暗号スイートについての説明
一言でいうと
通信を暗号化するための一揃いのアルゴリズムセット(約100通りほど)。どちらかというとネガティブな意味で使われていることが多い気がします。
もう少し詳しく
暗号スイートとはcipher(暗号化)suite(一揃い)という意味です。通信を安全に保つためのひとセットのアルゴリズムを指し、これを「暗号スイート」と呼びます。(薄々勘づいていると思いますが)残念ながら、甘いsweetではありません。
昔あるところに、SSL通信というのがありました。これは、インターネット上の通信を暗号化し、第三者から見えないようにするためのものでした。SSLはその後、より強力で安全なTLS(Transport Layer Security)というプロトコルに進化しました。
TLS(Transport Layer Security)の登場
TLSは、インターネット上でデータを安全に送受信するためのプロトコルです。SSLの後継として登場し、暗号化の強化、認証の向上、データの完全性確保を目的としています。
TLS暗号スイートの詳細
TLS暗号スイートは、通信を安全に保つための一連のアルゴリズムの組み合わせで構成されています。具体的には、以下の4つの要素が含まれます:
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鍵交換アルゴリズム
サーバーとクライアントが安全に暗号鍵を共有するための方法です。代表的なものには、RSA、DH、ECDHEなどがあります。 -
認証アルゴリズム
サーバーの身元を確認し、データが正しいサーバーから送信されていることを保証します。一般的にはRSAやECDSAが使用されます。 -
暗号化アルゴリズム
データを暗号化して、第三者が内容を読み取れないようにするものです。AESやChaCha20などがよく使われます。 -
ハッシュアルゴリズム
データの整合性を確認し、改ざんされていないことを保証します。SHA-256やSHA-384が一般的です。
TLSの利点と課題
TLSの最大の利点は、インターネット通信を安全に保つことができる点です。これにより、個人情報や機密データが盗まれるリスクを大幅に減らすことができます。しかし、暗号スイートが増えることで、互換性の問題や設定の複雑さが増し、管理が難しくなることもあります。
TLS 1.3以降の違い
TLS 1.3は、TLSプロトコルの最新バージョンで、いくつかの重要な改善が加えられています:
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シンプルな暗号スイート
TLS 1.3では、使用される暗号スイートの数が大幅に削減され、より強力で最新の暗号化アルゴリズムのみが使用されるようになりました。これにより、セキュリティが強化され、設定が簡素化されました。 -
パフォーマンスの向上
ハンドシェイクプロセスが簡略化され、接続確立の時間が短縮されました。これにより、ウェブページの読み込み速度やその他のインターネットアクティビティのパフォーマンスが向上します。 -
前方秘匿性の強化
TLS 1.3では、すべての鍵交換にECDHEが使用されるため、前方秘匿性が強化され、過去のセッションが危殆化しても現在のセッションのセキュリティが保たれます。 -
古いアルゴリズムの廃止
TLS 1.3では、RSAやDHなどの古い鍵交換アルゴリズムが廃止され、より安全なアルゴリズムのみが使用されるようになりました。
まとめ
暗号スイートは、通信を安全にするための一連のアルゴリズムの組み合わせです。TLSはSSLの後継として登場し、データの安全性を確保するために様々な暗号スイートを使用します。しかし、その多様さから設定や管理が難しくなることもあります。TLS 1.2以前は複雑な暗号スイートが多く、セキュリティリスクや互換性の問題が課題でした。
TLS 1.3以降では、暗号スイートがシンプルになり、セキュリティとパフォーマンスの両方が大幅に向上しました。具体的には、古いアルゴリズムの廃止、強力な暗号化アルゴリズムの標準化、ハンドシェイクプロセスの簡略化などが行われました。。