく意見を交換できます。
ファシリテーション
4つ目のポイントは、「誰かが発言している内容を他の誰かが補記していく」ことです。
必ずと言っていいほど、付箋に書かれた内容以上の情報を、参加者は話してくれます。この情報こそ、全員で共有すべき価値のある情報です。
付箋の内容を発言している人は、話しながら付箋に追記していくというのは難しいものです。話しながら書くという行為はよほどの訓練を積んでいる人でない限りできません。そのため、話を聞いている人が、付箋に書かれていない内容をどんどん補記していきましょう。
メモを加えるだけでなく、矢印で関連する付箋同士を結んだり、付箋を移動したり、というのも聞いている人が行います。これはファシリテーターのような特定の人が行うのではなく、参加者全員で行います。誰かが話しているときは、その情報を参加者全員のために書き出していく、という意識で行います。
このテクニックは、Timelineだけでなく、普段の仕事の中の議論でも使えます。言葉だけでやり取りをしていると、空中戦になりがちで、議論の軸がぶれていくことに気づかないまま進んでいってしまいがちです。この問題は、話していない人が書く、という意識を持つだけで簡単に解消されていきます。
進め方の例
#ふりかえりam #2で実践しています。