背景
回路設計で使う遅延回路ですが、お手軽に遅延時間を設定するにはCRを使った時定数が便利です。
時間t
と電圧V
の関係は、数式を知っていれば簡単で、
\displaylines{
V=E(1-e^{-\frac{1}{CR}t})\\
E:電源電圧
}
で表されます。
経験豊富(?)なエンジニアは、おおよそ電源電圧の0.63倍とか、0.36倍という数字で当たりをつけると思います。
マージンも考慮してこの程度の計算でカバーできるなら、これでOKですね。
しかし詳細な解析となると、ちゃんと計算をしなきゃいけないこともあります。
そんな時、Macに標準で入っているGrapher
というアプリケーションがとても頼りになりますよ!
時定数をグラフ化してみる
例えば82KΩ、22uFの組み合わせでの回路の動作をGrapherで見てみます。
この時の時定数は
(82\times10^3)\times(22\times10^{-6})=1.804[sec]
で、使用する電源の電圧が29.2Vの場合、充電回路の数式は
\displaylines{
V=29.2(1-e^{-\frac{1}{1.804}t})\\
}
となります。
この数式をGrapherに入力し、グラフを書かせてみます。
わかりやすくするため、グラフの色は青に変えました。
実際の回路の振る舞いをそのまま表せています。
お手軽に経過時間と電圧を知る方法
カーソルを動かして調べる
とりあえず、大まかに20Vに達する時間はどのくらいか...
これはグラフをクリック・ドラッグしてみればいいです。
その際、アクション
をカーソルにしておきます。
青いグラフをクリックしてなぞって(ドラッグ)いくと、X軸とY軸の破線がカーソルに合わせて動きます。
それと同時に、ウィンドウの下にその時のXとYの値が表示されます。
Yがおよそ20の時、Xは2なので、電圧が20Vに達する時間はおよそ2秒ということがわかります。
時間を数値で指定して電圧を調べる
入力した数式のx
の値を入れてy
の値を求めることもできます。
メニューバーの方程式
から評価
を選びます。
xの値を探りながら入れて、実際は2.1秒くらいなんだろうな...ということがわかります。
正確に時間を知るには
これはちゃんと計算するしかありません。
時定数の式は電圧を求める式なので、逆に時間を求める式に変換します。
懐かしいですね...学生時代を思い出す方もいらっしゃるかと(笑)
t=-1.804ln(1-\frac{V}{E})
このグラフで方程式
の評価
をすればいいですね。
充電電圧が20Vになるのは2.0836秒と正確に求められます。
Grapherの使いこなし
範囲指定のグラフ
この機能はGrapherのバグでクラッシュしてしまうことがありますが、とても便利です。
0<x<100
という範囲でグラフを書きたい...ということはありますよね。
その場合は条件を指定する数式を使います。
- xが0未満は0
- xが5未満はグラフを描画
という意味です。
また、条件の書き方では&
でAND条件が書けます。
上記の例では二次関数を2<x<5
の範囲で書きます。
Grapherの条件の数を2にしましたが、1もできるんじゃなかと思うのですが...
バグなのか仕様なのか、うまくいきませんね...
最後に
回路設計では指数関数、対数関数などを扱うことが多いです。
大抵は関数電卓で済んでしまうのですが、不具合の解析などで回路の動きを追うときには、やはりグラフ化して確認するのが視覚的にわかっていいです。
お客様に説明するときにも、大抵すぐに理解してもらえます。
Grapherのバグが直ることを期待しつつ、回路設計に従事している方は使ってみてはいかがでしょうか?
とても使いやすいですよ、これ!