英(にかぎらず)単語を覚えるのが苦手という人がなぜか多いらしいので、とりあえず見聞きする覚え方というのと自分が実際にやってきたものをだらだらあげつらい、比較する。
僕の考え(結論)
- 毎日やる(大前提)
- Ankiはかなり無難。ただし「Aから追加しないようにする」「最初に追加しすぎない」「バックログ溜まりそうなら適宜新規枚数減らしたりして調整」「不正解時の簡単さの減少率は0でない値にしておく」あたりをしっかり管理する。
- 学習単語カード数を毎日固定にしたいときなど、自作も良い。出現頻度をいじって擬似SRSをすると効率が良い。
- 単語カードを作るための単語は、単語帳・辞書の色付き見出し・実生活で調べた語などを織り交ぜると良い。
- 毎日大量に単語レビューするなら、難しいことは考えず単語と訳語のペアだけ用意するのでよい。
- 文法などの練習問題も上記メソッドでできてオススメ。
前提
毎日やらないと意味がない。以下のもののうち毎日継続できる自信がある中で最も負荷が高いものをやるのが結局のところ正解なんじゃないかと思う。
考えられる手法
Anki
Ankiはかなり話題に上がるが、使い方に慣れていないとすぐにバックログを溜めて続かなくなったり、一向に終わらなかったりする。個人的には時間に余裕がある人か、長期間学習する計画がある人向け。カスタマイズとしては、不正解の時に振り出しに戻らないよう簡単さの減少率をいじるのがおすすめ。
実は学習ペースを単語を見ている途中に調整できる。というのも新規単語数をちょっといじるだけで相当な負荷の変化があるからである。(4と5の差は大きい、など。そもそも単語で1日5単語新規はペースが遅すぎる点はさておき)
ところでスマートフォンからでもAnkiWebであれば無料でAnkiができる。ちゃんと同期もできるので、オススメである。(ただし、単語カードの並び順に癖がある)
4択などの単語暗記アプリ
少なくとも、4択に成功するだけで単語を暗記した気分になるのはおすすめしない。mikanというアプリはフラッシュカードと4択クイズが交互に続くものである。これならフラッシュカードパートのみを熱心にやりこむことで十分暗記可能である。
多くのアプリは一周したあとのやりこみ要素が弱く、学習しづらい。
自作プログラム
正直、数千語の単語リストをやりこむには1年間程度見積もるのが妥当であるから、最初に数時間かけてプログラムを自分で作った方が手っ取り早い、と思ったので作った。
純粋培養競技プログラマーなのでgithubの使い方やソフトの配布の仕方がわからないので、参考程度で許して欲しい。
とりあえず気にした事は、
- どんな日でも一定量の単語を学習することにする (c.f. Ankiは復習カードが溜まりすぎると学習量が増え続ける)
- 正解すると単語の出現頻度が下がり、不正解だと上がる (擬似SRS)
- 「5単語を1スパンとして全部覚えきったら次の5単語へ」を繰り返し、その日の学習単語を全部周回したら1発で正解できなかったその日の単語の2周目のスパン開始、これを単語がなくなるまで繰り返し (c.f. mikan)
- 全部の単語を1回以上登場させるだけでも何ヶ月もかかるので、忍耐強く毎日ひたすらやり続ける
- 知っている単語を1打鍵でスキップ可能に (c.f. Anki だと2打鍵必要)
とりあえずオススメとしては、まずは簡単に手に入るアプリの何かを数ヶ月やってみて、不足していると思った機能をカバーしたプログラムを自分で実装するのが良いと思う。
単語リストをどう集めるか
これがなかなか困った問題である。英語なら20000語程度までは単語帳というものがあるが、他の言語ではそうもいかない。例えばフランス語の単語帳というのは、知る限りCEFR B2にすら届かないようなものしかない。ましてやタタール語の単語帳など見たことがない。以下、単語の集める方法を列挙していく。
単語帳
英語では単語帳がたくさんあるので、なかなか有効である。おすすめの単語帳というのは僕に聞かれても困るので、他を当たって欲しい。
実際に自分が英単語学習にそのまま使った単語リストは、
- mikan TOEFL / GRE
- Barron's GRE Wordlist 4759 words
の二つである。どうやら mikan TOEFL/GRE はTOEFLテスト英単語3800をだいたい網羅しているように思える。
また、ここら辺はよく評判に上がる:
- TOEFLテスト英単語3800
- 英検1級でる順パス単
Barron's のリストはなかなかに理不尽なので、これをあらかた覚えきっていれば英検1級の単語も多くはカバーできる。一方に含まれているがもう一方には含まれていないものも多く存在するので、物好きな人は両方やっても良いと思う。
ただし個人的には、単語帳で登場する単語は非常に偏っておりこれだけで単語をマスターした気分になるのはよくないと思っている。(例えば、動植物名、料理名、地名など日常生活に深く関係する単語が大幅に欠けている。)
重要単語に印がついた辞書
特に英和辞書、仏和辞書の類は、頻度の高い単語に色やら印やらがついていることが多く、レア度が最小から2番目のものが10000単語程度あったりする。これは分量的にも頻度的にもかなり好都合である。これらを片っ端からAnkiなどに突っ込んでいくことも非常にオススメである。気をつけるべき点としては、
- わかりきっている単語、自明な派生語など(volerを知っていたらvoleur/voleuseな分かる、など)を追加する必要はない。
- あまりに自分の生活と無縁な単語も追加する必要がないと思われる。ローカル料理の名前など、日本語訳すら全く知らないものであれば、それは現地に実際に住んでそのものの存在を学ばないと単語を覚える意味がない。
- Aから順に追加するのは避ける。事前に全ページ番号をプログラム等でrandom shuffleしておいて、その順に追加。
この追加方法は、単語帳に比べて日常生活語に偏りがちである。併用が最も良い。
実際に出会った知らない単語を追加
これもかなりオススメである。なにせ出会った場面と対応づけて覚えられるため、暗記効率が良い。特に多読をしている人なら、こういった単語のストックは多いのではなかろうか。さらに、単語帳も色付き辞書もない言語を勉強する場合は、これしか語彙を増やす方法がない。気をつけるべき点としては、
- その単語の出現頻度がわからない。これが最も大きな問題点である。その本以外で登場する単語なのかどうかが一目見ても全く判別つかないものがあり、これを追加するかどうかは裁量に任せることになる。
- 多読の読書スピードの妨げになる。これも最近深刻に感じてきた。知らない単語を追加するためには、知らない単語に出会い次第辞書で調べる必要が出てくる。電車の中で本を読んだりしている場合、この辞書で調べるというフェーズがあまりに労力がかかる作業となり、非常に読書効率が悪くなる。加えて文脈から文章を読む力がつかなくなる。
Ankiなどに追加する作業
何れにせよこれをやる羽目になる。数日に一回、新規単語ストックが無くなり次第ちびちび追加していくほうがオススメである。残り単語数が多すぎるとなんとなく圧倒されてやる気を失いかねない。
Google Spreadsheetなどを使うとコピペで1手順でカード追加が終わるので、便利である。
風説の考察
Fluent ForeverやClozemaster的な単語カードを作るべきか
redditの r/languagelearning などで最近、単語と訳語を各サイドに書くのではなく、文章中に穴埋めをするスタイルの単語カードを作るのが話題になっている。試していないがこれには懐疑的である。まず単語カードの追加労力が非常に増えることになる。二つ目に、文章の先頭数単語からその文章に対応する穴埋めを覚えてしまうことで、意味と結びつかないことが挙げられる(定期試験のリスニングの勉強で、最初の数単語だけ聞いて後半を全部埋めてしまった経験はないだろうか? 僕はあります)。日本人的に説明すると、文章の先頭「あし」から「ながながしよを ひとりかもねむ」という穴埋めができても、単語の暗記的の世界ではしょうがないということである。
文法の勉強に単語暗記メソッドが使えるか
使えます。
文章(日→英)の暗記でもよいし、文法問題(この文章を直接話法にせよ)的なのでも良い。ただし1日の復習問題数が増えすぎるのには気をつけること。むしろSRS的なものにぶち込んでしまえば毎日強制的に文法の勉強ができる点は、かなり評価できる。
接辞/派生語/対義語/語源などを駆使して覚えるべきでは?
普通に単語見てれば接辞くらい脳内で勝手にパースしないか? と思うのはいろんな言語に触れた結果なのでしょうか。だとしたらいろんな言語に触れることをオススメします。
おまけ: 僕の単語暗記メニュー
mikan (2016.11 ~ 12: GRE, 2017.1 ~ 3: TOEFL)
mikanは全てのレベルを解禁し、全てのレベルを緑にしてからが本番、ひたすら全単語出現レベルからランダムに150個くらい毎日復習を行い、わからなかった単語をちゃんと毎日緑に戻すというのを繰り返すだけで十分効果がある。最終的にほとんど全部覚えたので、もっとレベルが高い単語帳に移動。
Barron's GRE 4759 + Shokubutsu (2017.3~12)
前述の自作プログラムでGRE用(にはオーバーキルと言われる)単語帳暗記。かなり時間がかかったが最終的にはほとんど全部の単語を覚えた。
(記事の要約speaking) (2018.1~12)
単語に満足したがspeakingができなかったので、2018年は1年中 Japan Times のニュース記事の要約などを毎日3記事ずつ欠かさずやってました。すなわち全部で1100本近く話していたことになります。フィールド調査の講義で泊まり込みの時やカナダで夜行列車に乗ってる日までやってたので、異常者だったと思います。
Anki: タタール語文法暗記 (2018.6~)
各文法項目に特化した英語→タタール語ができるようにしています。最近はモチベが低くAnkiデッキを毎日こなしているだけです。
Anki: タタール語単語 (2018.7~)
出会った知らない単語を順次追加メソッドで集めた単語をAnkiで学習。単語を集めるのが難しく、1000単語くらいしかできていません。
Anki: フランス語作文 (2019.3~)
瞬間仏作文のテキストというのがあり、そこに600文あるのでそれを全部追加しました。ほとんど全部覚えてしまい、最近はわずかな文章の復習だけです。
Anki: フランス語単語 (2019.8~)
辞書から単語追加メソッドで最近は単語を学習していっています。現在デッキには1600単語。なぜか語彙がもう結構あるので(英語との共通語彙?)、辞書の赤文字項目全部埋めても3000単語もなさそうな予感がしています。
Anki: フランス語文法 (2020.2~)
文法の練習問題がたくさん詰まった教科書 Advanced French Grammar の練習問題全てを追加してAnkiでやるつもりです。今半分くらい追加していました。文法の練習問題こそAnkiでやるべきだと実感しています。