― この優先順位をチーム全体で共有できなければ、プロジェクトは必ず炎上する
■ 進捗ばかりを追うプロジェクトは、失敗の兆候
多くのプロジェクトで、毎週の定例会議で「進捗どうですか?」「遅れてませんか?」という話ばかりしていませんか?
進捗はもちろん重要です。しかし、それは“結果”であって、“原因”ではない。
進捗を追ってばかりいても、遅延の根本要因や将来の危機は見えてきません。
では、本当に見るべきは何か?
それが「品質」と「リスク」です。
■ 品質を犠牲にした進捗は、“見せかけ”でしかない
「とりあえずテスト完了にしておいて」
「納期が優先だから、エビデンスはあとでいいよ」
そんな会話が現場で飛び交うようになったら、危険信号です。
品質が伴っていない“進捗”は、むしろプロジェクトの信用を削る行為です。
納期通りにリリースしても、品質問題が出ればクレーム、信頼低下、最悪の場合は契約解除。
つまり、「品質を軽視して進捗を優先する」という判断は、未来に爆弾を投げているのと同じです。
■ 品質よりもさらに重要な「リスク管理」
品質を管理するには、まずリスクを管理しなければならないということを、意外と多くの人が見落としています。
たとえば:
要件定義に“抜け”があれば、いくら品質を担保しても正しい成果物にはならない
テストの設計にバグがあれば、どんなに丁寧に実行しても品質にはならない
ベンダー依存の領域に問題があると、プロジェクト全体がストップする
こうした「構造的リスク」を把握し、先手で対策を打たなければ、品質そのものが成立しません。
■ この優先順位を“全員”で共有せよ
重要なのは、PMやPMOだけがこの優先順位(リスク>品質>進捗)を理解するのではなく、
プロジェクトメンバー全員がその優先順位を腹落ちしている状態にすることです。
それができなければ:
メンバーは進捗を優先し、テストを省略する
リーダーは問題を隠し、遅延を報告しない
品質が落ち、手戻りと炎上を呼ぶ
つまり、「優先順位のズレ」こそが、炎上の火種です。
■ 現場でよくある“優先順位の勘違い”
❌「進捗を守るために、テストの網羅率を下げます」
❌「品質のために、今さら要件の修正はできません」
❌「リスク管理?やること多すぎて、そんな時間ないです」
これらはすべて、「優先順位を間違えた」結果です。
本来は:
✅「進捗より品質、品質よりリスク」
✅「リスクを潰せば、品質が上がり、進捗は自然とついてくる」
この原則に立ち返ることで、プロジェクトは初めて健全に動きます。
■ 原則を徹底しよう
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進捗は結果であって、管理の対象ではない
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品質を犠牲にして納期を守ることは、失敗を先延ばしにしているだけ
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リスクを潰すことで、品質と進捗は自然と安定する
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この優先順位を、PMだけでなくチーム全員に共有せよ
次回予告
第6回:「人」こそが最大のリスク。メンバーはモノではない。感情を制する者がプロジェクトを制す。
技術、工程、スケジュール――それらを動かすのは“人”。
PMに求められる、もうひとつの管理「感情のマネジメント」に迫ります。