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Pythonで、デザインパターン「Memento」を学ぶ

Last updated at Posted at 2020-01-29

GoFのデザインパターンを学習する素材として、書籍「増補改訂版Java言語で学ぶデザインパターン入門」が参考になるみたいですね。ただ、取り上げられている実例は、JAVAベースのため、自分の理解を深めるためにも、Pythonで同等のプラクティスに挑んでみました。

■ Memento(メメント・パターン)

「Memento」という英単語は、「形見・記念」を意味します。
このパターンは、あるオブジェクトの任意の時点の状態を覚えておき(保存)、 後でその状態にオブジェクトを戻すための工夫を提供するパターンです。(カプセル化を破壊せずに、状態を元に戻せる)つまり、テキストエディタ等で実装されているような「アンドゥ」(操作をキャンセルして操作前の状態に戻す)機能を提供するためのパターンです。
注意すべきことは状態を元に戻すための必要最小限の情報(フィールド値)のみを保存すると言うことです。
(以上、「ITエンジニアのための技術支援サイト by IT専科」より引用)

UML class and sequence diagram

W3sDesign_Memento_Design_Pattern_UML.jpg
(以上、ウィキペディア(Wikipedia)より引用)

■ "Memento"のサンプルプログラム

実際に、Mementoパターンを活用したサンプルプログラムを動かしてみて、次のような動作の様子を確認したいと思います。なお、サンプルプログラム**「フルーツを集めていくサイコロゲーム」**は、次のような動作を想定するものとします。

  • このゲームは自動的に進みます
  • ゲームの主人公は、サイコロを振り、サイコロの目に応じて動作が決定します
  • ゲームの都度、現在の状況を表示します(所持金、所持しているフルーツ)
  • ゲームの開始時点では、所持金100円からスタート
  • 現時点の所持金が、保存しておいた所持金を上回った場合は、その状況(所持金と所持している"おいしいフルーツ")を保存します
  • 現時点の所持金が、保存しておいた所持金の半分を下回った場合は、以前に保存したその状況(所持金、所持している"おいしいフルーツ")を現在の状況として復元します
  • お金がなくなったら終了します。
  • 最大100回、ゲームを繰り返します

<サイコロの目に応じた動作>

  1. サイコロの目が"1"が出たとき、所持金が100円増えます
  2. サイコロの目が"2"が出たとき、所持金が半分になります(端数は、切り捨て)
  3. サイコロの目が"6"が出たとき、フルーツが貰えます
     (普通の**"フルーツ"が貰えるが、"おいしいフルーツ"**が貰えるか、確率は、50%です)
  4. その他のサイコロの目が出た場合は、何も起こりません
$ python Main.py 
==== 0
現状:[money = 100, fruits = []]
所持金が増えました
所持金は200円になりました
      (だいぶ増えたので、現在の状態を保存しておこう)

==== 1
現状:[money = 200, fruits = []]
フルーツ(おいしいぶどう)をもらいました
所持金は200円になりました

==== 2
現状:[money = 200, fruits = ['おいしいぶどう']]
何も起こりませんでした
所持金は200円になりました

==== 3
現状:[money = 200, fruits = ['おいしいぶどう']]
所持金が増えました
所持金は300円になりました
      (だいぶ増えたので、現在の状態を保存しておこう)


...(snip)


==== 22
現状:[money = 500, fruits = ['おいしいぶどう', 'おいしいぶどう', 'おいしいバナナ', 'おいしいリンゴ', 'リンゴ', 'バナナ']]
フルーツ(おいしいバナナ)をもらいました
所持金は500円になりました

==== 23
現状:[money = 500, fruits = ['おいしいぶどう', 'おいしいぶどう', 'おいしいバナナ', 'おいしいリンゴ', 'リンゴ', 'バナナ', 'おいしいバナナ']]
所持金が増えました
所持金は600円になりました
      (だいぶ増えたので、現在の状態を保存しておこう)

==== 24
現状:[money = 600, fruits = ['おいしいぶどう', 'おいしいぶどう', 'おいしいバナナ', 'おいしいリンゴ', 'リンゴ', 'バナナ', 'おいしいバナナ']]
所持金が半分になりました
所持金は300円になりました

==== 25
現状:[money = 300, fruits = ['おいしいぶどう', 'おいしいぶどう', 'おいしいバナナ', 'おいしいリンゴ', 'リンゴ', 'バナナ', 'おいしいバナナ']]
何も起こりませんでした
所持金は300円になりました

==== 26
現状:[money = 300, fruits = ['おいしいぶどう', 'おいしいぶどう', 'おいしいバナナ', 'おいしいリンゴ', 'リンゴ', 'バナナ', 'おいしいバナナ']]
所持金が半分になりました
所持金は150円になりました
      (だいぶ減ったので、以前の状態に復帰しよう)

==== 27
現状:[money = 600, fruits = ['おいしいぶどう', 'おいしいぶどう', 'おいしいバナナ', 'おいしいリンゴ', 'おいしいバナナ']]
所持金が半分になりました
所持金は300円になりました

...(snip)

最後の方で、Mementoパターンを使った動作が確認できました。

■ サンプルプログラムの詳細

Gitリポジトリにも、同様のコードをアップしています。
https://github.com/ttsubo/study_of_design_pattern/tree/master/Memento

  • ディレクトリ構成
.
├── Main.py
└── memento
    ├── __init__.py
    ├── gamer.py
    └── memento.py

(1) Originator(作成者)の役

Originator役は、自分の現在の状態を保存したいときに、Memento役を作ります。Originator役はまた、以前のMemento役を渡されると、そのMemento役を作った時点の状態に戻る処理を行います。
サンプルプログラムでは、Gamerクラスが、この役を努めます。

memento/gamer.py
import random
from memento.memento import Memento

class Gamer(object):
    def __init__(self, money):
        self.__fruitname = ["リンゴ", "ぶどう", "バナナ", "みかん"]
        self.__money = money
        self.__fruits = []

    def getMoney(self):
        return self.__money

    def bet(self):
        dice = random.randint(1, 6)
        if dice == 1:
            self.__money += 100
            print("所持金が増えました")
        elif dice == 2:
            self.__money //= 2
            print("所持金が半分になりました")
        elif dice == 6:
            f = self.__getFruit()
            print("フルーツ({0})をもらいました".format(f))
            self.__fruits.append(f)
        else:
            print("何も起こりませんでした")

    def createMemento(self):
        m = Memento(self.__money)
        for f in self.__fruits:
            if f.startswith("おいしい"):
                m.addFruit(f)
        return m

    def restoreMemento(self, memento):
        self.__money = memento.money
        self.__fruits = memento.getFruits()

    def __str__(self):
        return "[money = {0}, fruits = {1}]".format(self.__money, self.__fruits)

    def __getFruit(self):
        prefix = ''
        if bool(random.getrandbits(1)):
            prefix = "おいしい"
        return prefix + random.choice(self.__fruitname)

(2) Memento(記念品)の役

Memento役は、Originator役の内部情報をまとめます。Memento役は、Originator役の内部情報を持っていますが、その情報を誰にでも公開するわけではありません。
サンプルプログラムでは、Mementoクラスが、この役を努めます。

memento/memento.py
class Memento(object):
    def __init__(self, money):
        self.money = money
        self.fruits = []

    def getMoney(self):
        return self.money

    def addFruit(self, fruit):
        self.fruits.append(fruit)

    def getFruits(self):
        return self.fruits

(3) Caretaker(世話をする人)の役

Caretaker役は、現在のOriginator役の状態を保存したいときに、そのことをOriginator役に伝えます。Originator役は、それを受けてMemento役を作り、Caretaker役に渡します。
Caretaker役は将来の必要に備えて、そのMemento役を保存しておきます。
サンプルプログラムでは、startMainメソッドが、この役を努めます。

Main.py
import time
from memento.gamer import Gamer

def startMain():
    gamer = Gamer(100)
    memento = gamer.createMemento()

    for i in range(100):
        print("==== {0}".format(i))
        print("現状:{0}".format(gamer))
        gamer.bet()
        print("所持金は{0}円になりました".format(gamer.getMoney()))

        if gamer.getMoney() > memento.getMoney():
            print("      (だいぶ増えたので、現在の状態を保存しておこう)")
            memento = gamer.createMemento()
        elif gamer.getMoney() < memento.getMoney() / 2:
            print("      (だいぶ減ったので、以前の状態に復帰しよう)")
            gamer.restoreMemento(memento)

        time.sleep(1)
        print("")

if __name__ == '__main__':
    startMain()

■ 参考URL

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