QuoraにまとめられたFacebookのグロースチームに所属するAndy Johns人物が直接回答した有名なWhat are some decisions taken by the “Growth Team” at Facebook that helped Facebook reach 500 million users.というスレッドがある。
Andyの回答は日々の意思決定に焦点をあて、戦術・雇用・戦略・文化作りの4つの軸から、如何にしてたったの4年間でユーザー数を5億人にまで伸ばしたかについて具体例を交えながらまとめていた。
Andyのまとめだけもとても秀逸なのだが今回は、先輩からのリクエストを元にして以下の3つの異なる軸からこのスレッドを切り取ってみたい。若干、掲載するプラットフォームが変だっていうツッコミが入りそうな感じはするけど、こういうのはエンジニア主導で行われていくべきものだし、見ていて損は無い情報だろうから恐れずポストした。
- KPI策定に必要な要素とは
- PDCAサイクル高速化のためには
- 彼らの行った具体的な施作
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本題に入る前に、、
本題に入る前には2010年時点でのFacebookのグロースチームに関する情報とFacebookの現状ユーザー数について少し触れておきたいと思う。
Facebookのグロースチームは当時、国籍のバラバラな30人ほどのメンバーが所属していた。このグロースチームが買収やパートナーシップ、FBページのマルチリンガル化も含めた、最適化の全責任を負っていた。その中には、なども含まれていた。残念ながら現在のグロースチームの情報は探せなかったので、知っている人がいたらどなたかFacebookかコメントにて教えて頂けたらとても嬉しいです。。
2006年に誕生したFacebookは2010年までにユーザー数5億人を達成。そこから2015年末までで、ユーザー数を3倍の15.9億人までに伸ばした。直近の2016年7月までに更に1億人を獲得し、17億人を超えた。これにはLGBTの人の要請を請けてFacebookが実名ポリシーを緩和したことなんかも影響しているのかもしれない。
出典:TechCrunch:facebook earnings Q4
それでは本題へ!
グロースチームのKPI 策定方法
実際に何かしらのサービスの最適化を行うとなっても、その第一段階である問題設定からKPI策定までの手順が分からなかったりすることが多い。中にはKPI策定した段階で「買収がベストプラクティスだ」という答えが出ることもあるが、ここではショートカット無しの自力での成長戦略に関するKPI策定手順をまとめてみる。
Facebookユーザー数増加のためのKPI策定の手順について
この場合のKPI策定の第一ステップは、課題をいくつかの小さな問いに分割していくことから始まる。今回はユーザー数増加を大きな課題としているので、KPIは少なくとも未登録・登録したて・利用中・利用停止の4段階のユーザーを対象に設定される必要がある。
対象が明確になれば、以下の4つをKPI策定への細分化された問いとして定義できる。
- どうやって新規ユーザー獲得率を増やすか
- 新規ユーザーをできるだけ早くアクティブユーザーにするための方法
- アプリ使用時間を高めるためのトリガーはを引っ張る方法
- 流出したユーザーを引き戻すためにどんなことができるのか
これはAndyが実際に作ってくれたカスタマージャーニーと、各段階のユーザーに対する課題に対する図で、なんとなくイメージをつけるのに最適かもしれない。
大抵の場合は、これらの問題の解を探しているうちに「新規ユーザー獲得にはFacebookの写真をアップロードできる機能を拡張すればいいんだ!」といった具体的な答えが見つかる。その答えが見つかったら、次の2つの手段からどちらが効率良いか考える必要がある。
- 既存のユーザー接点の価値を高める
- 新しいユーザー接点を0から作る
例えば写真の例でいくならば、既存の写真アップロード手順の簡易化と、Google Photoからのインポート機能を作成といった、2つのチャネルについて考えることができる。
ユーザーに登録を促すようなサービスを提供しているのであれば、Facebookのグロースチームが実際に見つけた次の例から、ユーザー接点最適化のヒントを得ることができるかもしれない。
- 招待メールの絶対量を増やす
- 既存ユーザーによる招待メールの送信を促す
- 招待メールのCTRを高める
- 既存ユーザーによる招待メールのCTRを高める
- ログアウトページのデザイン性
- 登録フォームの最適化
- 登録前のアカウント認証メールの改善
ユーザー獲得のためのKPIの策定は積み上げ棒グラフのようなもので、それぞれのチャネルが少しでも改善すれば、全体としては莫大な効果を発揮することになる。チャネルの数を増やせば増やすほど、全体のユーザー数もどんどんと増えて行く。
もちろんただ単にチャネルを増やせば成功する訳ではない。増やしたならば最適化をしなくてはいけないし、そのチャネルの評判が悪ければ逆効果になるかもしれない。
チャネルを増やし、それぞれの質を高めるためには、失敗を恐れずにチャレンジを繰り返し、リスクを取りながらPDCAサイクルを高速で回していくことが必要とされる。もちろんFacebookのグロースチームもPDCAサイクル高速化のための工夫を行っていた。
PDCAサイクル高速化のための取り組み
僕は本田圭佑が好きで、彼に関する記事などは頻繁に目を通している。彼のまっすぐな姿勢というか折れない精神とかは天性のもので自分には無いものだし、何より有言実行だしかっこいい。サッカー選手でありながら自分で経営もしてるあたりもとても好き。そんなビジネスにも手を伸ばしている本田圭佑が、目標達成に関することでこんなことを述べていた。
挫折は過程、最後に成功すれば挫折は過程に変わる。
だから成功するまで諦めないだけ。
成功をいち早く獲得するためにはできるだけたくさんチャレンジすることが必要で、そのためにはリスクテーキングは欠かせない。誰しもリスクを取ることはなるべく避けたいと願うが、企業として成功するためにはリスクを取りチャレンジをたくさんして、PDCAをできるだけ高速で回すことが必要だ。
上記のことを叶えるためにAndyは、Facebookで実践していた3つのポイントを挙げている。それは小手先の短期的な努力で結果の見えることではなく、長期間継続的に続けていく必要のある組織作り的な面が多かったことが印象的だった。
- 経営陣とグロースチームの距離感
- カルチャー作り
- M & A
経営陣とグロースチームの距離感
memeboxのデータサイエンスによる業務改善例で述べたようにデータによるグロースチームは経営陣に近い距離にある必要がある。Andyもグロースチームと経営陣が近い関係にあったことに写真までつけて触れていた。これはグロースチームのリーダーであるChamathとザッカーバーグを含めた経営陣が仲良く話している瞬間が切り取られている。
グロースチームが経営陣と近い距離を必要としている理由には、**成長(グロース)**の特性が影響している。成長は1部門として認識される実行されるべきことではなく、経営者のような視点から全ての部門に対して、企業ミッションを達成するために実施される必要がある。この写真からも分かるようにFacebookのグロースチームも、経営陣からの手厚いサポートを受け、部門横断的な視点から成長のための最適化を行っていたようだ。
最後にAndyは、企業の成長のために経営者がするべき意思決定で、何よりも大切なものがあることに触れた部分を引用したいと思う。それは壮大な企業ミッションの策定でもなく、グロースチームの会社内でのあるべき姿に触れる象徴的な内容だった。
グロースをエンジニア・オペレーション・企画チームの日々の活動において、最も根本的な要素と位置付ける。経営者がするべき最も大事な意思決定は、企業でのグロースのポジション設定にあるのかもしれない。
カルチャー作り
国際色豊かなグロースチームのオフィス天井には、メンバーの出身国の国旗が掲げられている。
グロースチームのオフィスの天井には、これらの国旗と並んで2つだけ、どこの国にも属さない旗が掛けられていたという。そこに掲げられていたのはグロースチームのメンバーが胸に刻むべき使命であり、リスクテーキングに恐怖を抱く人を奮い立たせるような内容になっていた。
GO BIG OR GO HOME
UP AND TO THE RIGHT
他にもありとあらゆる場所にメッセージは散りばめられていて、有名なDONE IS BETTER THAN PERFECTなんかは、オフィスの壁に書かれていたメッセージのうちの1つであった。
このような文化作りや経営陣によるサポートのような組織作りの取り組みが、高速でPDCAサイクルを回すためには役に立つのかもしれないなー、、と思ったりもした。続いて少し違ったPDCAサイクル高速化(というかショートカット?)の例を挙げてみる。
M&A
何かしらの目標があってなおかつ資金が潤沢にあるならば、企業を買収することもPDCAサイクル高速化の1つの手段かもしれない。Andyは実際にFacebookのグロースチームが主導で、企業の買収やパートナー提携が行われたと述べていた。
ここではFacebookが実際に行った、友人レコメンド機能拡張に向けた、企業買収によるサイクル高速化の具体例を挙げる。
Octazenの買収
Facebookのミッションは世界中の人を繋げることだ。そのためにはソーシャルグラフのような人間関係のリストを作成することは必須だった。そしてこのゴールに向かうためにFacebookが選んだのは、自前でのソーシャルグラフ作成ではなく、その情報を持っているOctazenというマレーシアのスタートアップを買収だった。
Octazenは、友人情報などを引き出せる権利をユーザーに認めてもらい、その情報を元にユーザーの連絡先リストやソーシャルグラフを抜き出して人間関係の繋がりのリストを作っていた。
Facebookは買収したOctazenの情報を元にして、自社で取り組んだら数年はかかるソーシャルグラフを数ヶ月で完成させた。拡充した友人レコメンド機能によって、継続的なユーザー数の増加を可能にしたのだ。
目的達成のためにPDCAの高速化を図ることは確かに大切なのかもしれない。でもサイクルを回し続けるのは工数もかかるし、精神的にも骨の折れる仕事だ。このような目標が現れた時、買収によるPDCAプロセスのショートカットも1つの手段として有効なのだろう。
具体的な施作
ユーザー5億人獲得のためにはいくつもの最適化を実践し、中には特別な施作もあったようだ。しかしAndyが強調して述べていたことはとてもシンプルなことで、memeboxのデータサイエンスによる業務改善例でも書いた、教科書通りのことを淡々とやり続けることだった。
僕たちが取り組んだ施作で、伝えていかなきゃいけないことは山ほどあるよ。でもね、そのほとんどは特別なものじゃなくて、マーケティングの教科書に載ってる内容なんだ。テストして、本番で試してみて、フィードバックを元に洗練する。これを繰り返していただけさ。
実際にAndyが上げていた具体例を挙げる前に、ここに書かれていることを愚直に実行してもうまくいく訳がないということには注意しておかなきゃいけない。プラットフォームだけでなく、時代によってもユーザーの行動は変化していく。これらを参考に、自社サービスで最も有効なように最適化を図っていくことが大事だと肝に銘じておきたい。
ここではその最適化の例を箇条書きでまとめていく。どのようなプロセスでこれらの具体例が導かれたかも丁寧に説明されているのだが、既に内容的には盛り沢山だし、また別の機会にそのプロセスについてはまとめたいと思う。以下が最適化の具体例だ。
- 文章よりもボタンを使おう
- ボタンの位置と言葉には気をつけよう
- 位置だけじゃなく、サイズ・色・影なども大切!
- 速さは正義。速度の遅いサイトはCV率を意識していないも同然
- 価値のあるコンテンツを作るために、見出しやサブ見出しを充実させよう
- 文字を使いすぎないこと。シンプルで簡潔なサイトを
- 色使いはグロースハッカーのたしなみ
- 画像はCV率を高める。効率良く使う方法をテストしよう
- ユーザーへの感謝を上手に述べれば、CV率もアップ
- 正しく使われれば、商品説明の動画はとても効果的だ
- ユーザー登録ホームはシンプルに。自動入力が可能な構成にしよう
- 所属欲求などの人間の欲求を上手に使おう(ex. 友達N人がサービスを使ってます!)
- メールの件名・送信元アドレス・日時のABテストは抜かりなく
- htmlメールよりもテキストメールの方がCV率が高かった!
- 広告を上手に使おう。更にランディングページを効率化すると3倍もCV率があがることもある
- 広告の画像やメッセージを数日間隔でローテーションさせると更に効果が上がる
- Facebook広告をクリックするための手段もシンプルに
- AdwordsのCTRを上げるには動的にキーワードを入れられるようにしよう
- SNSシェアボタンの位置もABテストを
- SEOメタデータの最適化も忘れずに
- 2万件以下のAdwordsキャンペーンしかもたないなら、1キーワード対して1つの広告グループを作成しよう。これによって狙いのキーワードに対して重複なく広告を打てるし、Adwords広告のCTRを上げるにはこれが一番手っ取り早かった
ソース
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