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最小構成の.vimrcの作り方

Last updated at Posted at 2022-07-20

はじめに

プラグインの不具合報告をするために、最小構成の .vimrc が必要になりました。
私は何をもって「最小構成」なのかわからず、そもそも作り方がわかりませんでした。

vim-jpでいろいろ教えていただいたので、最小構成の .vimrc の作り方を紹介します。

環境

  • OS:macOS Monterey 12.4
  • Neovim:v0.6.1

「最小構成の.vimrc」とは?

「あるプラグインが動作する最小構成の .vimrc 」のことです。
英語では「Minimal vimrc」といいます。

例えば ddc.vim の不具合報告をしたい場合、以下が「最小構成の .vimrc 」となります。

  • ddc.vimのインストール
  • 不具合の再現に必要なプラグインのインストール
  • 不具合の再現に必要な設定

最小構成の.vimrcを作る目的

ある不具合が発生したとき、その原因を切り分けるために最小構成の .vimrc を作成します。

不要なプラグインや設定があると、不具合の原因が対象のプラグインにあるのか判断しづらいです。
最小構成の .vimrc を作ることで、自分でも原因の切り分けができ、そもそもIssueを立てずに済むこともあります。

プラグイン開発者の負担を減らすために、最小構成の .vimrc を作って試せるスキルは必須です。

最小構成のルール

最小構成の .vimrc を作る際のルールを紹介します。

プラグインマネージャーを使わない

Dein.vimなどのプラグインマネージャーを使っていると、不具合の原因がプラグインマネージャー側にあることを否定できません。
プラグインマネージャーを使わないことで、プラグインマネージャーが原因であることを完全に排除できます。

1つの.vimrcに50行以内で書く

「50行以内」はddc.vimのIssueテンプレートに書いてあることで、他のプラグインはこの限りではありません。
.vimrc を1つとも明記されていませんが、50行以内の長さで分割する必要はあまりないため、できる限り1つに収めるのが望ましいです。

不要な設定を書かない

なくても不具合の再現に影響しない設定は書いてはいけません。
例えば set number は、不具合に無関係なら書きません。

プラグインも再現に不要なものは入れません。

最小構成の.vimrcの作り方

最小構成の .vimrc の作り方を紹介します。

プラグインをダウンロードする

必要なプラグインを git clone で適当な場所にダウンロードします。
私は ~/temp フォルダを使うことが多いです。

$ mkdir ~/temp
$ cd ~/temp
$ git clone {プラグインのURL1}
$ git clone {プラグインのURL2}
...

今回は以下のプラグインをダウンロードしました。

$ mkdir ~/temp
$ cd ~/temp
$ git clone https://github.com/github/copilot.vim.git
$ git clone https://github.com/vim-denops/denops.vim.git
$ git clone https://github.com/Shougo/ddc.vim.git
$ git clone https://github.com/Shougo/pum.vim.git
$ git clone https://github.com/Shougo/ddc-around.git
$ git clone https://github.com/Shougo/ddc-matcher_head.git
$ git clone https://github.com/Shougo/ddc-sorter_rank.git

.vimrcを作成する

既存の .vimrc を壊さないよう、 .min.vimrc のような普段は使わない名前で作成します。

$ touch ~/temp/.min.vimrc

.vimrcを編集する

.min.vimrc を編集します。

$ nvim ~/temp/.min.vimrc

以下のテンプレートに沿って作るといいです。

.min.vimrc
syntax enable
filetype plugin indent on

" プラグインを読み込む
set rtp+={プラグインのパス1}
set rtp+={プラグインのパス2}
...

" 必要な設定を書く
...

rtpruntimepath の省略形です。

+= はカンマ区切りのリストの後ろに要素を追加します。
^= を使っているのも見ますが、こちらはカンマ区切りのリストの に要素を追加します。
先頭のパスからプラグインを読み込むので、読み込む順番が関係する場合は使い分けましょう。

今回は以下のように作成しました。

.min.vimrc
syntax enable
filetype plugin indent on

set rtp+=~/temp/copilot.vim
set rtp+=~/temp/denops.vim
set rtp+=~/temp/ddc.vim
set rtp+=~/temp/pum.vim
set rtp+=~/temp/ddc-around
set rtp+=~/temp/ddc-matcher_head
set rtp+=~/temp/ddc-sorter_rank

call ddc#custom#patch_global('sources',
\  ['around']
\)

call ddc#custom#patch_global('sourceOptions', {
\  '_': {
\    'ignoreCase': v:true,
\    'matchers': ['matcher_head'],
\    'sorters': ['sorter_rank'],
\  },
\  'around': {
\    'mark': 'A',
\  },
\})

call ddc#custom#patch_global('autoCompleteEvents', [
\  'InsertEnter', 'TextChangedI', 'TextChangedP',
\  'CmdlineEnter', 'CmdlineChanged',
\])
call ddc#custom#patch_global('completionMenu', 'pum.vim')

call ddc#enable()

let g:copilot_no_maps = v:true
let g:copilot_node_command = '~/.nodebrew/current/bin/node'
let g:copilot_hide_during_completion = 0
imap <script><silent><nowait><expr> <C-g> copilot#Accept()

Vimを実行する

.min.vimrc の作成が完了したら、Vimを実行して動作確認します。

# Vim
$ vim -N -u ~/temp/.min.vimrc

# Neovim
$ nvim -u ~/temp/.min.vimrc

Vimの -N オプションは set nocompatible と同義で、vi互換の動作を無効にします。

不具合が再現することを確認できたら、GitHubのIssueなどで報告します。

使ったファイルを削除する

後片付けとして、今回作成した設定ファイルとプラグインを削除します。
私は新規作成した ~/temp フォルダにすべて格納したので、フォルダを削除するのみです。

$ rm -rf ~/temp

おまけ:プラグインの不具合報告時に気をつけること

最小構成の .vimrc とは関係なく、プラグインの不具合報告時に気をつけることを紹介します。

私は こちらのIssue ですべて踏み抜いてしまいました。
迷惑を掛けてしまったので、本記事は自戒の念を込めて書いています。

最新のVimを使う

最新のVim(Neovim)を使うと不具合が解消されていることがあります。
プラグイン開発者は古いバージョンのサポートまで手が回らない可能性もあり、最新を使うのがマナーです。

HomebrewでNeovimをインストールしている場合、 brew upgrade nvim を実行します。

$ nvim --version
NVIM v0.6.1
...
$ brew upgrade nvim
...
$ nvim --version
NVIM v0.7.2
...

手順は誰でも再現できるように書く

手順は誰でも再現できるように書きます。
「これはわかるだろう」といって省略してはいけません。

例えば私は こちらのIssue で、手順を以下のように書きました。

  1. Enter insert mode and launch ddc.vim
  2. Enter two or more characters
  3. A pum.vim popup appears
  4. Completion in copilot.vim does not appear

しかしこれだけだと再現できません。
copilot.vimのREADME を見ると、他にも以下が必要です。

  • プラグインのダウンロード
  • Node.js 16のインストール
  • copilot.vimの初期設定

もっというとdenops.vimを使うために Deno が必要ですが、ddc.vimを使う上では当たり前過ぎるので、省略しても問題ないと思います。
(「省略してはいけません」と矛盾していますね…。できる限り省略しないほうがいいとは思います)

このように書き直すべきです。

1. Download plugins  
    ```shell
    $ mkdir ~/temp
    $ cd ~/temp
    $ git clone https://github.com/github/copilot.vim.git
    $ git clone https://github.com/vim-denops/denops.vim.git
    $ git clone https://github.com/Shougo/ddc.vim.git
    $ git clone https://github.com/Shougo/pum.vim.git
    $ git clone https://github.com/Shougo/ddc-around.git
    $ git clone https://github.com/Shougo/ddc-matcher_head.git
    $ git clone https://github.com/Shougo/ddc-sorter_rank.git
    ```
2. Install Node.js version 16  
    ```shell
    $ nodebrew install-binary v16.16.0
    ```
3. Start Neovim and invoke `:Copilot setup`
4. Enter insert mode
5. Enter two or more characters
6. A pum.vim popup appears
7. Completion in copilot.vim does not appear

ちなみに今回作成した最小構成の .vimrc で試したところ、pum.vimのポップアップが表示されていても、copilot.vimの補完が表示されました。
なので手順7は嘘になります。

やはり最小構成の .vimrc を作って試すのは大事です。

スクリーンショットは最小構成の.vimrcで試したものを貼る

当たり前ですが、スクリーンショットを貼る場合は最小構成の .vimrc で試したものを貼ってください。
他の設定で試したスクリーンショットを貼ると嘘になります。

おまけ:プラグインマネージャーが内部で何をしているか

最小構成の .vimrc を見ると予想できますが、プラグインマネージャーは内部で以下を行っていると推測できます。

  1. プラグインを git clone する
  2. runtimepath にプラグインのパスを追加する

これがわかると最小構成の .vimrc が作りやすくなります。

おまけ:NeovimはNVIM_APPNAMEを使うのがいい

Neovimは NVIM_APPNAME という環境変数が使えます。
既存の環境を汚さず、影響もされにくいため、使うのをオススメします。

使い方の詳細は以下の記事をご参照ください。

おわりに

最小構成の .vimrc を作成できました。
これでプラグインの不具合報告をする際に、開発者の負担を減らせます :relaxed:

参考リンク

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