##一方向の研修
企業におけるIT研修は、一人の講師が教室前方に立ち、多人数の受講者に対して話を伝達するスタイルが横行している。講師が受講者に一方向に情報を伝えるだけでは、良質な学びにつながらない。
自社で実施している研修は、「情報の伝達(説明)」だけではないと考える人もいるかもしれない。
では、「情報の伝達」以外の要素はなにがあるのだろうか。「演習を実施してアウトプットしてもらう。」や「質問をして答えたもらう。」などだろうか。
これらの要素では、多人数の受講者を相手にした場合、受講者全体に効果的にフィードバックが行えず教育効果が薄くなりがちだ。
従前からの研修スタイルである、この一方向の研修は、決められた内容でかつ疑問が思いつかないものであったり、応用的要素が含まれない内容の場合は、効果的だと感じる。例えば、マニュアルの手順に則った調理工程を覚える。や、会計時のレジの操作方法 など。
IT技術研修で教える内容の場合、一方向の研修では対応が難しい。
研修でのファシリテーションの必要性
私は、今現在、新入社員を対象に、ITシステムの上流工程(要件定義や基本設計)を研修で教えている。
単に、図表(ユースケース図やアクティビティ図、ER図)の表記方(ルール)を伝達するだけであれば、一方向でもよいが、表記方を知っただけでは、開発現場では応用できない。
現場でも力を発揮してもらうには、演習などで実際に図を記述(アウトプット)してもらい、書き方にルール違反がないかというレベルから、システム導入するお客様の意図が反映できているかといったレベルまで、様々な視点で講師がフィードバックを行う。
上記内容は、従前の一方向の研修に少し手を加えたレベルでしかない。一人の講師 と 一人の受講者 間のコミュニケーションであり、それを周囲の受講者が傍観しているといった場面を何度も見てきた。周囲の受講者は、良い学びを得られているのか。疑問である。
そこでファシリテーションの出番である。
研修でのファシリテーションの適用
ファシリテーションのプロセスや必要なスキル一覧などは、ネット検索におまかせするすることにし、IT技術研修でファシリテーションを適用する場合に、使えそうなスキルをいくつかピックアップする。
チームディスカッションへの参加を促す
一人の講師 から 一人の受講者へ、演習の回答に対してフィードバックを行ってしまうと、周囲の受講者への教育効果が薄れる可能性があることは前述である。
そのため、傍観する受講者が発生しないようにディスカッションの場を設け、コミュニケーションに参加するような、仕組みや声がけが必要になる。
ディスカッションが活性化するチーム人数や人間関係を考慮したチーム構成、発言順番を決めるためのルールや方法 を講師が準備しておく。
私が演習を実施する場合は、1チーム4名前後、チーム構成は多様性(年齢や部署などがバラバラ)をもたせられたらベスト。
発言が、なかなか出ない場合も予想される。その時には、単にどなたか発言してくださいという声がけでなはなく、ルールを決めて。自宅が近い方から発言する。とします。
それでも、なかなか発言しない方も存在する。そのような場合は、発言の心理的ハードルを下げることもする。例えば「いま感じていることを言葉にしてください。」や「頭にぼんやり思い描いていることでもよいので言ってみてくらださい。」など柔らかく受け止める姿勢を見せることも大切と考える。
様々な視点の意見を聞き出す
IT系研修で学習する内容には、状況により判断がことなる事柄が多く含まれる。
例えば、画面設計において、1画面で顧客情報と契約情報を入力させた方がよいのか2画面にわけるべきか。これは、システムを使う人の(業務内容やPCスキルなど)状況によって判断がわかれる。
こういった場合は、様々な視点での意見がでてこないと受講者は良い気付きをえられない。
そのため、全員への質問の投げかけはもちろんのこと、個々人へ異なる質問なげかけて様々な意見がでるようにディスカッションの場を導く必要がある。
聞いている全員が共通認識できるように
受講者へ発言を促したり、質問をして返ってきた言葉が、抽象的であったり曖昧であったりはたまたそれまでの研修で登場しない用語が出てきた場合、その言葉を受講者全員が理解・共通認識できるように、講師は表現し直しする必要がある。
受講者の言葉を、具体的にし、新しい用語は既存の用語で置き換えあられるようであれば置き換え、置き換えられないのであれば意味を説明する。
こうして講師が表現し直した内容が全員に通じたかを最後に確認する。
研修で適用しているいくつかのファシリテーションスキルを見てみた。皆さんはどのようなファシリテーションスキルを駆使して研修を進めているでしょうか。