前置き
昔、とても気分の悪い目に遭ったことがある。
応用情報技術者とTOEIC600点を取得したが、
給与が上がらないため、あるSES会社の面談を受けた。
「当社なら、あなたを客先に月額65万円で売り込めます」
『それで、私には年収いくら払ってもらえるんですか?』
「前職給与は? 前職給与は?」
『350万円ぐらいです』
「じゃあ、ウチは355万円で」
"じゃあ"の意味が分からない。
月額65万円ということは、年間780万円の売上が見込める。
じゃあ、その6割を基本給としてお支払いします、なら分かるが
売上が決まってるのに、前職給与がどうとか関係なくね?
なお、Google先生によると、平均年収は450~650万円らしい。
歴史は繰り返す
そして最近、また同じようなことが起こった。
一応、合格率10%台と言われるIT系の資格を3つ取得したが、
給与が上がらないため、ある会社の面談を受けた。
「前職給与は? 前職給与は?」
『前職給与はXXX円ですが、貴社の年収テーブルに沿って
同等レベルの技術者と、同等の給料に設定していただきたく』
結果
前職給与+500円(年収500円アップ)
人は多かれ少なかれ、能力に対して給与が不当に低い
と考えているから、転職を検討するというのに、
その不当に低い額をベースに決めてどうするんだ?
またすぐ辞めるだけだろ。
他社がどう関係あるのか
私も子供の頃、よくオカンとこんな会話をしたものだ。
『〇〇君は小遣いXXX円貰ってるんだって』
「ヨソはヨソ! ウチはウチ!」
他社は他社でしょ?
なぜ、他社の懐具合で決まった、他社が払っている給料を
その人の価値を表す絶対基準として妄信するのか分からない。
いや、言いたいことは分かるよ。
日本の労働基準法だと、一度正社員として雇ってしまうと、
簡単に解雇できないし、簡単に給与も下げられない。
だから、1年目の給与はなるべく抑えたい、でしょ?
でも、あまりにもやり方がヘタクソすぎて反吐が出る。
私が採用側だったらこうする
案①:夢を見させる方法
「当社の給与テーブルはこのようになっています」
ランク | 月給 |
---|---|
C | 65万円/月 |
D | 60万円/月 |
E | 55万円/月 |
F | 50万円/月 |
G | 45万円/月 |
H | 40万円/月 |
あなたのスキルはランクDからGの間になると思われますが、
現時点で正確に判定することは困難なため
試用期間中は仮置きでランクGとさせてください。
期間満了時に、改めてランクを決定させてください。
上げる気がなくても、とりあえずこう言っておけば納得するだろ。
案② ゲタを履かせる方法
年収は前職給与と同じですが、入社祝い金を100万円支給します。
期待通りのパフォーマンスを発揮できれば、昇給100万円となり
2年目からの年収も、前職給与+100万円となります。
海外では「サインアップボーナス」としてメジャーな手法。
「祝い金」としておくことで、歓迎している感を演出できる。
実際には難癖をつけて、昇給1000円とかにしておけばいい。
頭が悪すぎる方法
「前職給与は? 前職給与は?」
『600万円ぐらいです』
「じゃあ、ウチは600万500円で」
わざわざワンコイン分だけ乗っかるように微調整。
これで頑張ろうと思える人間がいるなら見てみたい。
きっと、心理的にはこんな感じなんだろう。
600円の限定グッズがメルカリに750円で出品されていた。
「原価が600円だから、俺は600円しか払いたくない!」
いや、他人がいくらで調達したとか関係ないでしょ。
大事なのは、お前にとっていくらの価値があるかでしょ。
他社がXXX万円しか出していないから、ウチもXXX万円だ。
こんなやり方をしてたら、優秀な人は絶対に採用できない。
追記
メルカリでは
前職給与の参照による「説明できない格差」があったことを
自ら公表した上で、是正するようにしたらしい。
「メルカリは約95%が中途採用です。面接などで個人の能力を判断して報酬オファーを出していますが、やはりどうしても前職の給与を考慮した金額になります。
女性のほうが賃金が低いという社会的な構造があり、そこを断ち切ることができていなかった。
女性のオファーをわざと低く出そうとする人はいませんが、一般的な転職のプラクティスを取り入れた結果、社会の性差を再生産してしまっていたんです」