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UiPath AIエージェント活用ガイド ~ Agent Builder構成の詳解 運用編

Last updated at Posted at 2025-04-22

前回の開発編では、UiPath Agent Builder を使って AI エージェントを構築する際に必要なコアコンポーネントの役割について解説しました。

本記事では、構築した AI エージェントの品質をどのように評価し、改善していくかに焦点を当て、UiPath Agent Builder の機能を活用してそれを実現する方法を紹介します。

UiPath Agent Builderでは、以下の3つの機能が備わっており、作成した AI エージェントの品質の評価、改善、実行の追跡を行うことができます。

  • ヘルス スコア:エージェントの性能・信頼性をスコア化し、運用上の健全性を定量的に把握できます。
  • 評価:入力と期待される出力を用いて、エージェントの正確性を事前にテストできます。
  • トレース:エージェントの実行時の処理内容を詳細に記録し、動作分析やデバッグに活用できます。

1️⃣ ヘルス スコア

ヘルススコアは、UiPath エージェントの性能と信頼性を総合的に評価する指標であり、自動化システム内での有効性を定量的に把握できます。

評価は主に以下の 4 項目に基づいて行われます:

  • プロンプト構造(文の目的、長さ、明確さなど)
  • ツール・コンテキスト・エスカレーションの利用状況(人の介入の有無など)
  • 入出力引数の設計(変数の定義)
  • 評価データセット(入力と期待される出力との整合性)

これらの項目は多面的に分析され、各項目に 0〜100 のスコアが付けられます。
さらに、それらを重み付き平均で集計し、最終的なヘルススコアとして表示されます。

以下は、実際のヘルススコア画面の例です。

image.png

プロンプト文の改善(例)

プロンプト文を例に、このスコアをどのように活用して改善できるのか見てみましょう!

image.png

図に示されているとおり、プロンプト文は次の 5つの観点 から評価されます:

評価項目 説明
明確さ(Clarity) システムプロンプトとユーザープロンプトの明確さを評価し、スコアの根拠を示します。
完全性(Completeness) エージェントが遂行すべきタスクがどれだけ完全にカバーされているかを評価します。
一貫性(Consistency) 指示内容に矛盾がないか、一貫しているかを確認します。
思考の流れ(Chain of Thought) エージェントのタスクに対して、思考の流れが適切に組み立てられているかを評価します。思考の流れがない場合は減点されます。
デモの整合性(Demos) デモ(例示)がエージェントのタスクに適切に対応しているかを評価します。デモがない場合は減点されます。

上記の[Demos]がPoorでしたので、マウスを[Demos]にホバーすると、アドバイスが表示されます。

image.png

この評価では、「エージェントが学習・判断するためには具体例が不可欠であり、それが欠けていることが問題」と指摘されています。
具体的に、モデルが「保守要員をどのようなルールで選定するか」を理解するためのガイドが不足しています。特に、「入力と出力のペア(例:どのような条件で誰を選んだか)」が欠如しています。

プロンプト(Before)

以下が改善前のプロンプト文([Demos]指標がPoor):

あなたは保守設備のアサインを担当するエージェントです。

以下の <未対応設備一覧> に記載された各設備に対して、  
「保守要員一覧」(コンテキスト情報)を参照し、適切な保守要員A・Bを選定してください。

【選定ルール】:

1. 保守要員A・Bともに、その設備に対して「保守資格を持っている設備名」に含まれている必要があります。
2. AとBは別の人物としてください。
3. 人間関係の衝突(備考欄の内容)を考慮し、相性の悪いペアは避けてください。
4. 適任者が複数いる場合、技術力・協調性・過去の実績などを考慮して判断してください。
5. 必ず「アサイン理由」を簡潔に記載してください(例:「経験豊富」「相性が良いため」など)。

アサイン処理が完了したら、最後に出力した「アサイン結果一覧」を、Slackの[Send Message To Channel]アクティビティを使って設備管理チャンネル(#Infra)に送信してください。

送信メッセージには、各設備に対する保守要員A・Bの割り当て内容とアサイン理由を簡潔にまとめてください。

例:
「アサイン結果をお知らせします。
・設備A:担当Aさん/担当Bさん(理由)
・設備B:...」

Slackへの投稿が完了したら処理終了です。

【補足】:
もし、いずれかの保守要員(AまたはB)が見つからない場合は、  
<保守要員の手動確認> エスカレーションを実行し、対象設備名とアサイン結果を記載してください。


【出力形式】:
[
  {
    "設備名": "〇〇設備",
    "保守要員A": "氏名A",
    "保守要員B": "氏名B",
    "アサイン理由": "ペアを選んだ理由"
  },
  ...
]

必要に応じて、備考欄の人間関係情報も活用しながら、適切な保守体制を構築してください。

プロンプト(After)

ヘルススコアでのアドバイスに従い、以下のような具体例をプロンプトに追加しました。

...
---

【デモ(入力例と出力例)】

◆ 未対応設備一覧(一部):
[
  { "設備名": "ポンプA", "保守期限": "2025-03-01" }
]

◆ 保守要員一覧(一部):
| 氏名   | 保守資格         | 技術力 | 協調性 | 備考                 |
|--------|------------------|--------|--------|----------------------|
| 佐藤健 | ポンプA, ポンプB | 高     | 中     | 鈴木とは過去にトラブル有 |
| 鈴木翔 | ポンプA          | 中     | 高     |                      |
| 山田花 | ポンプB          | 高     | 高     |                      |

◆ 出力例(アサイン結果):
[
  {
    "設備名": "ポンプA",
    "保守要員A": "佐藤健",
    "保守要員B": "山田花",
    "アサイン理由": "佐藤は技術力が高く、山田は協調性が高くバランスが取れているため。佐藤と鈴木は相性が悪いため回避。"
  }
]
...

その結果、再度ヘルススコアを計算したところ、以下のように改善が見られました。

image.png

2️⃣ 評価

Evaluation(評価) は、エージェントが期待通りに正確に動作するかどうかを検証するための重要な仕組みであり、特に本番運用前の品質確認に役立ちます。Agent Builder には、評価セットを作成・実行する専用の画面が用意されています。

評価は主に、「入力に対する出力が期待通りかどうか」を検証するために行われ、入力・出力とアサーション(評価方法) として定義されます。

エージェントに対する評価セットは、以下の2通りの方法で作成できます:

  • [プレイグラウンド] 画面から作成: エージェントを実行した後、その結果を元にすぐ評価を作成できます(必要に応じて修正も可能)。

    • [プレイグラウンド] 画面から実行後に作成
  • [評価] 画面から直接作成: 評価データセットをあらかじめ準備し、それぞれのフィールド記入します。

    • [プレイグラウンド] 画面から実行後に作成

アサーションの種類が以下の3種類があります、必要に応じて選んでください:

アサーションの種類 特徴・用途 推奨されるケース
評価者としての LLM(既定) - LLM が評価者として出力の品質や正確性を判断
- 完全一致ではなく、文脈や意味を加味した柔軟な評価が可能
- 自然言語や複雑な構造を含む出力の検証に最適
- 自然言語での応答
- 推論を含む出力
- 複雑な構造化データの評価
JSON の類似性 - 出力が JSON 構造である場合に使用
- 構造と内容が似ていれば OK という柔軟性がある
- 正確な一致ではなく、主要なフィールドの一致を確認
- JSON フォーマットの出力
- 一部フィールドのみを検証したい場合
等しい(Equal) - 出力が完全に一致することを求める評価方法
- Boolean 値、数値、文字列のような単純な出力に最適
- true/false の判断
- 数値の正確な一致
- プリミティブな文字列や配列

作った評価セットを実行したら、以下のような結果が確認できます。
image.png

評価の数の決め方やカバレッジの原則に関しては、以下のページをご参照ください。

3️⃣トレース

トレースは、エージェントの実行中に行われたアクション、入力、出力、イベントなどを詳細に記録したログです。
各ステップで何が行われ、どのようなデータが処理・生成されたかを把握できるため、エージェントの動作を可視化・分析するのに役立ちます。

以下に、Traces(トレース)の主要な役割をまとめました:

No. 役割 説明
1 アクションの追跡 エージェントが実行したすべてのアクション(外部システムとの連携、データ取得、意思決定、タスク実行など)を記録します。
2 意思決定の流れ 特定の判断や結果に至った思考プロセスを記録し、透明性を確保。エージェントのロジックや理由を把握するのに役立ちます。
3 エラー検出 想定外の結果やエラーが発生した箇所を特定しやすくし、問題の迅速な解決を可能にします。
4 パフォーマンスの監視 エージェントの処理速度や成功率、効率などを時系列で把握でき、継続的な最適化に活用できます。
5 監査とコンプライアンス 規制対応や社内ポリシーの遵守が求められる環境において、エージェントの活動記録として活用され、証跡管理に不可欠です。
6 テストと評価 テスト実行中のすべての動作を記録することで、エージェントの信頼性と正確性の検証が可能になります。多様な条件下での動作確認に役立ちます。

以下のように、どのようにLLMをコールしているか、どんなファイルを参照していたか、トレースで実行の詳細を追跡することができます。

image.png

🛠️ エージェント作成のベストプラクティス

ここからは、実際にエージェントを作成する際に役立つ「ベストプラクティス」をご紹介します。
理論だけでなく、「では実際にどう設計すればよいのか?」という疑問に応えるため、現場で活用できる具体的なヒントをまとめました。

信頼性が高く、柔軟に動作し、管理もしやすい──そんなエージェントを目指す方にとって、ぜひ参考にしてください。

ベストプラクティス 概要・目的 推奨内容・ポイント
小さな既存ワークフローから始める 既存の自動化プロセスを活用し、リスクを抑えてエージェント設計スキルを段階的に習得 - 既存業務の棚卸とフロー分解
- 明確な判断基準と構造を持つプロセスから着手(例:サポートチケット分類など)
明確なゴールと目的を持つ プロンプト設計の前にエージェントの目的と成果を明確化 - 測定可能な目標の定義
- 運用環境とKPIの設定
- 成功条件の明文化
モジュール型アーキテクチャ設計 柔軟かつ再利用可能な構成により、高速な機能統合とタスク分担を可能に - 関心の分離(Separation of concerns)
- スキルモジュールの組み合わせ
- 標準化されたインターフェース設計
明確で一貫性あるツール命名 ツール名はエージェント内で正確に参照されるため、命名は簡潔かつ機能を正確に表現する必要あり - 小文字+英数字、スペース/記号NG
- 例:web_search, code_interpreter, document_analysis, data_visualization
構造化されたプロンプトと反復 複雑なタスク分解・推論・エラー処理を含む指示群で、LLMに段階的な処理を促す - 明確な役割・手順・理由付け・出力形式の指定
- chain-of-thought を活用した思考プロセスの明示
- 少ない構成で安定した出力を目指す反復改良
トレースの確認と活用 実行ログをもとに、意思決定・エラー・パフォーマンスなどの可視化と最適化を行う - 各ステップの動作追跡
- ツール使用傾向や失敗箇所の分析
- 定期的レビューで長期的進化と健全性を維持
多様な評価データセットの構築 実世界の複雑性を模した評価により、堅牢なエージェント性能を検証 - エッジケースや失敗パターンを含む
- ドメイン専門家との連携
- 合成/敵対的テストデータも活用
複数の観点からのエージェント評価 精度だけでなく、透明性・創造性・倫理性なども含む包括的な評価フレームワークを整備 - 技術指標+定性評価+安全・倫理要件
- 自動評価+人による確認(Human-in-the-loop)
自動化の中でエージェントを検証 単体テストにとどまらず、エージェントを自動化ワークフローに組み込んで検証 - システム間連携、負荷変動への対応、失敗時の復旧などを含む統合テスト
- UiPath Test Suite での包括的テスト推奨

🔚 最後に

本記事では、UiPath Agent Builder を使ったエージェントの評価・改善・追跡方法をご紹介しました。

ヘルススコア・評価・トレースを活用すれば、より信頼性の高いエージェント運用が可能になります。
ぜひ、自社の自動化プロジェクトにも取り入れてみてください。

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