はじめに
こんにちは。人事部で人材開発、組織開発をやっているうえむらです。
半年ほど前から社内で書籍購入支援制度を始めました。本記事では制度設計・運用設計時に考えていたことや、その中で自動化に取り組んだ話を書いていきたいと思います。
本記事の主な想定読者
- 書籍購入支援、書籍購入補助制度の導入に興味のある方
- 就職活動、転職活動中の方(WHIを知ってもらうきっかけのひとつになれば幸いです)
- WHI社員のみんな
どんな制度?
書籍を通じて自発的に学ぶことを推奨し、学びに必要な費用を会社負担とする制度です。社内公開している制度概要には以下のように記載しています。(※2022年11月現在の対象期間は2022年7月~2022年12月)
・対象期間における書籍購入費用を社員毎に10,000円(税込)まで会社負担とする。
・社員は書籍購入支援申請時に書評を提出し、本人同意の上でSlack等に書評を蓄積する。
その書評を他の社員が参考にすることで、学びの文化の醸成に繋げる。
制度設計時に心がけたこと
制度設計にあたっては社員から見た使いやすさと管理運用のしやすさを両立することを心がけました。やらないことを決めることでシンプルな制度を目指すイメージです。例として以下のような点が挙げられます。
蔵書管理をしない
購入した書籍の所有者は申請者本人とし、購入後に会社に蔵書、返却する必要はないと決めました。理由は以下の通りです。
- リモートワーク中心であるため出社してまで本を借りようと思う人は少なそう
- 電子書籍については社内共有が規約違反になるサービスも多い
- 技術書など、何度も読み返しながら学びたいというニーズはありそう
上司承認をしない
経費精算フロー上、上司による一次承認は行わず、人事部、経理部で承認することにしました。理由は以下の通りです。
- 上司の仕事を増やしたくない
- 上司に見られていると思うことが書籍購入のハードルになるかもしれない
対象外の書籍を細かく定義しない
小説、コミックのみを補助対象外とし、それ以外の書籍については原則対象としています。理由は以下の通りです。
- そもそも制度にそぐわない書籍を申請してくる社員はほぼいない
- ルールを細かく決めても運用できないと意味がない
これだけだとゆるい制度に見られてしまうかもしれませんが、方針については明確に定めています。
社員一人ひとりがWHI Valueの体現者として自律的にキャリア形成に取り組み、
自発的に専門能力を高めるにあたって、
書籍を通じて専門知識を習得する機会を提供することを目的として書籍購入支援制度を導入する。
お堅い表現にはなっていますが、この方針に沿って考えてね、その上で制度をどう活用するかは自由に決めてねというスタンスを取ることで、目的をぶらさないこと、活用の幅を狭めないことを両立することを心がけました。
運用設計時に心がけたこと
後工程を考慮すること、未来の自分たちを楽にすることの2点を心がけました。
書籍購入支援制度は人事部が主導する制度ではありますが、裏側で経費精算担当との連携が必要になります。すべてのチェックを経費精算担当に委ねてしまうと彼らの手間を増やすことになるため、書籍購入特有のルールについては人事部でチェックした上で、経費精算担当は通常の経費精算ルールのチェックに専念できるように役割を分けました。
また一次承認時のチェックについては自動化しておくことで必要最小限の工数で制度を運用できるようにしました。申請一件あたりの対応工数は小さなものではありますが、今後も継続運用することを踏まえると効果が見込めると考えてのことです。また自分の工夫で未来の自分たちを楽にできることを想像するとモチベーションが湧いてくる実感もありました。
いざ実装
全体像
経費精算のワークフローについては元々自社製品を使って構築されていました。そこに追加する形でSlackとGASを使って書籍購入支援制度に必要な管理・運用機能を実装しました。スプレッドシートに必要な情報が集約されるようにしておき、申請時チェックや問い合わせ対応などの業務を自動化していきました。
余談ですが、問い合わせBotは「エル」という人材開発部のマスコットキャラクターが務めています。( 未だに社員にも知らざる存在。。 →案外知られているかも?)
書評提出・管理の自動化
Google Formで書評を書いて提出します。書評の項目については添付画像の通りです。書評を共有可とした場合、フォーム提出時にSlack上のチャンネルに自動投稿する処理をGASで自動化しています。
またSlackチャンネルでは提出された書評が共有されるだけでなく、リアク字チャンネラーを通じて他のチャンネルで話題になった書籍に関する情報が日々集まってくるようになっています。
チャンネルへの参加者は350名超となっており、次の一冊を探すためのアンテナを立てるのに役立てる人がいたり、チャンネルへの投稿が別の投稿に繋がることでゆるやかな社内交流が生まれています。
経費精算まわりの自動化
経費精算については自社製品を使って申請、承認ワークフローが構築されています。そのため書籍購入支援特有のルールをチェックリスト化し、一次承認時に確認することにしました。
主なチェック観点としては以下3点が挙げられます。(他にもいくつかのチェック項目がありますが、ここでは割愛します)
- 申請期限を超過していないか(購入日からnヵ月以内というルールを設けています)
- 利用期間内の合計申請額が上限を超過していないか
- 申請された書籍分の書評が提出されているか
期限については申請情報のみで判断できそうですが、合計申請額については過去申請を含めた管理が必要です。また書評についてはGoogle Formで収集しているため、回答をスプレッドシートで集計したものを参照して提出有無を確認する必要があります。
これらを毎度手動/目視で行うのは手間がかかりますし、単純作業によるモチベーション低下がミスに繋がることもあります。そこで GASのみで完結するWebアプリケーション を実装し、申請内容の確認から申請情報の管理までを効率化しました。(GASでUIを含めてWebアプリを作れることはこの時初めて知りました。)
こちらは申請情報の一覧画面です。簡易的な全文検索や未承認フィルタに対応しています。また承認時に必要な情報(合計金額や提出済みの書評)をひとめで見ることができます。
他には申請内容をチェック・管理する画面を実装しました。
経費精算画面から管理項目を自動抽出し、チェックを行います。この機能により申請情報が誤っている場合にもすぐに気づくことができるようになりました。
問い合わせ対応の自動化
運用者は基本的には自分ひとりとなるため、問い合わせの対応工数はなるべく削減しておきたいところです。そもそも制度をシンプルにしているので問い合わせはそれほど来ないような気もしつつ、自分が利用者なら気になると思った以下3点については自動化しておくことにしました。
- 申請金額の残高
- 過去に申請した書籍一覧
- 制度についてのリファレンスのありか
Slackワークフローから投げられたリクエストをGASで受け取り、管理台帳を参照した上で必要な情報を返すように実装しました。残高や書籍一覧は個人情報にあたるため、レスポンスはSlackBotから個別に返すようにしています。
実際に私が申請した書籍たち(承認はチームメンバーにお願いしています)
実際に運用してみて
この記事を書いている11月末時点で約380冊の申請がありました。
社内のSlackでは制度についての感想が日々寄せられています。
嬉しい限りですね。
また、制度を改善するアイデアについても多数寄せられています。
こういった声は制度を少しずつ改善していく上でとてもありがたいことです。
(裏でこっそりissue listに溜めていってます。今後のアップデートにご期待ください。)
申請期間が後半になるにつれ、上限額を超える申請や期日を超過しての申請もちらほらと出てきていますが、自動化したおかげで最小限の工数でミスなく運用できています。また制度の不明点についての問い合わせもほとんど発生しておらず、運用については今のところ狙い通りと言えそうです。
一方で制度の認知や利用促進についてはまだまだ伸びしろがある状況です。来期以降は半期で500冊、1000冊といった目標を立て、自動化で浮いた工数を積極的に投入していきたいと思います。社員が購入した書籍情報や書評については管理するだけでなく、みんなが見て楽しめるような仕掛けを模索していきます。
制度運用1周目を終えての感想(2022/12/26追記)
最終的な制度実績として半年間で利用者数約500名、利用冊数1600冊超。締切当日は500冊超の申請が殺到したため心を無にして承認作業に明け暮れていました。自動化してなかったら確実に死んでたな…と改めて斧を研ぐことの価値を噛み締めまくる結果となりました。
制度利用が爆増した背景として、単純に締切前の駆け込みという点が大きいのはもちろん、12月初頭に社内報で制度利用促進のための記事をリリースした効果も大きかったのでは?と考えています。
社内広報チームと連携し、制度を活用してくれている層から情報を集め、その情報をまだ制度利用していない層に届ける形で記事作成しました。具体的には制度利用時に迷いがちな書籍の選び方について利用状況からランキングを見える化したり、時間確保の方法について積極的な利用層へのインタビュー結果を掲載。結果として社内報の月間アクセスランキングでも1位となり、全社施策×社内広報の相性の良さを実感することになりました。(社内広報チームのライティング力がすごいことも大きいです!)
おわりに
いかがでしたか?書籍購入支援制度によって社員のみんなが学びを楽しんでいる姿を見て、制度を導入して良かったと実感しています。制度運用についても、社員の声を聞きながら地道に改善を重ねていきたいと思います。
(余談1) 今年からUdemy BusinessやGLOBIS学び放題といったE-learningサービスについても使い放題としています。業務に必要なスキルを効率良く身につけるだけでなく、自分の伸ばしたいスキルを好きなときに学ぶことができる環境を今後も整えていきます!
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