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はじめに

先日、Scrum Inc. Japan主催の
「認定スクラムマスター(Licensed Scrum Master)研修」
を受講し、無事に資格取得をすることができました。

本記事では受講に至るきっかけや、受講までの学習内容、研修自体の感想などを紹介させて頂こうと思います。
これからの受講を考えている方や、スクラムについて興味のある方への参考となれば幸いです。

研修を受けようと思ったきっかけ

これまで私自身きちんとしたスクラム開発を行った経験はなかったのですが、
今年に入ってから開発を進めていたサービス・チームでスクラム開発を実施したところ、
今までと違ったとても良い開発体験を得られました。
これがきっかけで

  • スクラムのことをもっと学び、現場での実践に活かしたい
  • 将来的には自分のチーム以外にもスクラムを広めていきたい

と思うようになりました。
また、私は現チームでは開発者として仕事をしており、スクラムマスターではないですが、
将来的に他にもスクラムを広げていくことを考えると、
スクラムマスターとしてロールチェンジ出来るように準備しておいた方が良いだろうとも考えました。
これらが今回の認定スクラムマスター研修を受講するきっかけとなりました。

受講までに学習した内容

概ね以下のことを行いました。

1. Scrum Guide 2020 を読んだ

Scrum Guideはスクラムの定義・理論が記載されている公式ガイドです。

こちらについては、もともと以前から何かあるたびに目を通していますが、
研修の事前案内メールにも「目を通しておくように」と案内がありました。
スクラムのルールブックなので、これは必須で読んでおくべきだと思います。

2. SCRUM BOOT CAMP THE BOOK を読んだ

スクラム自体の知見や経験がない状態でScrum Guideを読んでも、
いくつか内容について上手く頭に入ってこない場合があると思います。
それを補完するために「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】」

こちらを合わせて読んでおくことをお勧めします。
この書籍はあまりに有名なので私が改めて紹介しなくても、、とは思いますが書いておくと、
「実際の開発現場で初めてスクラム開発をやることになった」というシチュエーションで内容が展開・説明されていくため、
スクラムの知識や経験が少ない方でも理解しやすい内容となっています。

3. 約3か月のスクラム開発経験あり

これは学習というよりは実践寄りですが、きっかけの項でも少し記載したとおり、
スクラム開発を実際に3か月ほど経験していました。(1週間スプリントで)
また実際に今までいろんな現場でスクラムマスターをされてきた方にSMとして入って頂いていたこともあり、
その方から都度都度スクラムについて教えていただきながら進めていた、という有難い状態でした。
これは私が相当状況に恵まれていたので、誰でもすぐに出来るというものではないですが、
もし可能であれば実践をしていく中でスクラムについて学ぶのが一番勉強になるとは思います。

が、実際のスクラム経験がないと研修を受けるのは難しいとか、そういうわけではありません。
研修自体はスクラムを最初から体系立てて教えてもらえるような内容になっています。
ただし研修は2日間で内容が結構みっちり詰まっているので、出来るだけ素早く理解が追いつくように、
1と2までは事前にやっておくことを個人的にはほぼ必須レベルでお勧めします。

研修について

研修は講義とワークショップが織り交ぜられた形式で、
手を動かしながらスクラムについて学べる形となっておりました。
ワークショップについては研修の初めに参加者が数グループに分けられて、
このグループで2日間一緒に行っていく形式です。
また各グループにはそれぞれ担当のトレーナーの方がついてくれて、
質問できたり、ワークショップにおけるフィードバックなどがもらえたりします。

研修・ワークショップ自体の内容についてはネタバレになってしまうため、
細かい話は書けませんが、今回はそれ以外で私が感じた点などを書いていこうかと思います。

スクラム経験レベルはさまざま

グループ内の各参加者について、スクラムの経験歴はさまざまで
既に数年スクラム開発を行われている方もいれば、まだ全く経験がない方までおられました。
なので初心者の方でも不安になることは無いと思いますし、
逆にいろいろな方の話が聞けたりしますのでこれは良かったと思います。

Q&Aの時間・機会がとても良かった

また、講義やワークショップの間に休憩時間などがあるのですが、
スクラムを実践されている方は、その休憩時間でトレーナーさんに現場で起こっている困りごとなどを、
初心者の方も「今の現場はこういう形なんだけど、スクラムだとどうしたらいいですか?」といったように、
Q&Aのような会話をしたりしていました。(私もいくつか質問させていただきました)
様々な人が集まったからこそいろんなシチュエーションでの話を聞くことができたと思います。
講義とは別ですが、これはこれで大変貴重で勉強になりました。

また、休憩時間での直接の会話とは別にワークショップ用のシートに疑問や質問等を書くと、
トレーナーの方が回答してくれるものもあったので、何かある場合は遠慮なく聞くと良いと思います。
むしろ聞かないと損です(笑
冗談のように言いましたが、トレーナーの皆様は普段アジャイルコーチとしてお仕事をされている方々で、
そのような方からお話を聞ける機会は普段そう無いと思いますので、有効活用したほうが良いと思います。

グループにおけるSM/POは体験しておいたほうが良い

ワークショップについては前述したとおり、グループに分かれて行うのですが、
このグループを「スクラムチーム」として各取り組みを行うことになります。
なのでグループ内から

  • スクラムマスター(SM)
  • プロダクトオーナー(PO)

も決める形となっています。
SMは各ワークショップにおけるファシリテート、POは最終的な意思決定を行うなど、
実際のスクラムと同じようなロールとしてワークショップを進めることになります。
この役割ですが、可能であれば体験しておくことをお勧めします。

ここでSM/POとしてちゃんと出来なかったからといって、何か怒られたりすることはありませんし、
トレーナーの方も仰られていましたが、逆にこの研修で失敗しておいたほうが得です。
(実際の現場ではなかなかそうはいかないと思うので)
また各ワークショップの終わりや先ほど記載した休憩などの時間で適宜、SM/POとしてどうだったかなど、
トレーナーの方からアドバイスを頂けます。

私自身も研修2日目にSMをやらせていただきました。
SMをやったことはないものの、スクラム自体の経験はあるし、知識もあるし何とかなるだろう、
と思っていたのですが、想像以上に何ともなりませんでした。。(汗
このような感じでスクラムマスターが如何に大変か、また失敗したシチュエーションではどうすればよかったのか、
などの気付きとフィードバックを得る大変良い機会になりました。

このような機会は滅多にないので、SM/PO決めの際には遠慮せずにぜひ立候補してみると良いと思います。

試験について

2日間の研修を終えると、最後に試験への案内が行われます。
試験自体はオンラインで受講でき、全30問が回答選択形式で出題されます。
23/30の正答が合格ラインです。
受験自体は研修受講から1か月以内であればいつでも任意のタイミングで受けることが可能です。

もし不合格でも、1度であれば無料で再受験が可能とのことでした。
(それ以降に関してはサポートにお問い合わせください、ということで詳細は不明です)

試験自体は研修やScrum Guideの内容を理解できていれば難しいものではなかった印象です。
念のため、試験を受ける前に研修の内容やScrum Guideの復習をしておけば良いかと思います。

この試験を合格すると晴れてLSMの認定証が発行されます。

Q&Aで印象に残ったもの

ここではトレーナーの方とのQ&Aや、スクラムにまつわるお話を頂いた中で
印象に残ったものをいくつか記載しようと思います。
このような質問や話も出来るんだなぁ、といったところや、
実際にスクラムを導入しようとしている方、実践している方への参考にもなれば幸いです。

スクラムマスター/開発者 の兼任はアリか?

基本的には推奨されない(アンチパターンである)。
スポーツでいうと

  • スクラムマスター=審判
  • 開発者=プレーヤー
  • PO=相手プレーヤー

のような図式を思い浮かべてもらうと、
「審判」と「プレーヤー」を両方をやるということが如何に大変かイメージはつきやすいと思う。
(※ちなみに、決してPO vs 開発者のような敵対関係を言いたかったのではない。
POと開発者はお互い競い合って良いゲームメイクをする、
スクラムマスターは常に公平・公正な判断をする立場、というイメージ)

意図していなくても、(審判なのに)自チームに肩入れしたような判断をしてしまったり、
周りから「公正な判断をされているのか?」と思われてしまったりする危険性が常に伴う。
審判に対する信頼がなくなると、ゲームとして成立しなくなってしまう。

なので基本的にはスクラムマスターは専任で置くべき。

スクラムの活動のうちいくつかをピックアップして運用するのはアリか?

こちらも基本的には推奨されない。
スクラムではそれぞれの活動が相互にシナジー効果を持っている。
そのため、スクラムのうちのいずれかだけをやってみる、ということだと上手く効果が出ない可能性がある。

先の兼任の話もそうだが、スクラムを型どおりにやれるような状況にない場合、無理にスクラムを採用しなくても良い。
KANBAN方式を取り入れる、XPを採用する、など別のアジャイル手法での検討をしてみても良いと思う。

チーム編成が変わった際に過去のベロシティを参考にしてよいか?

シチュエーションとしてはメンバーの増員が行われた場合など。
何かに役立てたいという気持ちはわかるが、
何の参考にもならない(してはいけない)ので潔く捨てましょう。

組織としてスクラムマスターの評価制度が整えられているか?

スクラムを導入する際に、
今まで開発者だった方がロールチェンジしてスクラムマスター専任になる、
といったようなケースはよくある。
これは最初のうちは良いが、半年くらいたった時に「スクラムマスターやめます」となるケースが割とある。
理由は単純で「給料が上がらない(上がる気配がない)」から。
また、これの原因は組織として
「スクラムマスターとして評価される制度が整っていない」
から。
開発者に関してはよく「エンジニア -> テックリード」のようなキャリアパスと評価制度が準備されているが、
ことスクラムマスターになるとそれがないことが多い。
結果として評価と給与に反映されず、SMをやめる人が多くなる。
そのため、組織内でSMを立てる場合、その働きが評価されるようになっているかどうかも重要である。

おわりに

2日間の研修でしたが、本当にここではすべてを書ききれないくらい内容が詰まっていました。

試験にも無事に合格させていただき、認定スクラムマスターという資格を得ましたが、
資格取得は決してゴールではありません。
今回得た内容を自分の中で昇華させていき、実際の現場に反映させていくことが大事ですし、
また日々アジャイル・スクラムについて学び続けていくことが重要だと改めて感じました。
(特にスクラムマスターについてはスクラムチームを導くにあたり、スクラム自体についてだけでなく、
コーチングなどいろいろなことを身に着けておかなければならないと思います)

今回の研修はその気付き・きっかけとなったことや、
スクラムについての知識の再確認・実践での事例など得るものは本当に多かったので、
受講を検討されている方はぜひ受けてみて下さい!

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