人工知能の種類
人工知能(AI)をどう定義するかによるが、「AIにできること、できないこと」1によれば、
「コンピュータに知的な作業を行わせる技術」
ということらしいです。コンピュータはそれだけでは計算機としての役割しかありませんが、知的な作業というのは計算だけではできません。今日では、弱いAI(ある特定の作業が得意な人工知能)しかできておらず、研究の中心も弱いAIです。しかしながら、AlphaGoや東大ロボに見られるように、人間の能力を上回るAIも出始めており、不完全ながらも人々を魅了しています。また、広告や政治活動などもAIが台頭してきており、フェイク動画や個人に沿った広告の表示など、日常生活でも避けて通ることができなくなりつつあります。
もし、強いAIが完成したなら、コンピュータが自我を持って言葉を発したり、表現したり、様々なことがひとりでにできるようになると、それはもはやシンギュラリティーを克服し、ゲーム「Detroit: Become Human」や映画「I, Robot」のようにAIが人間の意図を無視したり暴走したりして人間を襲うことが現実になるかもしれません(極端ですが)。
2045年問題とも言われています。
現状では、AIはただのアルゴリズムなので、そういう意味ではシンギュラリティーを超えることはまずないのではないかと思います。
話が脱線しましたが、人工知能には大きく分けて次の4種類があります。
- 教師あり学習(分類モデル、回帰モデル)
- 教師なし学習(クラスタリング、主成分分析)
- 強化学習(報酬を与えて、それを最大化するような行動を学習させる)
- それ以外(ルールベース)
上3つをまとめて__機械学習__と呼びます。
機械学習は簡単に言えば、条件分岐も自動的に学習してくれるアルゴリズムです。
予測モデルを人間が作るのではなく、自動的に生成してくれます。
それでも、特定のパラメータの値は人間が決めなくてはいけません。そのようなパラメータを__ハイパーパラメータ__と呼びます。
また、機械学習の部分集合として、__深層学習(ディープラーニング)__というものがあります。
世間的には「AI=ディープラーニング」と受け止められていますが、決してAIはディープラーニングだけではありません。
注目されている理由は、ディープラーニングが神経細胞ニューロンを模したものであり、人間の脳の構造により近いからです。
ただ、物体や文字を認識するにも、人間による認識とコンピュータによる認識とでは大きく違います。
そういう意味では、まだまだ人間の脳を構成するのは無理でしょう。
ちなみに、AlphaGoではディープラーニングと強化学習を組み合わせた__深層強化学習__が使われています。
それでは、機械学習のそれぞれについて、いくつか手法をざっくり紹介します。
教師あり学習
教師あり学習とは、教師データ(入力データ+正解ラベル)を元にモデルを学習し、未知のデータに対して予測や分類をする技術のことです。
例えていうと、教師が生徒に例題の解法を教えて、次いでその解法を学習した生徒が練習問題を解く、というイメージでしょうか。
目標はその生徒の正解率をあげることです。
しかしながら、教え込みすぎると、変な癖がついたり自分で考えることをしなくなり、結果的に以前解けたような簡単な問題でもできなくなってしまいます。
その状態を__過学習(overfitting)__といいます。
過学習は、いわば訓練データに適合しすぎている状態です。
つまり、教えた通りにしか生徒が解けず、ちょっと問題文の言い回しや数値を変えただけで途端に解けなくなってしまうというイメージです。
したがって、過学習を起こさないようにパラメータを調整しながら、できる限り誤差が小さくなるようなモデルを作らなければなりません。
教師あり学習には、回帰と分類問題の2種類があります。
まずは回帰について見ていきましょう。
(教師あり学習の概要に続く...)
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藤本浩司・柴原一友『AIにできること、できないこと』日本評論社、2019年 ↩