― プロジェクトコントロールのためのインプットである
■ 「見える化」しているのに、なぜ失敗するのか?
多くのプロジェクトで「見える化」は必ずといっていいほど導入されています。
進捗一覧、課題管理表、ガントチャート…。
情報は整っており、最新に保たれている。
にもかかわらず、プロジェクトが遅延したり、重大な障害が見逃されたりする。
なぜでしょうか?
答えはシンプルです。
見える化=目的になってしまっているからです。
■ 見える化の正しい位置づけとは?
PMBOKでプロジェクトマネジメントは「計画(Plan)」「実行(Execute)」「監視・コントロール(Monitor & Control)」「終結(Close)」といったプロセスで構成されており、
見える化(可視化)とは、「監視・コントロール」のインプット情報でしかありません。
つまり、ガントチャートやKPI一覧は、“判断材料”であり、それ自体に価値があるわけではないのです。
そこからズレや異常を察知し、調整・是正という行動につなげなければ、プロジェクト管理にはなりません。
■ 実際にあった事例:「赤信号」が点灯しても、誰も止まらなかった
あるプロジェクトでは、定例会で毎週「進捗レポート」が全員に共有されていました。
進捗率、課題数、残タスク数なども一覧で見える化されており、一見すると「整っているプロジェクト」に見えました。
しかし実際には、遅延タスクや仕様未確定項目が毎週“赤色”で表示されているにもかかわらず、
「遅れてますね」「頑張りましょう」で終わっていたのです。
つまり、「見える化」はされていたが、統制(コントロール)が行われていなかった。
結果、期日までに要件が確定せず、開発着手ができないまま、スケジュールが総崩れになってしまいました。
■ 対策:「判断・対応まで含めて管理」と定義する
見える化を「終わり」ではなく「始まり」と捉えるには、次のような対策が有効です:
- 見える化資料には「判断の観点」もセットで記載する
例:進捗率90% → OKではなく、「残10%が何か」を明記し、完了可否を判断する視点を加える。
- 毎週、KPIや課題の「変化」を追うルールにする
静的な数値ではなく、「先週との比較」をトリガーにアクションを起こす。
- 赤信号=対応必須としてルール化する
閾値を超えた項目は「即対応」「原因分析と対応案の提示」をセットで報告義務とする。
- 「判断しないPM」は責任放棄とみなす文化をつくる
「見たけど判断しなかった」は、プロジェクトにおいて最も危険な姿勢です。
■ 見える化は「道具」であって「目的」ではない
あなたのプロジェクトでは、見える化した情報に対して何らかの統制アクションが常に行われていますか?
表がある。レポートがある。グラフがある。
――それはただの「道具」にすぎません。
その道具を使って、意思決定し、調整し、リスクを制御していくこと。
それこそが、プロジェクトマネジメントの本質です。
次回予告
第3回:「忙しい」「時間がない」が口癖の人は、PMやPMOには向いていない
忙しさは美徳ではない。コントロールを放棄した瞬間、プロジェクトは傾きはじめる。