push.default=simple が upstream 相当にならない時

Qiitaとかでよくある説明。

simple
upstreamが設定されていて、それが同名のブランチ名であるときのみpushする。

$ git remote add origin [e-mail]:unarist/test.git
$ git push origin
fatal: The current branch master has no upstream branch.
To push the current branch and set the remote as upstream, use

    git push --set-upstream origin master

これは期待通り。

$ git remote add hoge [e-mail]:unarist/test.git
$ git push hoge
Counting objects: 3, done.
Writing objects: 100% (3/3), 197 bytes | 0 bytes/s, done.
Total 3 (delta 0), reused 0 (delta 0)
To [e-mail]:unarist/test.git
 * [new branch]      master -> master

え？upstream設定してないのに、なんでrefspecなしでpushできてるの？

要約

• ブランチのupstreamとpush先が違うremoteの時、push.default=current と同じになる
  • つまり「カレントブランチと同名のブランチにpushする」
• ブランチのupstreamが設定されていない場合は origin
• ただしupstreamが無効なremoteの場合は push.default=upstream 互換のまま
  • 例えば、ブランチのupstreamが設定されておらず、 origin 以外のremoteしか作ってない時。

むかーしむかし、あるところに

Triangular workflow というのがあります。「普段はupstreamからpullしたいけど、pushは別のところにしたい」というパターン。Gitにはこれをサポートする機能として、remote.pushdefault branch.<name>.pushremote という設定があり、例えばブランチのupstreamがrepoAになっていても（オプションなしで）repoBに対してpushする、ということができます。

これらの設定はあくまでデフォルトのpush先を指定するものであり、「push時はそれがupstreamになる」というわけではありません。git push <repo> 相当ですね。

push.default=upstream は「refspecなしのpushは常にupstreamに対して行われるべき」という設定なので、Triangular workflowとは相性が悪いのですが、これまでは push.default=matching がデフォルトでしたし、マニュアルにも一応注意書きがあります。

upstream - push the current branch back to the branch whose
changes are usually integrated into the current branch (which is
called @{upstream}). This mode only makes sense if you are
pushing to the same repository you would normally pull from
(i.e. central workflow).

さて、最近になって push.default=simple が現れ、勧められるようになりました。今の最新版ではこれがデフォルト設定です。そうなると、Triangular workflow をしていた人は（これまでデフォルト設定で動いていたのに）設定を変えないといけません。

「面倒だな。よし、Triangular workflow っぽい時は push.default=simple からupstreamの縛りを除いた、push.default=current をデフォルトにしよう」

push: change simple to accommodate triangular workflows · git/git@ed2b182

その基準が「upstreamとpush先のrepo(remote)が異なる時」なので、 git push piyo としても push.default=current 相当になるというわけです。めでたしめでたし。

おまけ：simple vs current

matching よりマシってぐらいの理由で simple を使ってましたが、 current もよさそうですね。普段同じremoteにpushすることが多いなら、 upstream設定してなくても git push が使えて便利な気もします。origin 以外をデフォルトにしたいなら remote.pushdefault 設定すればいいですし。

逆にこういう場合は current はやめたほうがよさそうです。

• ローカルとは違う名前のブランチにpushしたい（することがある）
• upstream設定していなければ叱ってほしい
• git push <not-upstream-repo> したら叱ってほしい（これは simple でもだめですが）