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ガートナーの日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル(2019)ざっくり解説

Last updated at Posted at 2019-11-06

はじめに

ガートナーの日本におけるテクノロジのハイプ・サイクルが先日(2019年10月31日)発表されました。
20191031-02.png
画像引用元:https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20191031

このキーワードを眺めるだけでは何の意味もないので、片っ端から調べてみました。
また、知ってるワードも改めて調べなおしてみました。
キーワードしかないため、一部特定できていない技術などあるかもしれないので、間違いなどあれば指摘などいただければ幸いです。
ちなみに、解説全部で8,000文字以上あります。

用語解説

そもそもガートナー(Gartner)とは

IT分野を中心に調査や助言を行う世界有数のリサーチ&アドバイザリ会社。
アメリカの企業でアメリカ国内の総収入の500位以内の企業の7割以上がガートナーの顧客。
要するにIT技術や市場動向の調査ガチ勢

ハイプ・サイクル

ガートナーが作った特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図
新技術が登場して、期待され失望されその後普及していく様を表している。
高い位置にあるほど期待が高く、右に行くほど時間が経過している
今ではマーケティングにも応用されている。
CIOやCEOが技術の採用可否の判断にえるようにしたものでもある。

黎明期

技術革新やPOC(概念実証)でメディアに報道されて幕が開ける。
ただし、実用的な商品は存在しないことが多い。

流行期(「過度な期待」のピーク期)

世間の注目が大きくなり、期待が大きくなる時期。
ここで期待されたことが成功することもあるが、多くは失敗する。

幻滅期

過度な期待に答えられずに急速に関心が失われている状態

啓蒙活動期

幻滅期を過ぎた技術が「啓蒙の坂」を登りながらノウハウが共有されて適用方法が理解され始める

生産性の安定期

広く受け入れられ、第2世代第3世代と進化していく。
最終的な標高は技術の特性によって変わる。

黎明期

メインフレーム・トランスフォーメーション

各企業の基幹システムにあたるメインフレームの近代化。
大企業ほど基幹システムの規模が大きくなり、
ブラックボックス化してしまって手がつけられない状態になっている
経産省の発表では7割の企業でレガシーシステムがデジタルトランスフォーメーションの足かせになってるとか。
多分そこをどうモダン化するかの話だと思われる。

デジタル・メッシュ

IoTや機械学習, VRやARなどをつなぐインフラの全般のこと。
ちなみに2016年ごろにガートナーが名付けたもの。

コンポーザブル・インフラストラクチャ

サーバー、ストレージ、ネットワークなどを自由に切り離して構成できるようにし、
使い方に合わせて最適なリソースを切り出すITインフラストラクチャのこと。
HPE Synergyという製品がある。
https://www.ctc-g.co.jp/solutions/hp_synergy/index.html

AIOpsプラットフォーム

AIOpsはIT運用向け人工知能ともよばれ、
システム稼働のログデータなどから機械学習し、タスクをAIが行ったり
提案する。

スマート・ワークスペース

いつでもどこからでも仕事ができるワークライフ・フルイディティーや
フレキシブルな働き方、データのアクセシビリティを高くすることで
オフィス以外の場所でも働けるようにした仕組み。
IBMやマイクロソフトはWeWorkと契約してスマート・ワークスペースを構築している。
2017年のハイプ・サイクルには登場しているよう。
https://note.mu/shinkinjo/n/n0892d72babd8

セキュリティ・オーケストレーション, 自動化, 対応(SOAR)

SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)のこと。
* インシデント対応の自動化
* インシデント管理機能
* 驚異インテリジェンスの活用

をひとつのプラットフォームに統合したシステム。
https://www.secure-sketch.com/blog/security-orchestration-automation-and-response

IoTセキュリティ

IoTに関するセキュリティ。
IoT機器もネットワークに繋がる以上攻撃にさらされる可能性がある。
しかもIoT機器の種類によっては生命に関わることもあるので重要性は高まっている。
機器のスペックなどの制約からアップデート方法なども難しかったりする。
経産省からIoTセキュリティガイドラインも策定されている
https://www.meti.go.jp/press/2016/07/20160705002/20160705002.html

デジタル・エクスペリエンス・プラットフォーム(DXP)

あらゆる顧客接点で一貫したエクスペリエンスを管理、提供、最適化するためのソフトウエア

スマホとPCだけではなく、スマートデバイスやそれ以外のアクセスも今後増えてくる可能性もある中で、
一貫した顧客体験を提供することができるようにサポートするソフトのこと。
https://www.adobe.com/jp/insights/160707-digital-experience-platform-dxp.html

流行期(「過度な期待」のピーク期)

5G

第五世代移動通信システムの略称
* 高速・大容量
* 低遅延
* 多接続
https://iot.kddi.com/5g/

要はネットが早くなるという話ではあるが、
本質的には"今まで通信がネックになっていた技術が花開く"ということだと思う。
個人的にはブロックチェーンやビッグデータなどが手軽に扱えるようになることは大きなメリットだし、
IoTやスマート・ワークスペースにも波及的に影響を与えそうだと思う。

アジャイル・プロジェクト・マネジメント

不確実性があるという想定でこまめに変化しながらプロジェクトを進めていくという開発方法。
ウォーターフォール大国の日本でやっと注目されてきたかという感想
https://www.ibm.com/downloads/cas/ZNA8MO0P

ペース・レイヤ・アプリケーション戦略

業務アプリケーションの設計において
“アプリケーションを使用目的と変更の頻度で分類し、分類ごとに、異なる管理とガバナンスのプロセスを定義する新しい手法”
https://www.kyoto-bdl.com/2018/04/12/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AEea%E8%A8%AD%E8%A8%88%E3%81%AE%E9%8D%B5-%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB/
サービス志向アーキテクチャに近いように思われるが、変更の頻度で分類することに注意
こういう設計はエンジニアから出にくそう。

市民データ・サイエンス

"高度な分析、あるいは診断的・処方的な機能でモデルを生成・作成するが、統計や分析を専門としない人材"
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/column/infostand/1040267.html
今や簡単な統計は関数一つで呼び出せたり、AIもSaaSとして提供されている。
また、大量のデータも手軽に扱えるようになっているため、高度な推定を使わずとも
ある程度の事実は可視化できるということだと思う。

デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォーム

デジタルビジネスにおいて必要になる要素の
* ITシステム
* IoT
* カスタマーエクスペリエンス
* エコシステム
* データとアナリティクス

これらの要素をふまえてどうビジネスモデルを構築していくかの話。
ITを活用した経営の指針的なものかと思われる。
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1806/11/news062.html

プライバシー・バイ・デザイン(PbD)

個人情報保護の観点をデータを設計段階からもりこむエンジニアリングアプローチ。
マイナンバーや、GDPR最近だとCCPAなどの条項でシステムで対応が必要になる事が多いが、それを事前にやってしまおうというアプローチ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%90%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3

プレディクティブ・サポート

起きる可能性のある問題が起こる前にAIなどで予測してサポートする方法
Ciscoなどが実際に提供している。
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1802/22/news091.html

エッジ・コンピューティング

IoT機器の情報の処理や加工、予測などを中央サーバではなく、データの生成元に近い側で処理を行うコンピューティングモデルのこと。
工場などのネットワークが弱い場所で適用されることがあるとか。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/35432
ちなみに、データのある端末にプログラムを送って分析結果だけ返すなどはビッグデータの分散処理でも行われる。

ポストモダンERP

迅速にビジネスに対応するためにコアとなるERPとSaaS型アプリケーションを疎結合で連携させたもの。
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20171001/
ちなみにERPはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略

IoTプラットフォーム

IoTで収集したデータをどうやって処理し、サービスにつなげていくかの部分。
* データ収集
* データレイクへの貯蔵
* サービスとしての提供

の三本柱が必要になる。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/33530

幻滅期

アクセラレータ・プログラム

大手企業が新興企業に対して協業・出資を目的とした募集行動を開催するものである。

成長させる目的で投資や協業を行う事。下請けでもなく、買収でもないのが特徴。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0

モバイルアプリ開発プラットフォーム(MADP)

異なるタイプのデバイス向けのアプリケーション開発、展開、管理をするためのツールを提供して効率化するもの。

ワークストリーム・コラボレーション

テーマごとに会話や文書共有、タスク調整ができるサービスのこと。
SlackやGoogle Hangoutsなど。

モノのインターネット(IoT)

モノがインターネットと通信すること。
モノをネット経由で操作する、モノからネット経由で情報を得る、モノ同士で対話するなどを用いてサービスを実現していく。
https://mono-wireless.com/jp/tech/Internet_of_Things.html
個人的には今はまだセンサーやコントローラのような役割のIoT機器が多いがIoTプラットフォームとエッジ・コンピューティングもしくは5Gの普及によってもう一段界進歩するかも。

DevOps

開発と運用で連携して協力し、開発と運用の境界もあいまいにすることで、ビジネスの価値を迅速にエンドユーザへ届けようという概念である。
DevOpsがついに幻滅期に入ってしまったかという印象。
ただ、運用と開発双方が改善するという期待が大きかったのも事実かもしれない。
https://www.buildinsider.net/enterprise/devops/01

仮想アシスタント(AIアシスタント)

SiriやAlexaなどのソフトウェアエージェントのこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%88

人工知能(AI)

人間の知能を機械でシミュレーションしようとしたもの。
映画ではよく人間に反乱している。
ディープラーニングの登場などで期待が高まっていたけど、
幻滅期に入った要因は
そこまで適用範囲が広くなく、
そもそも利用できるほどの教師データを収集する基盤が用意できている企業が多くなかったのではないかと思う。
ちなみに、
ディープラーニングは機械学習の一種で、
機械学習は人工知能の一種という入れ子関係にある。

コラボレーティブ・ワーク・マネジメント

複数の組織で共同開発することで新たな付加価値を得るのがコラボレーションだが、そこでの作業や付加価値を最大化することに関してのマネジメントに当たると思われる。
https://www.mindjet.com/jp/blog/2011/10/11/collaborative-work-management%EF%BC%88cwm%EF%BC%89%E3%81%8C%E3%82%82%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%99%E4%BE%A1%E5%80%A4%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F/

サービスとしての結合プラットフォーム(iPaaS)

Integration Platform as a Serviceは

iPaaS はクラウド内およびクラウドと企業間の統合を構築し展開するためのプラットフォームです。

アプリケーションがオンプレミスとクラウドにまたがる複雑なシステムを統合してユーザがどこで動いているかを気にせず利用することができるようにするサービス。

デジタル・ビジネス・コンサルティング・サービス

SMAC(SNS、Mobile、Analitics、Cloud)と呼ばれるIT技術や、IoT, AIなどを活用して初めて生まれるビジネスをコンサルティングするサービス。

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)

人の定型業務を代行するため、ルールエンジンやAIを備えた存在のこと。
エクセルマクロは狭義のRPAには含まれる。
https://winactor.com/column/about_rpa

ちなみに、ルールエンジンとはアプリケーションのビジネスルールを分離させて抽出したもの。
人間の知識などをルールベースに可視化した形式で格納される。
ビジネスにDIを適用した感じかも。

API

Application Programing Interfaceの略。
ここではパブリック向けWeb APIのことを指している模様。
GitHubやFacebook, Twitterのように外部向けWeb APIを用意することで提供するサービスのエコシステムを広げていくというようなことを指している。
APIエコノミーとか。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34728

ブロックチェーン

高い改竄不可能正と単一障害点が排除され一部が故障しても動き続けるデータベース。
仮想通貨などに使われている。
https://bitflyer.com/ja-jp/miyabi-blockchain

OTとITの融合

OTはOperational Technologyの略
製造業などでの運用技術とITを融合させてより効率化を図る手法。
インダストリー4.0などの実現のためには必須だと言われている。
https://blog.global.fujitsu.com/jp/2017-12-06/09/
また、IIoT(インダストリアルIoT)などの登場により、大量のデータが発生し、
データ分析基盤や可視化などの必要があり、よりIT化が求められるようになった。

クラウドソーシング(アプリケーション開発)

不特定多数の集団でアプリケーションを作り上げていくこと。
アウトソーシングではプロフェッショナルに依頼することを指すが、クラウドソーシングでは必ずしもプロフェッショナルに依頼するわけではない。
OSSはクラウドソーシング。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%89%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0-180561

ウェアラブル・デバイス

腕や頭部などの体に装着する端末の総称。
アップルウォッチやGoProなんかも含まれる。
個人的にコンセプトは受け居れられていると思うが、ライフトラッキングしたデータが個人では活用しきれなかったり、
充電の長さ的な煩わしさがまだ残っていると思う

CRM顧客エンゲージメント・センター(クラウド)

CRMはCustomer Relationship Management の略で顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上を通して売上の拡大と収益性の向上を目指す経営戦略手法。
また、顧客エンゲージメントとは顧客と企業の間の関係性や信頼性を指す。
顧客からの問い合わせ履歴の可視化や最適な対応をAIで予測するなどのサービス
salesforceなど。
※この項目の説明は自信ないです

啓蒙活動期

ソーシャル・アナリティクス

テキストマイニングなどを用いてSNS上での顧客の情報などを分析すること。

情報漏洩防止(DLP)

DLPはData Loss Preventionの略。
セキュリティを強化するシステムの一つで、機密情報や重要データの紛失・漏洩などを防ぐシステムのことを指す。
DLPでは特定の機密情報のみを対象とし、ユーザではなく機密情報を関しする点が従来のセキュリティとの違い。

クラウド・コンピューティング

ネットワーク経由でコンピュータ資源をサービスとして提供する利用形態。
AWSとかGCPとか。

レガシー・アプリケーションの近代化

これが技術として注目されているということについて違和感を感じる人は多いと思う。
リファクタリングやリプレイスなどを指すと思われる。
そもそも大昔のITでは正常に動いているものにを入れるのはタブーとされていて、
そこからCI/CDやDevOpsなどの概念が登場し今に至っている。
その大本になった技術がこのポジションにあるのは至極妥当な気がする。

ベンダー管理オフィス(VMO)

VMOはVender Management Officeの略。
ベンダーを管理する専任部署で、
近年のクラウド化の進んだIT業界でAIやIoTなどの分野ごとに最適なベンダーを選ぶ場合の難しさや、
継続的にリスク管理をすることの難しさなどから設立される。

まとめ

ここまで読んだ上でハイプ・サイクルを見直すとまた新しい観点で見ることができるのではないでしょうか。
用語の意味を押さえつつ、それがどの段階の技術なのかを理解するのは大事なことだと思います。
また、黎明期や流行期の技術革新により自分の専門分野がどう影響を受けるか、
どうやったらうまく技術的にコラボレーションできるかを考えるのもいいと思います。
さらに、お客さんの要望とハイプ・サイクルを照らし合わせて"顧客が本当にやりたいこと"を割り出すヒントにできると
より良いエンジニアリングに繋がるのではないかなと思います。

その他参考URL

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