アカウンティング・サース・ジャパンは、クラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」というプロダクトを開発している会社。
いわゆるB to Bサービス。
会計事務所や、中小企業で使われることを想定したプロダクト開発を行っている。
いま、プロダクトの品質を飛躍的に改善させるために、ユーザー・全社を巻き込んだ開発プロセスづくりに取り組んでいるので、どんなことをしているか書く。
目的は、ユーザーとの関係強化、社内の協力体制構築、そして良いプロダクトを作ること。
ユーザーとのコミュニケーション
B to Bサービスをやっているので、ユーザーとのコミュニケーションは主に営業とサポートが担当している。
ユーザーからのご意見・ご要望はVoC(Voice of Customer)と呼ばれ、すべてRedmineにチケット化されて、社内に共有されている。
これは会社設立当初からやっていて、すでに何万件ものユーザーの声が記録されている、大切な資産。
だが、それだけではなく、開発部門の人もガンガンユーザーに会って話を聞ける環境を作ろうとしている。
月次でユーザーを招いてグループインタビューをする。
こちらから押しかけて話を聞く。
ここまでは、以前からやっていた。
それをさらに進化させ、「A-SaaSサポータークラブ」というユーザーコミュニティを作った。
30人程度のユーザーに参加してもらい、いつでも話を聞ける環境を作ろうとしている。
チケットを通じたバーチャルなコミュニケーションだけでは分からない、深い話が聞けるメリットがある。
B to Cだと、ユーザーコミュニティを作る動きは一般的だと思うが、B to Bだと珍しいかもしれない。
社内のコミュニケーション
全社員参加型のミーティング、その場限りのアドホックなミーティング、チャット上でのやり取りなど、毎日何かしら社内のコミュニケーションは発生している。
ただ、エンジニアが他部門の人とコミュニケーションする数はやや少なめで、どちらかというと部門内で話を済ませてしまっている。
ここは今後の課題。
会社負担でランチに行ける制度を作り、エンジニアと営業・サポートが一緒にランチに行くような取り組みをしている。
コミュニケーション・ツール
全社公式のコミュニケーション・ツールはチャットワーク。
エンジニアはGitterも使っている。
ユーザーから受けた問い合わせのうち、エンジニアの対応が必要なものは、サポート部門がすぐにRedmineにチケットを切る。
優先度の高いチケットが切られると、自動的にチャットにも連携され、タイムリーに情報がシェアされるので、それを見てエンジニアが対応方針を決めている。
本題には関係ないが、最近、チャットワーク上に社員が仕込んだ謎のbotも登場してきており、疲れた時に話しかけて遊んでいる人もいる。これはこれで楽しい。
開発プロセス
開発部門とユーザー・全社とのコミュニケーションは、なかなか活性化しづらい。
なので、開発プロセスを見直して、開発のフェーズごとに、相互のコミュニケーションが強制的に発生するイベントを設定してみた。
不具合修正や小さな機能追加ではここまでやらないけど、大きめの開発をやるときは必ずこのプロセスを回すようにしている。
企画フェーズ
- ユーザーヒアリング
- サポート部門のメンバーアサイン
- 企画書レビュー
- 仕様書レビュー
開発フェーズ
- ユーザーヒアリング(開発環境を使って)
- サポート部門へのヒアリング
- リリース前の社内デモンストレーション
運用フェーズ
- 開発の種となるVoC(ご意見・ご要望)をくれたユーザーへのお礼連絡
- 新機能のプロモーションを兼ねたユーザーへの連絡
- ユーザーアンケート
開発プロセスを進めていくなかで、いろいろな変更・判断・妥協が入るので、タイムリーにユーザー・社内に情報共有して、理解を得ておくことが大事かなと。
最後に
理想的には、エンジニア一人ひとりがユーザーと同じ視点でプロダクトを見れる・評価できるようになるといいんだけど、そこに至るにはもっともっとユーザーとコミュニケーションして、ユーザーのことを学ばないといけないと感じている。
特にうちのように、業務システムを作っている会社では、お客様の業務に精通しておくことは必須。
マーケティング調査だけを行っていても、良いプロダクトは作れない。
もし皆さんの会社で「うちはこうしてる」みたいなのがあれば、ぜひ教えてください。