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凝集度の観点から関数分割を考える(iOS)

Last updated at Posted at 2020-02-17

はじめに

2020/02/16(日)に「Object-Oriented Conference」というカンファレンスが行われました。
そこで聴講した「オブジェクト指向のその前に — 凝集度と結合度」というセッションに感銘を受け、自分でも凝集度についてまとめたいと思い、本記事を書きました。

私はiOSアプリエンジニアなのでiOS + Swiftの目線となっていますが、「凝集度」という概念はプログラミング言語に関係なく適用できます。

「凝集度」とは?

英語では「Cohesion」といいます。
日本語でも複数の呼び方があり、IPAでは「強度(Strength)」と呼んでいます。

あるコードがどれだけそのクラス(関数)の責任分担に集中しているかを示す度合いです。
凝集度が低いほど関連のない処理が混ざっていて、高いほど機能が絞られていて望ましいです。

凝集度が高いと何がいいか?

可読性が上がる

1つのことしか行っていない関数は、処理の目的が明確なので可読性が高いです。
関数は「一連の処理に名前を付けること」とも考えられるので、関数名が適切だとさらに読みやすいです。

再利用性が上がる

機能ごとに処理が分割されているので、再利用性が高いです。
凝集度が低い関数は様々な処理が混ざっているので、他で使い回しづらいです。

主な凝集の種類

主な凝集の種類を、凝集度の低順に紹介します。

偶発的凝集(最悪、凝集度が低い)

英語では「Coincidental Cohesion」といいます。
最も凝集度が低い凝集であり、関連のない複数の処理が1つの関数内に実装されている状態です。

func doCoincidentalCohesion() {
    // インジケータのアニメーションとラベルの生成処理は関連がない
    activityIndicatorView.startAnimating()

    nameLabel = UILabel()
    nameLabel.backgroundColor = .blue
    view.addSubView(nameLabel)
}

論理的凝集

英語では「Logical Cohesion」といいます。
論理的に似ている処理が1つの関数内に実装されている状態であり、引数などをフラグにして処理を分岐させているのが特徴です。

func createNameLabel(isBlue: Bool) {
    // ラベルの色を青にするかどうかを引数のフラグで判断している
    nameLabel = UILabel()
    if isBlue {
        nameLabel.backgroundColor = .blue
    } else {
        nameLabel.backgroundColor = .white
    }
    view.addSubView(nameLabel)
}

時間的凝集

英語では「Temporal Cohesion」といいます。
特定の時間に実行される処理が1つの関数内に実装されている状態です。

基本的には避けるべきですが、ビューのライフサイクルやメイン関数では避けられません。
iOSアプリ開発の場合、 viewDidLoad() などが当てはまります。

override func viewDidLoad() {
    super.viewDidLoad()

    // ラベルの生成中にインジケータを表示している
    activityIndicatorView.startAnimating()

    nameLabel = UILabel()
    nameLabel.backgroundColor = .blue
    view.addSubView(nameLabel)

    activityIndicatorView.stopAnimating()
}

機能的凝集(最良、凝集度が高い)

英語では「Functional Cohesion」といいます。
単一の処理が1つの関数内に実装されている状態です。
理想的であり、どの関数も基本的には機能的凝集を目指すべきです。

func createNameLabel() {
    // 「名前ラベルの生成」という機能のみ持っている
    nameLabel = UILabel()
    nameLabel.backgroundColor = .blue
    view.addSubView(nameLabel)
}

凝集度を高くするには

基本的には機能的凝集を目指すことで凝集度が高くなります。

偶発的凝集

それぞれが機能的凝集となるように関数を分割します。

ここでは「インジケータのアニメーション開始」と「名前ラベルの生成」という単一の機能を持った関数に分割しました。

after
// 機能的凝集の関数
func startIndicator() {
    activityIndicatorView.startAnimating()
}

// 機能的凝集の関数
func createNameLabel() {
    nameLabel = UILabel()
    nameLabel.backgroundColor = .blue
    view.addSubView(nameLabel)
}

論理的凝集

論理的凝集された関数の共通部分を関数に抜き出し、それを呼び出す複数の関数を実装します。

ここでは「名前ラベルの生成」を共通部分の関数として抜き出し、「青い名前ラベルの生成」と「白い名前ラベルの生成」の関数から呼び出しています。
分岐を減らせるので、テストコードが書きやすくなります。

after
func createBlueNameLabel() {
    createNameLabel()
    nameLabel.backgroundColor = .blue
}

func createWhiteNameLabel() {
    createNameLabel()
    nameLabel.backgroundColor = .white
}

private func createNameLabel() {
    nameLabel = UILabel()
    view.addSubView(nameLabel)
}

時間的凝集

先述した通り、ビューのライフサイクルなど時間的凝集を避けられないことがあります。
その場合、処理をベタ書きするのでなく、機能的凝集された関数を呼び出すのみにするのが望ましいです。

after
override func viewDidLoad() {
    super.viewDidLoad()

    startIndicator()
    createNameLabel()
    stopIndicator()
}

// 機能的凝集の関数
private func startIndicator() {
    activityIndicatorView.startAnimating()
}

// 機能的凝集の関数
private func stopIndicator() {
    activityIndicatorView.stopAnimating()
}

// 機能的凝集の関数
private func createNameLabel() {
    nameLabel = UILabel()
    nameLabel.backgroundColor = .blue
    view.addSubView(nameLabel)
}

おまけ:参考文献

冒頭で紹介したセッションのスピーカーさんに参考文献を教えていただきました。

各書籍のリンクを載せます。

おわりに

関数の切り出し方に悩む人は多いと思いますが、この記事が少しでも指標になると嬉しいです。

参考リンク

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