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ラッパークラス開発で学ぶ実践C++14 ~JNI~

Last updated at Posted at 2018-01-21

Android JNI の学習と、C++11/14 1の学習を兼ねて、また、github に好みのもの2がなかったということもあって、(いまさら) JNI ラッパーを自作した。

これを題材にしてC++の実践方法を記事にしようと思ったが、前座のつもりで書いたライブラリ紹介が思いの外長かったため、実践の話は別の機会に預け、今回は紹介のみとした。

概要

uc-jni.hppヘッダファイル一つコンパイル不要。インクルードするだけで即座に使える。
ユーティリティ関数もあるが、コードの大部分を型の定義と解決に費やしている。

元のJNI関数を使う場合と比べて、余計な実行時コストがなく、簡潔、型安全でリークしにくいコードが書ける(はずだ)。

メソッドやフィールドへのアクセス

スタティックメソッド呼び出し

JNIでまず鬱陶しいのが、タイプシグネチャ型ごと定義された関数群だ。

uc-jni.hpp を使うとスタティックメソッドの呼び出しは以下のように書ける。

// java.lang.System クラスを、C++コード上では System という型で定義する。
DEFINE_JCLASS_ALIAS(System, java/lang/System);


// void System.gc() メソッドを取得する。
auto gc = uc::jni::make_static_method<System, void()>("gc");


// System.gc() を実行する。
gc();

タイプシグネチャは必要ないし、関数の呼び分けも考えなくていい。
それを解決するために必要な情報は、コードの上2行ですべて得ることができる。
そして、これらはすべてコンパイル時に解決されるため、実行時に余計な処理が増えることもない

また、gc()void() 型で定義されるため、引数や戻り値に値を指定すればコンパイルエラーとなる。

// コンパイルエラー
gc(10);

// コンパイルエラー
int x = gc();

これだけ情報を詰め込んでも余計なリソースは一切消費しない。sizeof(gc) == sizeof(jmethodID) である。

インスタンスメソッド呼び出し

インスタンスメソッドの場合は、以下のように対象インスタンスを第1引数に渡す必要がある

// String Object.toString() メソッドを取得する。
auto toString = uc::jni::make_method<jobject, jstring()>("toString");

// String jstr = obj.toString();
auto jstr = toString(obj);

jstr の型は local_ref<jstring> というもので、これは std::unique_ptr<jstring,> の別名だ。
スコープが切れた時点で DeleteLocalRef() が自動的に呼び出される。

もし、戻り値の jstring を操作するのが面倒なら、代わりに std::string を返すようにすることもできる。

                                              //  ↓ 関数の型を std::string() とする。
auto toString = uc::jni::make_method<jobject, std::string()>("toString"); 

これは、呼び出しごとにstd::string変換処理が入る
そのコストが気になるようならjstring()型を選択すればよい。

同様に jbooleanboolに変換することもできる。

コンストラクタ呼び出し・フィールドへのアクセス

メソッドと同様のため、サンプルコードのみ紹介しておく。

// android.graphics.Point クラスのエイリアス定義
DEFINE_JCLASS_ALIAS(Point, android/graphics/Point);

// コンストラクタ Point(int x, int y) を取得する。
auto newPoint = uc::jni::make_constructor<Point(int,int)>();

// フィールドを取得する。
auto x = uc::jni::make_field<Point, int>("x");
auto y = uc::jni::make_field<Point, int>("y");


auto p = newPoint(12, 34);    // Point p = new Point(12, 14);

int valueX = x.get(p);        // int valueX = p.x;
int valueY = y.get(p);        // int valueY = p.y;

x.set(p, 100);                // p.x = 100;
y.set(p, 200);                // p.y = 200;

文字列処理

jstringstd::string の相互変換をサポートする。

auto jstr = uc::jni::to_jstring("Hello World!");

std::string str = uc::jni::to_string(jstr); 

C++11から導入されたUTF-16を扱う型もサポートする。こちらの方がJavaとの相性は良い。

auto jstr = uc::jni::to_jstring(u"こんにちは、世界!"); 

std::u16string str = uc::jni::to_u16string(jstr);      // UTF8 への変換コストがかからない。

jstring を作りたいなら uc::jni::join() が便利だ。
jstring, const char*, const char16_t*, std::string, std::u16string を好きなだけ放り込んで結合できる。

jstring getMessage(jstring name)
{
    return uc::jni::join(u"私の名前は", name, u"です。").release(); 
}

配列処理

同様に、jarray 型と std::vector の相互変換もサポートする。

// jintArray -> std::vector<int>
std::vector<int> intValues = uc::jni::to_vector<int>(intArray);

// std::vector<int> -> local_ref<jintArray>
auto jintValues = uc::jni::to_jarray(intValues);
// jobjectArray -> std::vector<std::string>
auto stringValues = uc::jni::to_vector<std::string>(objArray); 

// std::vector<std::string> -> array<jstring> (後述)
auto jstringValues = uc::jni::to_jarray(stringValues);  

uc::jni::array<T>

JNI定義の型で、オブジェクトの配列を表す型は jobjectArray しかない。
これでは型を明確にすることで得られるC++のメリットが活かせない。

uc-jni では jobjectArray の代わりに uc::jni::array<T> を使う
jobjectArray とほぼ同様に使えて、かつ要素の型情報を持たせることができる。

先のメソッド定義において、テンプレートに任意のオブジェクト型配列を指定したい場合にも、このuc::jni::array<T> を使う。3

// String[] Hoge.intsToString(int[]) メソッドを取得する。
auto intsToStrings 
    = uc::jni::make_method<Hoge, uc::jni::array<jstring>(jintArray)>("intsToStrings");

なお、以下のように書いて std::vector でやり取りすることもできる。

auto intsToStrings 
    = uc::jni::make_method<Hoge, std::vector<std::string>(std::vector<int>)>("intsToStrings");

低コストAPI

何度も言うように、変換処理はコストがかかるため、低コストなAPIも用意している。

Get/SetArrayRegion()の薄いラッパー
// jlong でも jdouble でも同じように書ける。指定された型以外の変数を渡すことはできない。

auto array = uc::jni::new_array<jint>(10);

const std::vector<int> values = {10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19};
uc::jni::set_region(array, 0, 10, values.data());

std::vector<int> values2(10);
uc::jni::get_region(array, 0, 10, values2.data());
GetArrayElements()の薄いラッパー
for (auto&& v : uc::jni::get_elements(array)) {
    // 要素の読み書きOK
}

for (auto& v : uc::jni::get_const_elements(array)) {
    // 要素は読み取り専用
}

紹介はこのくらいで。興味があれば github も覗いてみてほしい。
次は解説記事を書いてみる予定。


---
  1. C++14をターゲットとしたのは、Android Studio が標準で対応していたからだ。

  2. あまり処理を持たず、薄い方が良い。ユーティリティ的な処理はあると良いが、使う・使わないを選べたほうがいい。処理がないのだから、コンパイルなんてさせないでほしい。コンパクトであって欲しい。全体を把握しないと使い始められないというのも困る。自分が使う部分だけでも覚えたらすぐ使えて、使いながら徐々に覚えていけるようなものだとうれしい。

  3. これは、タイプシグネチャを自動解決するために必須の情報だ。 jobjectArray を指定すると、シグネチャが [Ljava/lang/Object; になってしまう。

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