先日開催されたGoogle Cloud Next 2018でもエッジコンピューティングへの取り組みが発表されていましたが、IoT・自動運転などの本格化がみえてきた中でいまあらためて注目が集まっているエッジコンピューティング。最近のオンラインメディアの記事の中から、エッジコンピューティングとは何か、Google Cloud Nextで発表されたエッジコンピューティング用の新しいチップ、そしてトヨタが取り組んでいる自動運転のためのエッジコンピューティング技術開発の内容についてから、エッジコンピューティングに付随したデータ解説であるエッジアナリティクスまでご紹介します。
※下記サイトからの転載。ビッグデータ・AIなどに関するトピックを毎週取り上げています。
TechCrowd: https://www.techcrowd.jp/related/
[エッジコンピューティングをめぐる最近の動向] (https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr348-20180329-sadaka.html)
情報通信の最新トレンドをわかりやすく解説するInfoComニューズレターの記事です。クラウドやIoTの普及といわゆる非構造化データの増大、5Gの導入によるモバイル高速化への期待、データ保護などに関する法規制の強化などを背景に、より効率的なデータ処理が求められていることから、最近、改めて「エッジコンピューティング」が注目を集めているという導入からはじまっています。
Gartnerによれば、全ての組織の88%が「クラウド・ファースト」の戦略を持つようにいたったとのこと。クラウドが高度な処理、コスト削減やアジリティ(敏捷性)、スケーラビリティなどに優れ、ビジネスの成長に寄与するとの期待が浸透し、生成されるデータのほとんどは、まずクラウドで処理することを検討される時代になったようです。
これらのクラウドのメリットを最大限に活かしつつ、通信遅延などのクラウド利用における課題を解消するには、一部のリソースをエッジに分散し、クラウドとの役割分担を図ることが有効になります。
エッジコンピューティングを活用した取り組みの事例として、まず紹介しているのは2017年7月、「エッジコンピューティングを通じたクラウドの再発明」として、ネットワークエッジにデータセンターを置くことを発表した米国AT&T。5G・SDNにより、「1桁ミリ秒」遅延での通信を実現することを目指すとのこと。
AWS(Amazon Web Services)も、2017年12月にエッジコンピューティングに関連する新たなIoTサービスを発表。ただし、同社はエッジ部分にはリソースを持たないことから、あくまでもオンサイトにあるデバイスでAWSの機能が利用でき、ネットワークに接続されていない時でも稼働が可能になる環境を提供するというアプローチです。
CDN(Content Delivery Network)で知られるAkamaiは、以前から配信に必要となるキャッシュサーバー(エッジサーバー)を世界各地に展開しており、ある意味商用エッジコンピューティングサービスの先駆けとも言える存在です。同社は「Akamai OTA Updates」として、同社の「Intelligent Platform」から、自動車向けの最新のファームウェアやナビゲーションシステムのアップデートを、無線経由で、高速かつ高スループットでプッシュ配信するサービスを提供しています。
これらのエッジコンピューティングのサービスが普及していけば、交通カメラで機械学習を実行し、交差点を通過する自転車、自動車、歩行者をカウントし、交通の流れを最適化して安全を確保できる信号機のタイミングを割り出すサービスや、小売店で優良顧客の顔を認識して挨拶したり、特別の割引を提供したりするサービスが実現できることを期待されています。
[エッジコンピューティングの流れ変える--グーグル、エッジ向け機械学習チップ発表] (https://japan.zdnet.com/article/35123180/)
ZDnet JapanによるGoogle Cloud Next 2018におけるエッジコンピューティング向け新チップの発表を取り上げた記事です。Googleはエッジコンピューティングの流れを変えるゲームチェンジャーとの発表だったようです。
エッジコンピューティングの取り組みは、2018年に発表したIoTサービス「Cloud IoT Core」を補完するものとなります。Cloud IoT Coreは、Google Cloud上で数百万にのぼるデバイスの接続と管理を支援するフルマネージドサービス。
GoogleがIoTサービス補完するものとして開発したのが「Edge TPU」。Googleは2016年に機械学習に特化した専用チップ「Tensor Processing Unit(TPU)」を発表しており、2018年5月には第3世代チップを披露しているが、Edge TPUは、これをエッジデバイス向けに小型化したもの。機械学習フレームワーク「TensorFlow」を組込機器やモバイル向けに軽量化した「TensorFlow Lite」を使って機械学習の推論モデルを動かすことができるようです。
Edge TPUは毎秒30フレームの高解像度動画に対して機械学習モデルを実行できるので例えば、高速道路などに設置されたライブカメラに組み込むことで、交通状況をリアルタイムに分析することも可能となります。
GoogleはEdge TPU用の開発キットも10月に発売する。NXP Semiconductorsと共同開発したもので、CPU、メモリ、Wi-Fi、セキュアエレメントを搭載する。ARM、Hitachi Vantara、Nokia、ADLINKといった企業とも提携し、Edge TPUのエコシステムを構築していくとのことです。
エッジデバイス向けのソフトウェア「Cloud IoT Edge」も発表されました。IoT用OS「Android Things」とLinuxに対応。ゲートウェイ機能を担う「Edge IoT Core」と、エッジデバイス上で機械学習モデルを実行する「Edge ML」で構成されます。Cloud IoT Edgeは現在、アルファ版として公開されています。
[トヨタが考える「エッジコンピューティング×つながるクルマ」の具体策] (https://businessnetwork.jp/tabid/65/artid/6249/page/2/Default.aspx)
「通信」の力でビジネスを進化させるbusiness network.jpの記事です。8月2日・3日に都内で開催されたイベント「OpenStack Days Tokyo 2018」の初日の基調講演で、トヨタIT開発センター システムアーキテクチャ研究部ネットワークグループ グループリーダー / プリンシパル・アーキテクトの大西亮吉氏が「Automotive Edge Computing – ユースケースと要件」と題して、コネクテッドカー向けのエッジコンピューティングについての講演をレボートしてくれています。
大西氏によれば、コネクテッドカーのサービスは大きく3つに分類できる。クルマの走る・止まる・曲がるに直接関わる「ITS」、ナビゲーションやエンターテイメントなどの「テレマティクス」、クルマから集めた情報を分析して活用する「ビッグデータ」の3つとのこと。
エッジコンピューティングは、その中のビックデータに関わり、ビッグデータにおけるシステムのキャパシティ制約を解消するものとして重要な存在となります。2025年頃、つながるクルマの台数は、全世界で1億台、これらのコネクテッドカーがクラウドに送ってくるデータ量は1~10EB/月。1EBは10億GB。1台のコネクテッドカーが月に約10GBをクラウドにあげることが想定されているところからの数字ですべてをクラウドにあげようとすると単純に記録することもできなくなることは予想されています。
コネクテッドかーのビッグテータの特徴はアップリンクのほうが多くデータ容量も多いことと、遅延は結構許容できること。そのため「必要なデータのみ集める」こと、「エッジサーバでデータを処理すること」、そして「空いている時に通信する」ことがポイントのようです。
[データ解析、もうやり尽くしたと思うのはまだ早い] (https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/6264/Default.aspx)
business network.jpがSAS Institute Japanの辻仁史氏(ソリューション統轄本部 プラットフォームソリューション統括部兼西日本カスタマーソリューショングループ部長)に取材したレポート記事です。
工程の切れ目や加工する製品の性質に応じて、現場のPLC側で自律的に、またリアルタイムに変更や調整を行うことができれば、もっと品質を高め、効率的に生産ができるのではないかーーそれを可能にするのが、リアルタイムなエッジアナリティクスとのことです。エッジコンピューティングの環境がリッチになったことによりできるようになり、一方でエッジ側でつながる機器が増え続けていることにより求められている分野です。
9月7日に開催される「スマートファクトリーセミナー 2018」のセッションでは、実際にエッジアナリティクスを活用して工程能力指数を13%向上させるという実績を上げた国内製造業の事例とともに、その効果が紹介される予定とのことです。