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ゲームの世界で学んだ「楽しむ技術」で組織の風通しを良くしていった話

Last updated at Posted at 2021-12-15

これは何?

エンジニア、ゲームのトッププレイヤーを経て、社内で風通しお兄さんと呼ばれるようになった経緯について、思考整理がてら書いてみました。

以下に当てはまる方に役立つ記事を目指しています。

  • エンジニアから人事というキャリアに興味のある方
  • 社内の風通しを良くしたいという方

上記に当てはまらない方も、コーヒー片手にゆるゆると読んで頂ければ幸いです:coffee:

自己紹介

入社後10年近く人事業務アプリ開発に携わってきましたが、現在はエンジニア組織のHRBPをやっています。プライベートでは小1と3歳の娘に𠮟咤激励されながら日々楽しく過ごしています。Twitterプロフのヘッダー画像がお気に入りです。

エンジニアとしての行き詰まり

エンジニアを7年くらい続けたある日、ふと気づきました。なぜ私は開発をやっているのだろう。未経験でエンジニア組織に配属され、目の前の課題解決を積み上げて何とかやってきた。開発を通じて成長した実感はある。けれど、正直に言えば技術を学ぶことにしんどさを感じたり、エンジニア向いてないんじゃないかなあと思っていたのも事実。そんな中で新製品を一刻も早く世に出さないといけないプレッシャーもあり、今思えばバーンアウトしそうになっていたのではないかと思います。

とあるゲームにハマる

ちょうどその頃、学生時代にハマっていたゲームがスマホ版で復刻されるという話を聞き、息抜きがてら手を出したのが運の尽き。10年近くゲームから離れていたのですが、すぐに当時の感覚を思い出し、沼にハマっていきました。

そのゲームでは年に一度、全ユーザーのNo.1を決める全国大会が開催され、そこで私は優勝しました。ゲームで強くなる秘訣は趣旨から外れるためここでは書きませんが、何事においても頂点を獲るには狂気性が必要という点だけ記しておきます。

コミュニティ活動を経てYoutuberに

それまでSNSをほとんどしてこなかった私ですが、有志のトッププレイヤーが協力してゲーム攻略を進めていく様子に魅力を感じ、気づけばTwitterで様々な人と繋がっていきました。プレイヤー間での非公式大会も盛んに行われており、数百人規模のチーム戦で代表を務めたこともあります。誰かが面白そうなことをやり始め、そこに興味関心が集まってエネルギーが生まれていくのを見るのは新鮮な体験でした。

一方でプレイヤーとして頂点を極めたこともあり、ゲームへのモチベーションを保つのは徐々に難しくなっていきました。そこで一念発起し、動画配信に挑戦することにしました。ゲームの面白さを伝えることを目的に、ゲーム攻略だけでなく、大会の解説動画や有名プレイヤーを呼んだラジオ形式の番組など様々な企画を実行してきました。

動画収録や編集はゼロからのスタートでしたが、自身で調べたり先輩Youtuberに相談したりしながら、カット、テロップ入れ、サムネイル作成など、徐々に技術を身につけていきました。結果的に、そのゲームにおいては元々ネームバリューがあったこともあり、数千人に登録頂くまでにチャンネルを育てることができました。

余談ですが、ラジオ番組については梅原大吾さんのウメハラジオに影響を受けました。めちゃくちゃ面白いのでおススメです。

運営会社に声をかけられ、さらに活動の幅を広げる

ある日、ゲームの運営会社から「公式大会の解説者をやってもらえないか」と声をかけられました。私の動画を見て、ゲームを盛り上げる手法を取り入れたいということでした。こんなこともあるんだなーと驚きつつ、私がやりたかったことを運営会社にも認められた気がして嬉しかったことを覚えています。

公式大会の解説においては、上位戦になるほどヘビーユーザー中心となるため、ライトユーザーには何が起こっているのか分からないという課題がありました。そのため用語の解説や感想戦の要素を取り入れつつ、誰が見ても分かりやすい解説となるよう試行錯誤してきました。また、私以外のプレイヤーが解説者に回ることができるようなフレームを運営会社に提案したりもしました。ユーザーと運営を繋ぐことで、ゲーム全体の熱量を緩やかに高められると考えたためです。現在では多くのプレイヤーが解説者として出演するようになり、解説にも様々な視点があるのが面白いという空気が醸成されています。

ある日、事件が起きた

そんなこんなで楽しい時間を過ごしていたのですが、現実世界では自身のキャリアに悶々とする日々が続いていました。ちょうどその頃、会社の意向でエンジニア採用に力を入れたいという話がありました。私は新たな道を探るべく、手を挙げて開発組織と人事を兼務するようになりました。

ある日、採用広報でデブサミ2020夏登壇のサポートをした帰り道。登壇者であるSRE部門の新村さんと飲みに行く機会がありました。ほぼ初対面でしたがすぐに意気投合し、プライベートの話に。新村さんがゲーム好きなんだよねーと話してくれたので、私もここまでに述べたゲームの話をしました。新村さんはとても真剣に話を聞いてくれて、ほんと凄いなと真顔で答えました。そして、次の一言を放ったのです。

「今まで話してくれたこと、会社の中でもやればいいじゃん」

正直、何を言ってるんだろうというのが最初の感想でした。会社の中でそんなことをできるわけがない。私は心のどこかでそう決めつけていたと思います。しかし、ここまで真剣にゲームの話を聞いてくれる人はそれまでいなかったこともあり、ちょっと真面目に考えてみることにしました。

私がゲームの世界で得た成功体験を改めて整理すると、共通項として楽しさを生み出すための技術という点が浮かび上がってきました。具体的には以下のような点が挙げられます。

  • 誰かが面白そうなことをやり始め、そこに興味関心が集まることで小さな渦が生まれる。その渦を大きくすることで、楽しさは増幅していく。
  • 特定の個人だけを主役にするのではなく、多くの人が主役になれる仕掛けを作ることで、コミュニティにおける楽しさのキャパシティが広がる。
  • 出来上がったものを渡されるよりも、未完成の段階から参加し、作り上げていくプロセスにこそ楽しさは宿る。

明確に言語化できていたわけではありませんが、上記のようなことを意識することで、仕事の仕方が少しずつ変わっていった気がします。そして、半分人事、半分エンジニアの立場を利用して色々な施策を実行してきました。その中で、2つの取り組みを紹介したいと思います。

エンジニアのためのテックブログコミュニティ活動

弊社では、2020年4月にテックブログコミュニティが立ち上がりました。その後1年半近く運営されており、2021年12月現在でQiita Organizationのメンバーは約80名、総LGTM数は26,000超にまで育ってきています。

コミュニティを育てる上では、テックブログは続かない - 何サイトか潰した後にブログが有名な企業に転職しての気づきと反省にもある通り、会社として投資と位置づけることが重要と考えています。

まずは社内ブログ・テックブログにかかる工数を見積もり、投資として位置づけるべきです。まとまった工数がなければ続きません。これは手弁当ではなく業務にするべきです。

弊社では、業務時間内にテックブログを執筆することを会社として推奨しており、業務工数として「テックブログ執筆」というマスタを用意しています。

もう1点、コミュニティがうまく育ってきた背景として、コミュニティの存在理由を採用広報のためではなく、在籍するエンジニアのためのものと位置づけている点にあります。

こちらが弊社のテックブログコミュニティのコンセプトです。
techblog_motto.png
めちゃくちゃ良くないですか?:yum:(自画自賛)

もちろんコンセプトだけでは絵に描いた餅に過ぎません。1年半以上テックブログ運営を続けてきた中で、すべての企画がエンジニアがテックブログを書く体験を高められるかという視点で考えられ、実行されてきました。Best Qiita賞はその好例です。

さらに重要なのは、こうした活動をエンジニアに閉じるのではなく、全社発信している点にあります。今年10月に開催された全社集会では、各部門からチームワーク向上のための取り組みが紹介され、開発部門からはテックブログ運営チームが選出されました。私もエンジニアと共に、運営の苦労や功績を発表してきました。

こうした活動により非エンジニア職の方にもコミュニティの功績を知ってもらうことで、今後もテックブログ活動に投資してもらえる可能性が高まり、会社として活動に価値を置くことに繋がると考えています。

エンジニア向け外部講師セッションの企画運営

年に数回、人事主導で外部講師を招き、学びの機会を提供する企画がありました。その中で、エンジニア向けにどういったセッションをすれば良いか分からないという課題感がありました。そこで開発経験のある私に白羽の矢が立ったわけですが、私自身もどんな方を呼ぶべきか正直分からない。。

加えて、私は人事が講師を決めるプロセスにも疑問を持っていました。セッションのコンセプトは社員が主体的に学びを得ることとなっており、参加も挙手制でした。ならば、講師を決めるプロセスそのものを現場に移譲できないかと考えたのです。

実際の講師選定においては、Slack上で私がエンジニアたちに呼びかけを行い、候補者をリストアップしました。
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Slack上の非公式なやりとりだけだと情報が行き渡らない可能性もあるため、レポートライン上でも同様の依頼を行いました。結果、外部講師候補リストが数日にして出来上がっただけでなく、取り組みそのものが話題となり、企画段階からエンジニアの興味関心を集めることができました。
若手講師セッション.png

最終的に、現場エンジニアから多くの票を集めたt_wadaさん:lion_face:に社内講演を依頼し、実施に漕ぎ着けることができました。
スクリーンショット (263).png
当日はエンジニア、非エンジニア問わず300人近くの来場者で盛大に盛り上がると共に、講演のテーマである質とスピード※について今後の組織目標にも組み込んでいこうという動きが生まれました。来年以降に向けて楽しみな状況になっています。

※リンク先は2020秋100分拡大版です

風通しお兄さん

こうした活動を経て、いつしか社内では風通しお兄さんと呼ばれるようになりました。最近はエンジニアだけでなく営業やコンサルタントからも声を掛けられる機会が増えてきつつあります。社内事例やそこで得た学びを生かすことで、私たちの顧客である大企業の人事の方々にも貢献できる形を探っていきたいと考えています。

おわりに

いかがでしたか?ゲームの世界で体験したことが仕事で生きることになるとは、人生何が役立つか分からないものです。今後も自ら風通しを良くしていくことで、より多くのエンジニアがたのしく開発できる組織を作っていきたいと思います。

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