この記事の目的
量子コンピュータ理論の基本、または線形代数の基本である公理「エルミート行列の固有値は実数である」ことについて、具体的に確認します。
命題「エルミート行列の固有値は実数である」の確認
では、さっそく数式を用いて確認します。
行列$A$をエルミート行列、列ベクトル$X$を固有ベクトル、$\lambda$を固有値(スカラー値)とすると、固有値・固有ベクトルの関係から、以下のように表すことができます。
AX = \lambda X
両辺に左から、$X$のエルミート共役行列である$X^\dagger$をかけます。
\begin{align}
X^\dagger AX&=X^\dagger\lambda X\\
&=\lambda X^\dagger X\quad(式1)
\end{align}
両辺のエルミート共役を取ると、
(X^\dagger AX)^\dagger = (\lambda X^\dagger X)^\dagger\quad(式2)
以下の公式を使用します。
(AB)^\dagger = B^\dagger A^\dagger
(式2)を丁寧に展開すると、
((X^\dagger A)X)^\dagger = (\lambda(X^\dagger X))^\dagger\\
X^\dagger (X^\dagger A)^\dagger = (X^\dagger X)^\dagger \lambda^*\quad(式3)
(式3)の右辺の記号$^*$は複素共役の意味です。$\lambda$はスカラー値なので、エルミート共役を取れない代わりに複素共役を取ります。
よって、(式3)は、
X^\dagger A^\dagger (X^\dagger)^\dagger = \lambda^*X^\dagger (X^\dagger)^\dagger\\
X^\dagger A^\dagger X = \lambda^*X^\dagger X
当然ながら、$(X^\dagger)^\dagger = X$です。
ここで、$A$はエルミート行列なので$A^\dagger =A$を代入すると、
X^\dagger A X= \lambda^*X^\dagger X\quad(式4)
(式1)と(式4)を比較すると、以下のようになります。
X^\dagger AX=\lambda X^\dagger X\quad(式1)\\
X^\dagger AX=\lambda^*X^\dagger X\quad(式4)
これより、以下が導けます。
\lambda = \lambda^*
$\lambda$はスカラー値であるから、上記が成立する条件は、$\lambda$が実数の場合になります。
よって、命題が真である(正しい)ことが確認できました。
関連情報
量子コンピュータの基本 - exp(iA) がユニタリー行列になる理由
https://qiita.com/ttabata/items/0415cd004c450b64cec1
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