脳全体(ホール・ブレイン)を活かして思考のクセを変える――『WHOLE BRAIN 心が軽くなる「脳」の動かし方』より
https://nhkbook-hiraku.com/n/nf3412275e530
はじめに
こんにちは清水です。
脳科学者のジル・ボルト・テイラーは脳出血で、自分の左脳がシャットダウンするプロセスを体験した。その報告であるTEDと本は大きな影響を与えた。
- TED日本語 パワフルな洞察の発作 https://digitalcast.jp/v/18436/
- 奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき 2012
本記事は彼女の2冊目の著書「WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方 2022」をもとに、脳のクラスなどを作成したものである。この本は少しスピリチュアルに傾斜しすぎと感じられるところもある。
一般に左脳と右脳の特徴は、つぎのように考えられている。
項目 | 左脳 | 右脳 | 備考 |
---|---|---|---|
時間 | 過去、現在、未来 | 現在 | 計画と実行。都市、文明 |
視点 | 部分(木) | 全体(森) | |
機能 | 差異、秩序化(分類、関係) | 同一性、抽象化 | |
思考 | 言語 | イメージ、視覚 | 視覚思考者:アインシュタイン、イーロン・マスク |
分野 | 言語、計算、理論など論理的、概念的な思考 | 音楽、幾何学、発想など芸術的な分野に関連 |
要点
複数の意識、人格
- 分離脳では左脳と右脳にそれぞれ意識が宿る。(てんかん患者の脳梁離断手術)
- 解離性同一性障害では1人に複数の意識が宿る。(1人のなかに13人の意識の報告あり、年齢や性別や運動スキルが異なる)
時間と自己概念と欲望
- 時の流れ(過去、現在、未来)の内、単細胞生物には現在のみ、過去と未来は認識していない。現在のパターンに反応しているのみ。
- 現在を記憶し、過去情報を生存に役立てるようになった。。
- 右脳は現在のみ、左脳は時の流れ(過去、現在、未来)を認識する
- 自己境界はあいまい。ラバーバンド実験。自己境界は記憶から生成される。
- 記憶から自己概念が創造される。自他が創造される。不安がうまれ欲望が生まれる。
右脳は悟りの境地
- 今、ここに集中する
- ワンネス(全ては一つ、自他の区別がない)
- 自己概念の消失。欲望がない。
左脳のシャットダウンプロセス
- 体の境界という感覚が消える (自分が宇宙の広大さと一体になった気がした)
- 記憶の喪失による、安堵と歓び
- 知覚できる全てのものは、今、ここにあるもの。未来や過去は想像できない。何事も急いでする必要なないと感じた。
- 満ち足りた幸福感
- 左脳の「やる」意識から右脳の「いる」意識へ変化
- 図と地がわからなくなる。文字が認識できなくなる。
- 臨死体験と重複する部分あり(https://ja.wikipedia.org/wiki/臨死体験)
言語と左脳
- 多くの人は左脳で言語を処理する
- 右利きの人の90%が左脳で言語を処理し、2%が右脳処理で、8%は両方の脳で処理する
- 左利きの人の約3分の2も左脳で言語を処理する
- ブローカ野(左前頭葉、運動性言語中枢)、ウェルニッケ野(左側頭葉、知覚性言語中枢)
- 左脳 混沌とした世を整理し、分類し、数え、一覧表にし、最終的に、他者と意思疎通するための構造的な言語を生み、すべての物に名前をつける
物理的世界と空
- すべてのものは空間のなかで振動する原子と分子や素粒子からできている。すべては流動している存在。動的なパターンがあるだけ。動的な関係があるだけ。永遠不変な実体はない。
色即是空。諸行無常。空。諸法無我。 - 物理的世界から五感センサーにより情報を取得して、世界像(仮想世界)を創造する
脳のクラス図
「脳のクラス図」をつぎに示す。 このクラス図には、4つの意識、時の流れ、左右の扁桃体、左右の大脳皮質などの要素が含まれる。
進化の物語
- 最初は古い脳(感情組織)として左右の扁桃体があった。人間は感じる動物。脳には「現在」のみがあり過去や未来という概念はなかった。
- つぎに左の扁桃体が「時の流れ」を認識した。過去情報は生存に役立った。
- 新しい脳(思考組織)として大脳皮質が発達した。考えることもできるようなった。
- 左脳は過去情報を記憶として蓄積した。記憶情報より自己と自他の概念が創造された。
- 左脳は「未来」概念を発明した、計画を立て未来を創造した。道具や建物を作り始めた。文明の構築が始まった。
- 左脳は未来への不安を感じるようになった(飢餓など)。不安から貪欲になった。
- 言語が誕生し左脳は言語で考えるようになった。
- 右脳はイメージで考える。右脳は今ココ、で無欲。
4つの意識
個別の脳組織脳に個別の意識がやどり、それぞれ特徴(キャラクター)を持つ。
4つのキャラに「脳の作戦会議」を開かせ、賢明な選択を行う。
意識名称 | 脳組織 | 特徴 |
---|---|---|
キャラ1 | 左大脳皮質 | 現在と過去と未来、自己創造、自他、記憶 |
キャラ2 | 左扁桃体 | 不安、怒り、幸せ(一過性)、記憶 |
キャラ3 | 右扁桃体 | 好奇心、喜び |
キャラ4 | 右大脳皮質 | 今ココ、ワンネス、主体と客体はひとつ、悟り |
4つのキャラの例
意識名称 | ビジネスのやり方 | 体の捉え方 |
---|---|---|
キャラ1 | 利益を上げたい | 体を乗り物と考えている |
キャラ2 | アイデアや細部をもてあそびたい | 体に責任を感じている |
キャラ3 | とにかく楽しいことをしたい | 体をおもちゃだと感じている |
キャラ4 | より善きことをしたい | 体を魂の神殿ととらえている |
おわりに
左脳をオフにできる人がいるらしい。左脳をオフにした右脳だけの世界を体験してみたい。満ち足りた幸福感を感じてみたい。
ロボットと意識と時間に関して謎は多い
- ロボットに自己意識が必要か?、ロボットに不安が発生し、欲望が発生するのか。ロボットに生存本能を持たせるべきなのか?
- 時間の流れの認識がすべてのはじまりなのか?
時間の流れ→記憶→自己→自他→欲望→闘争 - 悟りロボット(右脳ロボット)を実装してみたい (キャラ3、キャラ4)
- ロボットに感情は必要か? 恐怖、不安、喜び。 (キャラ2、キャラ3)
- 未来概念は人が発明したのか?未来概念をロボットに予測として実装する?
今後は数式による意識の定式化を考えて行きたい。
参考URL
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TED日本語 - ジル・ボルト・テイラー: パワフルな洞察の発作
https://digitalcast.jp/v/18436/
世界は脳の幻想?生き残った右脳が見た世界がヤバすぎた話。『私の中の私たち』とは・・・?【脳科学 ジル・ボルト・テイラー 左脳と右脳 都市伝説】
https://www.youtube.com/watch?v=1VhZlZLymZ0
左脳の機能失った脳科学者が発見、凄い脳の使い方
4つのキャラを知れば、なりたい自分になれる
https://toyokeizai.net/articles/-/614620?display=b
参考文献
- WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方 2022 ジル・ボルト・テイラー
- 奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき 2012 ジル・ボルト テイラー
- 決定版 脳の右側で描け 2013 ベティ・エドワーズ
- ぼくが13人の人生を生きるには身体がたりない。: 解離性同一性障害の非日常な日常 2020 haru
- 左脳さん、右脳さん。 ―あなたにも体感できる意識変容の5ステップ 2023 ネドじゅん
- 自閉症だったわたしへ 2000 ドナ ウィリアムズ
- ドナの結婚: 自閉症だったわたしへ 2002 ドナ ウィリアムズ
- 自閉症の僕が跳びはねる理由 2016 東田直樹
- 日経サイエンス 2024年12月号 瞑想の神経科学 「無の境地」をもたらす脳の変化 M. D. サチェット他
参考 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/脳機能局在論#右脳・左脳論
https://ja.wikipedia.org/wiki/分離脳
https://ja.wikipedia.org/wiki/解離性同一性障害
https://ja.wikipedia.org/wiki/大脳辺縁系
https://ja.wikipedia.org/wiki/脳機能局在論#言語野
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブローカ野
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウェルニッケ野
https://ja.wikipedia.org/wiki/ゲシュタルト崩壊
https://en.wikipedia.org/wiki/Jill_Bolte_Taylor
https://ja.wikipedia.org/wiki/臨死体験
https://ja.wikipedia.org/wiki/臨死体験#科学的な仮説・解釈
https://ja.wikipedia.org/wiki/臨死体験#側頭葉てんかん説
https://ja.wikipedia.org/wiki/臨死体験#側頭葉てんかん説への批判
付録
【あなたは4人いる!?】WHOLE BRAIN 心が軽くなる「脳」の動かし方|ジル・ボルト・テイラー より
https://masudabooks.com/2024-05-10/
左右の考えるキャラ1と4 (第3章「脳を支えるチーム」)
機能を知覚して処理する方法がほぼ正反対
左脳の〈考えるキャラ1〉 | 右脳の〈考えるキャラ4〉 | |
---|---|---|
1 | (直列プロセッサ) | (並列プロセッサ) |
2 | 言葉による | 言葉によらない |
3 | 言語で考える | 絵で考える |
4 | 順序だてて考える | 経験にもとづいて考える |
5 | 過去/未来にもとづく | 現在の瞬間にもとづいて考える |
6 | 分析的 | 運動感覚的/身体的 |
7 | 細部に注目 | 総合的に対局を見る |
8 | 違いを探す | 類似点を探す |
9 | 手厳しい | 思いやりがある |
10 | 時間を守る | 時間の流れに没入する |
11 | 個別に | 集団で |
12 | 簡潔/正確 | 柔軟性/弾力性 |
13 | 固定した | さまざまな可能性に柔軟 |
14 | 「私」を重視 | 「私たち」を重視 |
15 | 忙しい(手がふさがっている) | 手が空いている |
16 | 意識的 | 無意識 |
17 | 構造物/整列 | 流動的/流れ |
左右の感じるキャラ2と3
感じ方がほぼ正反対
左脳の〈感じるキャラ2〉 | 右脳の〈感じるキャラ3〉 | |
---|---|---|
1 | 抑圧された | おおらか |
2 | 融通がきかない | オープン |
3 | 用心深い | 危険を厭わない |
4 | 恐怖心にもとづく | 怖いもの知らず |
5 | 厳格 | フレンドリー |
6 | 条件付きで愛す | 無条件で愛す |
7 | 猜疑 | 信頼 |
8 | いじめる | 支える |
9 | 正義を求める | 感謝する |
10 | あやつる | 流れに任せる |
11 | 定石 | 創造的/革新的 |
12 | 個別で | 集団で |
13 | 利己的 | 分かち合う |
14 | 批判的 | 優しい |
15 | 優れた/劣った | 平等 |
16 | 正しい/まちがっている | 文脈によりけり |