スクラムショーワークショップとは
yycr2019(アジャイルコーチとスクラムマスターの宴、通称:よなよなコーチングリトリート)で生まれた、スクラムを短い時間で理解するためのワークショップの紹介です。
発起人は森一樹(@viva_tweet_x)と吉羽龍太郎(@ryuzee)です。
スクラムショーワークショップは、スクラムの説明をショー(寸劇)形式で行うワークショップです。
内容はご自由に使っていただいて構いませんが、利用する場合はクレジットをどこかにご明記ください。また、SNS等で利用した旨を共有いただけますと、ワークショップの作成者皆が喜びます。
なお、この記事はイベント中にモブブロギングによって作成されました。
記事の内容は06/19AMに行ったワークショップのリハーサルによって、時間や細かな流れなどカイゼンが行われる予定です。
記事の内容は06/19AMに行ったワークショップのリハーサルの結果を受けて、情報が更新されています。サンプルとして動画も公開しています。動画の時間が長いため、そのうち編集したうえで完成版を公開できれば…という希望があります。
スライド
Speakerdeckよりご参照いただけます。
目的
「短い時間でアジャイルを分かるようにしてほしい」というニーズに応えるために、最大2時間でアジャイル・スクラムの理解を高められるワークショップをみんなで作りました。
会社の中で展開するために、できるだけ準備が少なく済ませたいという要望にも応えています。
ターゲット
ワークショップ前に1時間程度のアジャイル・スクラムについての座学をしていることを前提とします。
以下のような内容が座学で共有されているとよいでしょう。
- アジャイル開発宣言
- スクラムガイド
- スクラムの3本柱
- スクラムの5つの価値基準
説明資料については各自ご用意ください。
ワークショップは3~5名のチームで行います。
複数チームでも問題ありません。
ワークショップの効果
下記のような効果をワークショップによって得ることができるでしょう。
ただし、ワークショップの参加者の特性や、ワークショップのファシリテート次第で得られる結果は異なるものになることをご了承ください。
- スクラムの考え方を自分たちの言葉で説明できるようになる
- 3つのロール(プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発メンバー)を体験できる
- デイリースクラムを除く5つのイベント(スプリント、スプリントプランニング、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブ、プロダクトバックログリファインメント)を体験できる
- 3つの作成物(プロダクトバックログ、スプリントバックログ、インクリメント)を作成する体験ができる
- 特定の対象に向けてスクラムを説明できるようになる
- (オプション)スプリントを経験しながら、以下の学びを得ることができる
- ロールからの学び
- プロダクトオーナーは要件(ターゲットに何を説明するのか)を具体的に説明しなければ、イメージどおりのプロダクトが出来上がらないということ
- スクラムマスターは全体を俯瞰しながら、チーム全体を支えるということ
- 開発チームは自分たちでやり方を決め、最善の行動をとり続けるということ
- イベントからの学び
- プロダクトバックログリファインメントやスプリントプランニングで設計まで行っていないと、開発で止まるということ
- スプリントプランニングでスプリントゴールを決定する大切さ
- スウォーミング・モビングによる開発イメージ
- タイムボックスでインクリメントを作り上げることの価値
- スプリントレビューでフィードバックを貰う大切さ
- ふりかえりによるチーム全体のカイゼンの効果
- 作成物からの学び
- インクリメントを完成させるとプロダクトへのイメージがより具体的になり、フィードバックによるプロダクトバックログへの追加・変更・削除が発生するということ
- 最初に作ったプロダクトバックログは容易に変更される可能性があるということ
- ロールからの学び
事前準備
- プロダクトバックログのカード(付箋で各自作成します。後述)
- 付箋
- A4用紙
- ペン
- プロダクトバックログを貼るスペース(ホワイトボードなど)
- (オプション)撮影用具(iPadだとよい)
- 三脚があるとなお良い
ワークショップで作成するプロダクトについて
ターゲットにスクラムとアジャイルを伝えるための、60秒〜120秒程度の寸劇のシナリオを作成します。
ターゲットは具体的に誰かをイメージします。
その人に最大限伝わる話し方を考えるワークショップです。
プロダクトの例は下記の動画をご参照ください。
進め方
ここからは、ワークショップの進め方を説明します。
全体の流れは以下の通りです。
- スプリント開始前(20分)
- スプリント1(30分)
- スプリント2(30分)
- スプリント3(30分)
- 全体のふりかえり(10分)
タイムボックスは必ず設定します。
時間が足りなかった場合でも、必ずいったん区切り、先に進めてください。
詳細についてはこれ以降の説明を参照してください。
スプリント開始前(20分)
役割とターゲットを決める(3分)
1. ワークショップ中の役割を決めます。
役割は今後どのような役割になるかを加味して決めても構いませんし、ジャンケン等で決めても構いません。
あまり迷わずに決めてしまいましょう。
この役割は、ワークショップ中ずっと固定されます。
- 開発チーム
- 寸劇の実施を担当します。
- 2~3名アサインしてください。
- スクラムマスター
- 寸劇のフォロー(タイムマネジメントやカンペなど)を担当します。
- 1名アサインしてください。
- プロダクトオーナー
- プロダクトバックログの優先順位に責任を持ちます。
- プロダクトバックログの説明責任を持ちます。
- 後述するターゲットを決める人です。
- 1名アサインしてください。
なお、チームのメンバーの数による役割は、以下のとおりです。
- 3人の場合:プロダクトオーナー1人、スクラムマスター・開発チーム兼任1人、開発チーム1人
- 4人の場合:プロダクトオーナー1人、スクラムマスター1人、開発チーム2人
- 5人の場合:プロダクトオーナー1人、スクラムマスター1人、開発チーム3人
6人以上になる場合は、チームを分割してください。
2. ターゲットを決めます。
アジャイル・スクラムの説明をするターゲットを、チームにつき1名仮定します。
ターゲットは「上司のXXさん」のように出来るだけ具体的に設定してください。
プロダクトオーナーがどの人にどんな説明をしたいのか、というのを、チームに説明します。
具体的であればあるほど、どのような説明をすればその人に伝わるのか、というのがイメージしやすくなります。
例)
- 職場の上司
- 職場の同僚
- 顧客
- 家族
- etc.
プロダクトバックログを用意する(10分)
プロダクトバックログを事前に準備します。
下記の例を参考に、付箋や、カードなどにプロダクトバックログを記載・印刷します。
カードは1チームで1組準備します。
ターゲットによっては、より具体的で詳細化されたプロダクトバックログが必要になります。
誰にどのような説明をしたいのか、を意識しながら、プロダクトオーナーはどのような説明をしたいのか、開発メンバーに伝えながら、全員でプロダクトバックログを作成していきます。
例)
- スクラムの3本柱を説明できる
- スクラムの5つの価値基準を説明できる
- アジャイルの価値を説明できる
- スクラムのメリットを説明できる
- スクラムの3つのロールを説明できる
- スクラムの3つの作成物を説明できる
- スクラムの5つのイベントを説明できる
- アジャイル・スクラムの事例を紹介できる
- ...
プロダクトバックログの詳細化を行う(5分)
プロダクトの実現に必要なプロダクトバックログを検討します。プロダクトオーナーが主体となって優先順位付けを行いますが、開発チームからの助言を受けつつ、どんなプロダクトにするのかを具体化していってください。
理想は、「寸劇でどのような説明するシナリオか」が明確になっている状態です。
そのうえで、どこまでをまず1スプリント目で実現したいか、3スプリント目でどこまで実現したいか、という構想が立っている状態です。
スプリント(30分)
スプリントは計3回実施します。
以下の流れで実施します。
- スプリントプランニング(3分)
- 開発(10分)
- スプリントレビュー(5分)
- スプリントレトロスペクティブ(3分)
- プロダクトバックログリファインメント(3分)
1. スプリントプランニング(3分)
着手するプロダクトプロダクトバックログを選択します。
チーム全員でどのプロダクトバックログを実現するかを決めてください。
そのうえで、スプリントの中で、プロダクトがどのような状態になっているべきかを話し合い、チーム全員でスプリントゴールを設定・合意します。
スプリントゴールは以下のようなものです。
例) 上司Aさんにスクラムの利点を説明するために、まずは最大の利点であるXXだけは説明できる寸劇を作る
ゴールの設定が終わったら、プロダクトバックログの実現に必要なタスクを洗い出し、スプリントバックログとして作成してください。
スプリントバックログの例)
- スクリプト(台本)を決める
- 寸劇中のタイムスケジュールを決める
- スクリプト(台本)を作成する
- リハーサルを行う
- リハーサルへのフィードバックと修正を行う
- etc.
2. 開発(10分)
チーム全員でインクリメントを作ります。
スウォーミングやモビングを意識しながら開発を行いましょう。
この場ではスクラムマスターも開発を行ってください。
ただし、スクラムマスターは、あくまで全体を見ながら、チームへの支援を優先します。
スプリントバックログの実施例を以下に示します。
スクリプト(台本)を作成する
寸劇をするためのスクリプト(台本)を用意します。
ぶっつけ本番の寸劇では、品質が安定しません。
どのようなことを伝えたいのか、しっかりと台本に用意しましょう。
メモや台本はA4用紙に記載し、寸劇の際のカンニングペーパーに使ってください。
リハーサルをする
リリース可能な状態にするためには、リハーサルは不可欠です。
開発のなかで、しっかりとリハーサルをして、チーム全員のプロダクトを完成させましょう。
リハーサルの結果、受入可能かどうか(DONEかどうか)をチームメンバーやプロダクトオーナーが判断し、フィードバックを加えてもいいでしょう。
なお、開発チームは、ターゲットと伝える人の2名のどちらかを想定して寸劇を行います。
プロダクトオーナーの要求によっては、伝える人だけが出演する寸劇となっても構いません。
誰が寸劇を担当するかは、スプリント内で開発チームで合意してください。
毎スプリント、担当者が変わっても問題ありません。
3. スプリントレビュー(最大5分)
チームが寸劇し、講師がその寸劇を撮影します。
- 開発メンバーは寸劇を担当します。
- スクラムマスターはタイムマネジメントや、スクリプトを開発メンバーに見えるようにして、開発メンバーを手助けします。
- プロダクトオーナーはターゲットに説明が伝わっているかどうかを見て、あとでチームにフィードバックします。
寸劇中は、プロダクトオーナーや他のチームメンバーは、フィードバックの内容を付箋でメモします。
寸劇が終わったら、プロダクトオーナーや他のチームメンバー、講師からフィードバックをもらいます。
講師はアジャイル・スクラムについて深く理解しており、本当にこの寸劇の内容で伝わったかどうかを真摯にフィードバックしてください。
複数チームでスプリントレビューを行う場合は、
- チームAのレビュー
- チームAへのフィードバック
- チームBのレビュー
- チームBへのフィードバック
- …
というように、レビューとフィードバックをセットで行ってください。
3チーム以上いる場合は、時間の都合上、2チームごとに分かれてのピアレビュー形式にします。
(オプション)全員で動画を見て、フィードバックをもらいます。
4. スプリントレトロスペクティブ
手短かにふりかえりを行います。
スプリントの進め方で、よりよいやり方はないかを模索します。
例)
- 準備不足
- やらなくていいことをやっていないか
- 役割分担がうまくいっているか
- 内容の抜け漏れがないか
- 内容が相手に伝わっているか
- etc.
進め方は自由です。
アクションを決め、次のスプリントに活かしましょう。
5. プロダクトバックログリファインメント(3分)
もらったフィードバックをもとに、プロダクトバックログを見直します。
- どの内容を追加すると効果的か
- どの内容を削除すると効果的か
- どの内容を修正すると効果的か
- 言い回し
- 伝え方
次のスプリントに向けてプロダクトバックログを並び替えます。
最終的な優先順位はプロダクトオーナーが判断して決定します。
プロダクトバックログリファインメントと、スプリントプランニングを合わせて6分間のタイムボックスで行ってもよいでしょう。
この流れで、スプリントを3回繰り返します。
(オプション)最後に、よかった寸劇の動画を見直します。
全体のふりかえり(10分)
ワークショップを通じて、アジャイル・スクラムに関連してどのような気づきがあったのかを全員でふりかえりします。
必要に応じて、講師が補足を行ってください。
ワークショップの効果を高めるためにフィードバックをお願いします
スクラムショーワークショップは、生まれたばかりのワークショップです。
yycr2019では、コーチ群が被験者となってワークショップをリハーサルしておりますが、実際にはアジャイル・スクラムの初学者が対象となるため、どのような結果になるのかが完全に読めません。
皆さんのフィードバックにより、このワークショップは育っていきます。
ぜひ、コメント等に「こんなことをやったらこんな風になった」というフィードバックをぜひお願いします。
優先順位の高いものから適宜取り込んでいきます。
ワークショップのメイキング動画について
このワークショップの本質を知るには、yycr2019にてワークショップのリハーサルを行った様子を見るのが一番です。
メイキング動画では、試行錯誤しながらワークショップを作るなかで、参加者側にどのような気づきが生まれるか、どのような狙いがあるか、を知ることができます。
(メイキング動画は2019/06/23公開予定です。お待ちください)
もう一つのワークショップの事例
寸劇を即興で考え、発表しあうことによって、誰がどんな観点でアジャイルやスクラムをとらえているのかを知ることができます。
発表者はトークンを投げてランダムに決めて、お題を決めて60秒~120秒程度で発表してもらうとよいでしょう。
クレジット
ワークショップの作成者一覧です。ご利用いただく場合は「yycr2019」または以下のメンバーをご記載いただけますと幸いです。
- 森一樹(@viva_tweet_x)
- 吉羽龍太郎(@ryuzee)
- 笹健太(@sasakendayo)
- 太田陽祐(@y0t4)
- 細澤あゆみ(@ayumi_hsz)
- 川口恭伸(@kawaguti)
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