1. はじめに:Designshipでの発見
初めて Designship に参加してきました!数々のセッション(講演)や展示でデザインの最前線に触れることができ、たくさんの刺激を受けました。いくつかの印象に残った講演をまとめていけたらと思います。
今回は菅俊一さんによる「問いが世界を拡げていく」という講演の振り返りと私自身の感想を交えてご紹介します。
2. 問いが注意を操作する仕組み
この講演では、日常の中で「見えているけれど見えていないもの」に気づくための方法として、「問いを立てること」がいかに重要かが語られました。
2.1 写真を用いた注意の向け方の変化
講演では、写真を例に問いが注意を操作する仕組みが紹介されました。
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「何か気になるものを探して」と言われた場合:
注目点が曖昧になり、どこを見ればよいか分からない。 -
「黄色くて丸いものを探して」と条件を付けられた場合:
指定された特徴に基づき、視覚的に絞り込むプロセスが発生。
この違いは、「問いが注意の焦点を定める力」を直感的に示しています。
2.2 注意を引く仕組みづくり
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注意パネルのみの場合:
目に入らず、誤って土足で上がる人が多かった。 -
ダミーの靴を置く場合:
注意が自然と引き寄せられ、間違う人がいなくなった。
禁止を押し付けるのではなく、ユーザーの自然な行動を促す仕組みづくりの重要性が示されました。
2.3 シャインマスカットの例:行動を操作するデザインの工夫
シャインマスカット のエピソードは、行動を操作するデザインの工夫の面白い例です。
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あるの年、冷蔵庫に「ご自由にお召し上がりください」とだけ書かれたシャインマスカットの差し入れが置かれていた。
このままだと、「何粒食べていいのか」「全部食べても良いのか」と迷いが生じ、誰も手をつけることができなかった。 -
翌年、シャインマスカットはカップに分けられ、「ご自由にお召し上がりください」と書かれた状態で提供された。
この変更により、迷いが解消され、多くの人が気軽に食べることができました。
「食べようとしやすくする」ための工夫が行動を変える力を持つことを示しています。
3. ヒアリングやUXデザインへの応用
3.1 ヒアリングでの問いの工夫
ヒアリングを行う際にもさまざまな問いを用いて注意の向け方を操作することで、相手に気づきを与えるプロセスが行われているのではと考えました。
問いを使って相手の注意を操作することで、潜在的なニーズを引き出すことができます。
- 「普段困っていることは何ですか?」
→ 「もっとスムーズになったら嬉しい作業は何ですか?」
質問の焦点を明確にすることで、より具体的な回答を得られるようになります。
3.2 業務システムのUXデザイン
複雑な業務システムでは、適切な問いや条件付けによって注意を操作し、ユーザーの迷いを軽減することが可能です。
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具体例:
- 必須項目を赤いアスタリスクで示し、完了していないタスクを黄色でハイライト
- フォーム入力時に、入力フィールドの横に関連するヘルプテキストやサンプルを表示
- エラー時、「赤枠+具体的な改善例」を表示
5. まとめ:デザインにおける問いの重要性
講演を通じて、「問いを立てること」が新しい気づきやデザインの可能性を広げる鍵であることを学びました。特にUI/UXデザインでは、注意を引き、適切な行動を促す仕組みを取り入れることで、ユーザー体験の向上が期待できます。
デザインにおける問いは、単なる「気づき」を促すだけでなく、ユーザーに新しい視点を提供し、より直感的で心地よい体験を作り出す力を持っています。今後、問いを意識して、より使いやすく、気持ちよく使えるインターフェースを目指していきたいです。