退屈なアリス
アリスは2,3日待ってみたが、ビジュネルからの返事はなかなか来なかった。
そのうちアリスは退屈になって、知恵の秘儀を読み始めた。
中には確かに使ってはいけない暗号や、魔法文字の解読の方法、アルルが知ってそうなことがたくさん乗っていた。
しかしなにせ200年も前の本だったので流石に情報が古かった。
そこで新刊がないかどうか調べてみた。
本の出版元は100人委員会と書かれていた。
100人委員会?実在するのね。ずっと歴史上の仮想の団体だと思っていたわ。
新刊である現代数秘術はあるが、専門書だったので6000円もした。
作者は数理魔術の養成校で教えている人のものだった。
これほしいなあ。貯金使っちゃおう。
でもどうやって取り寄せればいいのかしら。
アルルに頼んでも断られそうだし。
なにせあいつはプロの魔道士だから、お金出さないで魔法なんか使ってくれないし。
アリスはしばらく考えて思いついた。
そうだ!匿名電報権を使えばいいんだわ!
匿名電報権に自分のほしい本のIDを書いての本の名前と出版元を郵便局に送って局にいる魔道士に取り寄せの術を使って取り寄せてもらうのよ。
郵便局ならあらゆる組織の公開鍵が登録されているから、鍵に魔法を使って取り寄せられる。
匿名電報権は私の住所を知らない。
受取先を近くのコンビニにしておけば私の住所を記録されずにすむ。
これで安心して最新の数理魔術の本が手に入るわ!
アリスがすべての情報を書き終わると、匿名電報権はさっと金粉のように光って郵便局まで送信された。
空間ポストって便利ねえ。
そんなことで感心している場合ではない。
翌日待望の数理魔術の新刊をコンビニに取りに行った。
タイトルが見えないように梱包されていた。
そしてその本には、アルルの使っていた見えないものに物直しの技をかける方法もきちんと書かれてあった。
それだけでなく更に難しい最新の魔法についても書かれてあった。
これでアルルに近づける・・・かも。
ちょっと自信がないけど頑張るわ。
去年の秋に大学入学資格試験に合格していたので、16歳のアリスには時間があった。
そして唯一の悩みは、普通の大学に行くか、魔術師養成校に行くかだった。
難易度は魔術師養成校のほうが高かった。
問題もさることながら、魔術師の適性や倍率などで入学が難しい学校として知れ渡っていたのだ。
しかし入学すれば、大学卒業の肩書だけでなく、給料まで出るのだ。
アリスは年老いたおばあさんと住んでいた。
母親も父親もいたが、外国で忙しく働いて仕送りをしているので、大学に行きたくても予算がない。
そういうわけで、もし社会的地位を上げたければ魔術師養成校に行くしかないのだ。
アリスは覚悟を決めた。
私は魔術師になる。