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ヒルベルト変換って引き算なんじゃね?~いい加減な裏口入門~

Last updated at Posted at 2019-05-15

(5/17追記 誤字というか、式の間違い指摘されたので修正)

この記事の対象者、書く理由

フーリエ変換や畳込みは分かるけどヒルベルト変換はよく知らない人が対象。
波形解析を使ってなにか作る時、フーリエ変換やwavelet変換以外の方法もあるんだって。
時に脳波解析なんかで使われることもあるから知識の整理目的にまとめておきます。

これは確実に数学の人に殺される記事です。鵜呑みにしないようにしましょう。

ヒルベルト変換とは何か

さて、一つの波があるとしましょう🌊ここで貴方が思い浮かべた波、実軸の波ですよね?
実軸があるなら虚軸が、sinがあるならcosが、織姫があるなら彦星があってほしい。

そんな貴方に朗報です!💪実軸のcos波に対する虚軸のsin波を出してくる。
ヒルベルト変換はそんな風な変換です!

結論を言いますと、計算の仕方はシンプル。単に波に双曲線($1/x$)を畳み込むだけです。

複素フーリエ級数とフーリエ逆変換の復習

波とは、時間軸と振幅の軸がある二次元のデータです。
とりあえず、フーリエ変換の式を書いてみましょう。
$f(t)$が元の波、$\hat{f}(w)$がフーリエ変換結果、tが時間、wが周波数として、
細かい所を省いてこんな感じです。

$$\hat{f}(w) = \int_{-\infty}^\infty f(t)e^{-iwt}dt$$

波というのは時間と振幅の二次元データですね。
それを$-\infty$ ~ $\infty$の周波数に変換しちゃうのがフーリエ変換でした。
こんな感じです。

振幅 * 時間 → 周波数 * 周波数ごとの複素数

そんで、フーリエ逆変換はこんな感じでした。

$$f(t) = \int_{-\infty}^\infty \hat{f}(w)e^{iwt}dw$$

周波数 * 周波数ごとの複素数 → 振幅 * 時間

さて、このフーリエ逆変換は複素フーリエ級数の書き方で書くとこう書けます。
$$f(t) = \sum_{n=-\infty}^{\infty}{C_n e^{iwt}}$$

これは、単に$\int$を$\Sigma$に、$\hat{f(w)}$を$C_n$にそれぞれの書き換えただけです。
つまり、各周波数nについて、$-\infty$ ~ $\infty$までを全部足し算するのがフーリエ逆変換です。
ちなみに、$C_n$は複素数です。

フーリエ逆変換はこの無限の$C_n$で出来た複素数の級数から実際の波を求める計算といえます。

フーリエ変換の負の位相の性質

さて、$\hat{f(w)}$の$w$は$-\infty$ ~ $\infty$の周波数(スカラー値)なのですが、
ここで複素数$\hat{f}(w)$と$\hat{f}(-w)$について
$$\hat{f}(w) = \overline{\hat{f}(-w)}$$
と、複素共役になるという事が知られています。
ぱっと言われて「ん?」となった人はフーリエ変換の導出を復習してみてください。

相方の波を求める

さて、$\hat{f}(w)$というのは複素数です。$a(\cos\theta + i\sin\theta)$という形をしています。
つまり、
$$\hat{f}(w)+\overline{\hat{f}(-w)} = a(\cos\theta + i\sin\theta) + a(cos\theta - isin\theta)$$
となりますね。だから
$$\hat{f}(w)+\overline{\hat{f}(-w)} = 2a\cos\theta$$
これは実軸のcos波です。フーリエ逆変換はこのように
共役な複素数を全部を足し合わせていく変換で、
正と負の周波数は複素共役の関係であったわけですから、
実数が出てくるのは感覚的には普通でしょう。

では、虚軸だとかsin波はどうでしょう?
こうすればいいだけです!
$$\hat{f}(w)-\overline{\hat{f}(-w)} = 2ai\sin\theta$$
相方が出てきました!
フーリエ逆変換を足し算とすれば、ヒルベルト変換は引き算なのかもしれない!

式の形にする

全ての正の周波数のフーリエ級数から、負の周波数のフーリエ級数を引き算することで
sin波が出るのですが、これをきちんと式で表してみましょう。sgn関数を使います。
sgn関数とはsgn(x)のxが正のときは1、負のときは-1を吐き出す関数で、sinに似てますが関係ないです。

$$sgn(w)\hat{f}(w)$$

という感じにすると、正の成分から負の成分を引いていったことになりますね。
では、こいつを元に、フーリエ逆変換の$\hat{f}(w)$を全部引き算にしてやりましょう。
ただ、これだけでは虚数になっちゃうので-iを掛け算してあげます。
ヒルベルト変換の結果…つまり、欲しかった虚軸の波を$H(t)$とすると
$$H(t) = \int_{-\infty}^{\infty} -isgn(w)\hat{f}(w)e^{iwt}dw$$
となります。やりました!ヒルベルト変換です!

さらに形を整える

上の式からフーリエ変換の成分を駆逐してやります。
sgn関数をフーリエ変換すると$-i\pi/t$になることが知られています。
(これを示すためにはデルタ関数のフーリエ変換について書くことになり、超絶めんどいので書きません)
では、加工するまえにフーリエ変換の畳み込みの復習をしていきましょう。

畳み込み定理

フーリエ変換やラプラス変換において以下のような公式があります。
Fをフーリエ変換やラプラス変換とすると以下が成立します。

$$F(a * b) = F(a)F(b)$$

a*bというのは畳み込みを表します。
掛け算したうえで積分するというやつですね。

これを使ってヒルベルト変換っぽく作ってみます。
ここで、畳み込みの公式を示しておきます。
$$F(a*b)=\int_{-\infty}^{\infty}a(x)b(t-x)dx$$

よく見るヒルベルト変換の式の導出

ヒルベルト変換をフーリエ変換してみます。
$$F(H(t)) = sgn(w)\hat{f}(w) =-isgn(w)F(f(t))$$
ここで、仮に-isgnのフーリエ逆変換の結果をGとします。
すると、$-isign = F(G)$となりますから、前の式が…
$$=F(G)F(f(t)) = F(Gf())$$
で、両辺のフーリエ変換を解除します。
$$H(t) = G
f(t)$$
理由を話し出すとちょっと終わらないので今回は言いませんが、
実はGは1/tであることが知られています。
(ググれば理由付きでちゃんと書いてある記事がいくらか見つかります)
$$H(t) = 1/t*f(t)$$
凄いですね!これやこの、ヒルベルト変換です!

ヒルベルト変換の応用

例えば$H(t)^2 + f(t)^2$である意味での波の大きさを表せたりします。
僕の知る範囲では脳波解析辺りに使われていますね。
一寸ニッチですが、ひょっとするとBMIか何かにも使えたりするのかも??

まとめと感想

僕みたいないい加減な人間に表現させると、
フーリエ逆変換を足し算とすると、ヒルベルト変換は引き算みたいなもの
…なんて数学の人に殺されるようなことを言っちゃうのですが、
要は数式もコードもとりあえず動きゃいいんd………?

……!窓に!窓に!

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