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ふりかえりは色々あるからこそ面白い

Last updated at Posted at 2019-02-26

きっかけ

やっとむさん(@yattom )のFacebookのコメント。

ふりかえり自体の成果を求めなくていい、という論調になんか自分の理解が追いついてない気がする。ふりかえりって、問題を見つけて改善するためという、明確な目的や成果があるもの だった と思っている。

プロジェクトファシリテーションのふりかえりガイドの、第1版は2006年(クレジットは天野勝さんだけど、いろんな人の知見が入っていた気がする)。そのころのふりかえりの意義って、

現場では、いまやってる仕事の進め方をあたりまえと捉えているが、実は改善の余地はたくさんある。しかし改善をする時間も、枠組みも、きっかけもない。ふりかえりは、改善できるポイントを、自分たちで見つけて実行するための、ほぼ唯一の方法だ

という感じだったように思う(上記は自分の記憶による)。『プロジェクトファシリテーション実践編: ふりかえりガイド 第34版』では、ふりかえりの定義や目的を以下のようにしている。

ふりかえりとは
ふりかえりとは、「過去の学びを、未来に活かすこと」であり、自主改善活動の一環で行なわれる活動です。…

ここで述べる「ふりかえり会」の目的は、以下の4つです。
1.チーム全体が、行動可能な改善策を探し、試す勇気を得ること。
2.チーム全体が、これまでの行動を思い返し、新たな気づきを得ること。
3.チーム全体が、やってみてうまくいった行動を、チームに定着させること。
4.チーム全体が、メンバーの多様性を受け入れ、信頼関係を築くこと。

http://objectclub.jp/community/pf/#material

改善とか、そもそもPDCAとか、ない現場。まったくないところからどうやって始めるか、ふりかえりから始めましょう。解決できる問題点を1つでもいいから必ず見つけて、それを解消すれば、昨日よりよい現場になってるよね。

ふりかえりは改善を定着させるためのものでもある。問題1つで終わりではない、1つ解消したら、また次のものが見つかり、見つかったからにはなんとかしたくなる。なんとかすると、次の問題が見つかる。これを繰り返しているうちに、ふりかえりとは関係なく、問題を見つけて直す癖がチームの身についてくる。ふりかえりの目的は、本当はここだったように思う。

そして10年以上の時が過ぎ、問題を見つけて直すとかまあ普段からやってるし、PDCAとかむしろ古いし、多様性や信頼関係は大前提だよねと言えるようになってきた。というか、そういう現場はけっこう増えてきた。ふりかえりを上手にやってきて、そうなった現場もある。

そんな現場で有意義なふりかえりは、たぶん「改善だー!」という感じのものではなくなってくる。文字通り、気持ちのゆとりをもって少し過去をふりかえってみるとか、雑談をするとか、やってみたいことを話すとか、そういうほうが良い。「必ず」とか言ってなさそう。

でもそれは現場の状況によるという話でもあって、10年以上前にリジッドなふりかえりが有効だったのと同じような現場は、たぶんいまでも割とある。そういうところでは「必ず1つ!」型ふりかえりは、10年前と同じくらい有効だとも思う。「雑談しましょう」とか言っていいのかという。んー、いいのかな。それはそれでいいのかも。

というわけで、ふりかえりという言葉で呼んでいるものが、けっこう多様になってきたのかなと。あるいは、個々のチームの中で進化したふりかえりが、型として一般的になってきたのかな。それを踏まえると、「ふりかえりは改善だ!」と不用意に言うのはよくない気もして、もっともそれを言い出すと結局 "It depends." になっちゃうのだけど。

状況による。なんの状況によるか。チームが現在、問題の発見と解消や、自律的な改善が、どのていどできているかによる。まだできていないなら、ふりかえりがそのチャンスになる。できているなら、ふりかえりは「チーム自身のための時間」という、ふわっとした説明のものになるけれど、世の中ではその型がいくつか発見されているよ。

補足だけど実はこれが言いたかったかもしれないことをひとつ。KPTのKはFunを含む。昔から。ただ自明ではなかったし、ファシリテータ依存になりやすく、FunはおろかKeep自体をないがしろにするチームが多かったように思う。

もういっこ気になってきた。前の段落に書いた「まだできていないなら、ふりかえりがそのチャンスになる。」というところ。「必ず1つ」型ふりかえり以外にも、選択肢があるのかどうか。自分の中には見つからないんだけど、どうなんでしょう。

以上です。

私自身、社内外・いろんな組織やチームでふりかえりを導入・アドバイザー等やってきました。
この経験をふりかえってみると、どのチームも同じようなふりかえりの導入の仕方はしていないし、チームにとってしっくりくるふりかえりの形もそれぞれ違うな、ということは感じていました。

「必ずこれやっとけばいい!」みたいなものはやっとむさんの言うとおり存在しなくて、状況に応じて「この場合はきっとこれやるとうまくハマりそうだな」ということを取捨選択しながらやっています。

じゃあその取捨選択するときの考え方のベース(目的)は何なのか、というところから、どういうときにその取捨選択を行っているのか、というロジックを分析して、できるところまで言語化してみようかと思います。

以下の3つの順に言語化していきます。

  • ふりかえりの目的
  • ふりかえりの段階
  • ふりかえりの段階別に見るふりかえりの目的の違い

ふりかえりの目的

ふりかえりの目的も人それぞれですし、組織によっても形は変わってくるはず。
いろんなところでもふりかえりの目的が語られています。

プロジェクトファシリテーションだと以下のように言われています。

1.チーム全体が、行動可能な改善策を探し、試す勇気を得ること。
2.チーム全体が、これまでの行動を思い返し、新たな気づきを得ること。
3.チーム全体が、やってみてうまくいった行動を、チームに定着させること。
4.チーム全体が、メンバーの多様性を受け入れ、信頼関係を築くこと。

スクラムガイドだと以下のように言われています。

スプリントレトロスペクティブには、以下の目的がある。
 ・人・関係・プロセス・ツールの観点から今回のスプリントを検査する。
 ・うまくいった項目や今後の改善が必要な項目を特定・整理する。
 ・スクラムチームの作業の改善実施計画を作成する。

私は以下のように伝えています。

  1. 立ち止まる
  2. チームを成長させる
  3. プロセスをカイゼンする

どうして上記のような考えにいたったのか、を私がたどってきた段階をベースに深めていきたいと思います。
※段階が低い・高いを区別したい意図はありません

ふりかえりの段階

段階1:ふりかえり、ってなに?ウォーターフォールによる大規模開発時代

私はプロジェクトファシリテーションからふりかえりを学び、スクラムを後から知った側でした。
私のふりかえりの最初の足がかりは「プロセスのカイゼン」でした。
1ヶ月や半年に一度、プロジェクトの定期的なタイミングで自分たちの仕事のプロセス(工程レベル)をふりかえり、次回以降のやり方にカイゼンを取り込んでいく、というやりかたです。
私が当時やっていたプロジェクト郡は半年~3年間かけてリリースするような大規模プロジェクトばかりであり、1つの工程自体に1ヶ月~3ヶ月かけるのがザラにありました。私はチームリーダーとして、自身の配下にビジネスパートナーやオフショアを何名も抱え、分業化による大規模開発を行います。そんななかでふりかえりという行為の意味するところは、「次回1年後になるかもしれない後続の工程でも、忘れていたとしてもうまくいくようにプロセスをよくする」「もしかしたら自分たちがもういないかもしれない状態でも、次の担当者が苦労しないためにプロセスを整備する」という、**「自分」「プロジェクト/プロダクトのチームメンバー」**の両面が強い視点だったように思います。

段階2:組織的なアジャイル導入黎明期

それから、自身の仕事がアジャイルな仕事へとシフトしていき、開発メンバーやスクラムマスターを経験していきます。ただ、いきなりアジャイルな仕事に切り替わったかというとそうではなく、組織的にアジャイルをはじめようと苦心しながら変わっていく時期もありました。そうした当時、ふりかえりの中で行っていたのは、「自分たちの進め方をどこを変えてみたらよりうまくいくだろうか」という試行錯誤。どちらかというとプロセスのカイゼンに近いことを重点的に話していましたが、どちらかというと**「チーム」**の目線に立ったふりかえりが多く行われました。

段階3:仕事のなかでアジャイルがあたりまえになった世界観

アジャイルなプロジェクトが当たり前になった今は、また別の視点です。スクラムマスターやプロダクトオーナーとしてプロダクト開発にかかわり、プロダクトのROIを最大化するために、チームが出せるパフォーマンスを最大化していくことを考えます。
コミュニケーションやコラボレーションを重視してカイゼンしていくことでチームのパフォーマンスは挙がりやすくなります。また、モチベーションもパフォーマンスを出していくなかで重要な役割を果たします。定型のプロセスも少なく、毎週異なる仕事をする中で、ふりかえりの中で大事になってくるのは**「プロダクトのROIを見据えたチームのパフォーマンスの最大化」**だと考えていました。

段階4:ふりかえりがあたりまえになった世界観

これらの段階を通じて、社内の周りでもふりかえりをするのが当たり前になってきました。社外のコミュニティでも、ふりかえりは当たり前のように行われていて、自分たちなりの試行錯誤をやってきている人たちもいっぱいいる。そんな中で、私の中で大事だと思い始めたのは、**「楽しさ」「学び」**といった、より抽象的なもの。チームビルディングを意識しながら、楽しく、学びを最大化するようなふりかえりを続けることで、チームの中で自発的な動きがより生まれやすくなったり、自分たちで気づき・経験学習のループを自分たちで回すことができるようになる、というのを経験してきました。

段階5:いろんな型の組織やチームでふりかえりを伝える

ふりかえりを社内外の他組織に伝えていくときに、いろんなタイプのふりかえりを経験してきました。

  • 自身の学びのふりかえり
  • 研修やワークショップの持ち帰りとしてのふりかえり
  • カンファレンスのふりかえり
  • IT業界以外でのふりかえり
  • 証券や保険などプロセスがガチガチの分野でのふりかえり
  • 半年や1年間といった長いスパンでの思い出し・ふりかえり
  • 組織やチームの今後を見据えるむきなおり

すべてに適応する固定の型を持たず、上記の状況に応じていろんな手法を取捨選択してまぜこぜにしながら、常に狙いをもってふりかえりを導入・実施してきました。

すべての段階を通じてあらためて感じてきたもの

プロジェクト開発なのかプロダクト開発なのか、どのような組織なのか、どのような立ち位置なのか。一人なのか、チームなのか、プロジェクト全体なのか、という規模によっても、しっくりくるふりかえりの形が違う、ということ。私自身がそれを経験していますし、すべてにおいてうまくいくなんてものは存在しないということ。

ただし、私のどの段階においても、「自分を含むチーム」に対して何かしらのカイゼンを加えてきたという結果には変わりがなく、(ROIを念頭に置く/置かないにかかわらず)チームが成長することを第一に考えてきて、その結果としてプロジェクトやプロダクトはいい方向に動き始めてきました。
ただし、「学び」を重視する「個人」のふりかえりと、「パフォーマンス」を意識する「チーム」のふりかえりとではまたタイプが違うと感じ、大規模な分類として、「ふりかえり読本 場作り編」の中で以下のようなふりかえりの分類を作っています。

  • ひとりのふりかえり
  • チームのふりかえり
  • プロジェクト・プロダクトのふりかえり
  • 組織のふりかえり

TwitterやFacebookなどで語られることが多いのは(おそらく)チームのふりかえりであり、チームのふりかえりという前提のもとに会話されていることが多いと思います。これ以降も、チームのふりかえりだけにフォーカスを当てて話を進めていきたいと思います。

いろんなふりかえりのタイプを経験しつつも、今も「3つの目的・3ステップ」として以下のふりかえりの目的を使い続けています。

  1. 立ち止まる
  2. チームを成長させる
  3. プロセスをカイゼンする

なんだかんだで上記の3ステップがどの段階においてもしっくりくるな、というのを感じ取っています。
上から順にやっていきましょう、というように基本的には伝えています。これは、聞く対象がふりかえりを行っていないのであれば1を、それ以外であれば2, 3をやりましょう、という程度の振り分けです。
2, 3はどの順がいいのか、というのは正直チームの状況によるとしかいいようがありませんが、チームの関係性があまりよくないのであれば、まずはチーム全体が成長に向かうように関係の質を向上させることをまず考えたほうが、いい方向に向かいやすいという経験から、2→3の順のステップにしています。

段階別に見るふりかえりの目的の違い

人によってコンテキスト(上述の段階)が違うからこそ、ふりかえりに対して誰かが何かしらの発信をしたとき、「なるほど、そのとおりだ」「いやいや、ぜんぜん違うでしょ」という真逆の反応が返ってくるのだろうと理解しています。
たとえば、段階1の状態であれば、そもそも立ち止まることができていなかったり、ふりかえりということを知らなかったりします。そういう場合は、少しでもカイゼンの文化を根付かせ、自分たちの仕事が楽になる、ということを考えたりします。その場合にいきなり「ふりかえりを楽しくやりましょう」「雑談すればそれだけでもいいです」といってもしっくりこない。だからこそ、まずは立ち止まる大切さを伝えて、その中で冷静になって考えたり、プロセスを少しずつでもカイゼンしていくことで「自分たちが変わっていける」「自分たちで変えていける」という実感を持つことが必要なのだと考えています。

段階2や3では、ふりかえりの意味を模索していたり、そもそも何のためにふりかえりをするのかを知らないままプロセスとして行っている場合もあります。そんなときには、ふりかえりの目的を改めて説明して、立ち止まり、チームの成長につなげることだ、という風に伝えると納得感が得られる。目的を明確に持って自身を変えていくことができるようになるかもしれません。ここで「プロセスのカイゼン」の手法を伝えても、耳タコになっていて反発されることもありそうです。

段階3や4など、ふりかえりを始めてみたはいいもののうまくいかなかったり、しっくりくるやり方がない、という悩みを持ち始めるのもこの段階です。そういった場合には、「問題をすべて解消する必要はない」「楽しくやってもいい」「いろんなやり方を試してみよう」という話によって、自身の選択肢を広げ、前に進むことができるようになることもあるでしょう。また、「こういったKPTのやりかたもある」と提示するだけでも、自身でふりかえりをカイゼンしていくきっかけになるかもしれません。

自身はふりかえりをあたり前のようにやっていて目的も理解しているけれど、チーム全体がそうでない、というときには場作りなどによってチームの関係性を向上させることを考えてみると、よりチーム感が強化されていい方向に行くこともあります。

すべて、私の経験した段階に当てはめてしまっているのは恐縮ですが、チームがどんな状態かは人によって、その時々によって、毎回異なります。状態によっても、響く言葉は違うはずです。響く、というよりは自分の知らなかった観点を提示されて、そこから幅が広がって何かしらの「自分なりのアンサー」が得られるのかもしれません。

アジャイルのコミュニティでは、ふりかえりをするのが当たり前の世界観になってきていて、なにかうまくいかない、停滞感があるといった悩みを抱えている人が割と多いからこそ、KPTのような「カイゼン」を軸にした手法ではなく、Fun/Done/Learnのような、「楽しさ」「学び」にフォーカスしたやり方が流行っているのかもしれません。ただ、それが全員に当てはまるソリューションかというと、そうではない、ということです。

まじめに分類してみると、1つの図で「このときにはこのふりかえり!」というものがもしかしたら出せるのかもしれませんが、It depends(場合による)なモノであるからこその楽しさがふりかえりにはあるのかなと考えています。

さいごに

誰かがふりかえりのことを言ったときに、「こいつ何言ってるんだ」と思うこともあるかもしれません。
でも、その人のコンテキストと自分のコンテキストがズレているだけかもしれません。
そういったことを念頭において、だからこそいろんな考えが出てきて面白いんだ、ということを感じていけるようになると、ふりかえりの世界は非常に奥深くて、とても楽しいものになります。

私はどのようなタイプのふりかえりであれ、面白いし、大好きです。
いろんな手法があるから面白いですし、どの手法も「これは使えない、ダメだ」というものはありません。
どんな手法にも狙いやよいところがあり、状況によって使いどころが違うだけだと考えています。

みなさんも、いろんなふりかえりを試してみて、ふりかえりの楽しさに少しでも触れていただければ、うれしく感じます。

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