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web版空間オーディオを利用した仮想空間での位相と距離の調整方法

Last updated at Posted at 2022-12-21

はじめに

今回の記事ではagoraの空間オーディオ(spatial audio)がweb版で正式リリースされたので、そちらを使用したサンプルを作成していきます。

以前に投稿したこちらの記事では、各ユーザー間の位置の距離に応じてボリュームを変更するサンプルを作成しています。
今回の記事では、こちらの制作物に空間オーディオを導入し、よりパワーアップさせます。

今回空間オーディオとして実装するパラメーターは以下の2点とします。
1, 位相
→自分よりも左のpisitionにいるユーザーの声は左から、右にいるユーザーの声は右から聴こえる
2, 距離
→自他のposition間の距離が遠くなると声が小さくなる

2に関しては、前記事の制作物の段階では setVolume APIを用いて音量を調整していましたが、これを空間オーディオ要素の一種である、距離を指定するパラメーターを使用した実装に置き換えていきます。

完成物は以下になります。
github

開発環境

Chrome 107.0.5304.121
その他は上記記事参照

実装

ここからは、index.html内の記述を改良していきます。

事前準備

使用するagoraRTCを最新のものに置き換えておきます。

<script src="https://download.agora.io/sdk/release/AgoraRTC_N.js"></script>

また、jqueryも同リポジトリのこちらから jquery-{バージョン}.min.js を元々のjquery.js と入れ替え、scriptタグの相対パスを書き換えておきます。

また、後にjavascriptの記述を module として扱う関係上、buttonタグのonClick属性やonChange属性が正常に動かなくなります。

そこで予めこれらの属性は削除し、代わりにjqueryでJS上から発火させる形に変えておきます。

async function join() → $(“join”).click(async function (e)

changePosition() の方も同様です。

また、125~128行目のrtmのjoinに関しては現状の記述では警告が出る可能性があるので、以下に置き換えます。

await client.join(appId.value,channel.value, null, userInfo.uid)
localTracks.audioTrack = await AgoraRTC.createMicrophoneAudioTrack({microphoneId:audioSource.value});

spatialAudioExtension導入

agora社のドキュメントにもあるように、以下のフローでの導入を行います。

スクリーンショット 2022-12-20 16.17.37.png

今回は既に出来ているソースに付加していく形になるので、こちらのagora社の提供しているサンプルから、spatialAudioの導入に必要な以下の3ファイルを拝借し、同ディレクトリに配置します。

「audio_spatializer.wasm」
「index.esm.js」
「spatial-audio-worker.js」

続いて、SpatialAudioExtensionクラスをindex.esm.jsからimportする為、javascriptをmodule化します。

<script language="javascript" type="module">

その後importとインスタンスの生成を行います。

import { SpatialAudioExtension } from "./index.esm.js";

const extension = new SpatialAudioExtension();
AgoraRTC.registerExtensions([extension]);

続いて、リモートユーザーのaudioTrackをspatialAudioとして再生する為の処理を記述します。
subscribe() を以下に置き換えます。

async function subscribe(user, mediaType,volume) {
  const uid = user.uid;
  await client.subscribe(user, mediaType);
  console.log("subscribe success");

  //以下が空間オーディオに関わる記述
  const processor = extension.createProcessor();
  user.processor = processor;
  const track = user.audioTrack;
  track.pipe(processor).pipe(track.processorDestination);

  track.play();
}

ここからは、positionに応じて空間オーディオのパラメーターを調整する処理を記述して行きます。

冒頭で記述した通り、今回触るパラメーターは2種類です。

・位相(=azimith)
・距離(=distance)

スクリーンショット 2022-12-20 15.51.07.png

位相は0が前から、90は自分から見て左から、180は後ろ、270は右から聞こえます。
距離は[1,50]の範囲で調整可能であり、数値が大きくなると距離が遠くなるので声が小さくなります。

ここから実際にコードを記述していきます。

自分が位置を変更した時

$("#position").change(function (e) 内の以下の記述で、position間の距離を用いて setVolume API のパラメーターに使用する volumeを計算しています。

var dist = userInfo.position - res.position;
var volume = 100 - (Math.abs(dist))*20;
remoteUsers[i].user.audioTrack.setVolume(volume);

volumeの数値に関しては API が従来の setVolume ではなく空間オーディオ用のものを使う為、若干計算式が変わるのでここでの volume の算出の行は削除します。

ここからは、新たに空間オーディオのパラメーターを変更する為の関数 updateRemotePosition を作成します。

まず左右の振り分けに関して、dist < 0 であれば自分より相手が右にいる事になります。

オーディオの位相を指定する際には pudateSpatialAzimuth([0, 360])が使用できます。

ですので、声が右から聴こえるようにするには processor.updateSpatialAzimuth(270);
で実装が可能です。

距離に関しては同様に updateSpatialDistance([1, 50])で指定ができます。

これらを踏まえて、以下の記述を追記します。

function updateRemotePosition(memberId, dist){
  if(dist < 0){
    remoteUsers[memberId].user.processor.updateSpatialAzimuth(270);
  }else if(dist == 0){
    remoteUsers[memberId].user.processor.updateSpatialAzimuth(0);
  }else{
    remoteUsers[memberId].user.processor.updateSpatialAzimuth(90);
  }

  var volume = 1 + (Math.abs(dist))*7;
  remoteUsers[memberId].user.processor.updateSpatialDistance(volume);
}

その後、先ほどの setVolume API で音量を調整していた箇所を、今作成した関数の呼び出しに置き換えます。

updateRemotePosition(i, dist)

相手が位置を変更した時

空間オーディオのパラメーターを更新する関数は先ほど作成しているので、ここからあまり記述する内容はありません。

joinRtm() の終盤にある以下の記述の箇所が、音量を調整している箇所になります。

var dist = userInfo.position - res.position;
var volume = 100 - (Math.abs(dist))*20;
remoteUsers[memberId].user.audioTrack.setVolume(volume);

先ほどと同様に volume の算出の行を消し、setVolume API を使用している行を以下に置き換えます。

updateRemotePosition(memberId, dist);

以上で、今回の作業は終了です。

二人以上でお試しいただき、相手の声が空間オーディオのパラメーターによって変化しているのが確認できれば成功です。

関連リンク

最後に

agora.ioに関するお問い合わせはこちらから
Agoraの詳細はこちら

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