私はIT業界で働いていますが、エンジニアではありません。
エンジニアではない人間から一流エンジニアの話に価値があるのか。
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、数年間様々なエンジニアと協働し、彼らの仕事ぶりを間近で見てきた経験から、一つの確信があります。エンジニアではない私でも、「この人は信頼できる」「一緒に仕事がしたい」「新しいプロジェクトを任せたい」と感じさせてくれるエンジニアがいるのです。
プロジェクトオーナーやクライアントなど、技術部門以外の人々にもそのような印象を与えることができれば、自然と新しいプロジェクトの相談が持ち込まれ、仕事の幅が広がっていきます。
では、そんな一流エンジニアたちの共通点とは何でしょうか。
システム構築へのパッション
以前の職場での出来事です。ある日、一人の上級エンジニアがコードレビューの際に部下に言った言葉が、今でも印象に残っています。
お前のコードにはシステム構築へのパッションが全く感じられない
その上級エンジニアは、会社で最も高い評価を受けていた人物でした。自社プロダクトの開発では、現行システムに最適な実装方法を見出し、価値ある新機能を次々と提案していました。請負案件でも、単にクライアントの指示に従うのではなく、「より良い方法を一緒に考えましょう」という姿勢でクライアントと向き合い、上司からの信頼も厚く、クライアントからの指名も多かったです。
この「システム構築へのパッション」という言葉を聞いた時、なぜ彼が優秀な人材なのかわかりました。同じような技術力を持つエンジニアは他にもいましたが、彼ほど「一緒に仕事をしたい」と周囲に思わせる人はなかなかいませんでした。その違いは、まさにこの「パッション」にあったのです。
モノづくりへのパッション
私は子供の頃からレゴの組み立てが大好きでした。バラバラの小さなブロックから素晴らしいものを作り上げる喜び、完成品を見た時の感動、そしてもっと良いものを作りたいという思い。これは、システム構築と本質的に同じだと気づきました。
システム構築をレゴ作りに例えると:
- レゴ作り = システム構築
- レゴブロック = 技術的知識
- 組み立てスキル = プログラミングスキル
- レゴの作品 = ビジネスソリューション
熱心なレゴ好きが持つ以下の特徴は、一流のエンジニアの姿勢とぴったり重なります:
- 新しいパーツや組み立て方を常に学び続ける
- より良い作品を作るために試行錯誤を重ねる
- 完成品に強い誇りを持ち、モチベーションが高い
- 人の心を引くものを作るため、使う人の好みや文化を理解しようとする
実際の現場で、パッションの有無は次のような違いとなっています:
問題解決へのアプローチ
一般的なエンジニア
与えられた要件通りに実装することに注力する
パッションを持つエンジニア
- より効率的な解決方法を常に模索する
- クライアントの本質的なニーズを理解しようとする
- 必要に応じて代替案を提案する
技術習得への姿勢
一般的なエンジニア
必要に迫られた時のみ、新しい技術を学習する
パッションを持つエンジニア
- 技術トレンドを常にウォッチしている
- 休日も技術書を読んだり、個人プロジェクトに取り組んだりする
- 学んだことを積極的にチームと共有する
市場・人間理解への姿勢
一般的なエンジニア
技術的な実装に焦点を当てる
与えられた仕様通りに作ることを重視する
パッションを持つエンジニア
- ユーザーのニーズを深く理解しようとする
- 市場トレンドや競合製品の分析も行う
- 技術がどう人の役に立つかを常に考える
最後に
コーディングは単なるコード作成ではありません。
エンジニアの皆さんは素晴らしいものを生み出すクリエイターです。日々の仕事を「コードを書く作業」として見るのではなく、「モノづくり」として捉え直してみませんか。
自分の興味と合わない案件に携わっている方もいるでしょう。そんな時は、サイドプロジェクトを始めてみるのもいいかもしれません。技術力の向上だけでなく、モノづくりの情熱を保つ良い機会となります。実際、グーグルメールやフェースブックなど、世界を変えるサービスの中には、サイドプロジェクトから始まったものも少なくありません。
これは当たり前のことかもしれませんが、日々の業務に追われて、このパッションを見失っているエンジニアの方も多いのではないでしょうか。
時には立ち止まってこう考えてみてください。あなたの持つコーディングスキルは、人の役に立つ作品を生み出すための創造の力なのです。眠っているあなたのパッションを、もう一度呼び覚ましてみましょう。