方針
二項係数の公式と二項定理について解説する.
二項係数
{}_nC_r={}_nC_{n-r}
→n個から選ばれたr個の組み合わせの総数は,選ばれなかったn-r個の組み合わせの総数に等しい.
{}_{n+1}C_r={}_nC_{r-1}+{}_nC_r
→Aさんを含むn+1人からr人選ぶ組み合わせの総数は,「Aさんを選ぶ時,Aさん以外のn人から残りのr-1人を選ぶ組み合わせの総数」と,「Aさんを選ばないとき,Aさん以外のn人から残りのr人を選ぶ組み合わせの総数」の和に等しい.
r{}_nC_r=n{}_{n-1}C_{r-1}
→n人からr人選んでその中から代表者を一人選ぶ組み合わせの総数と,n人から代表者を一人選んで残りのr-1人を選ぶ組み合わせの総数は等しい.
二項定理
(a+b)^n=\sum_{k=0}^n{}_nC_ka^kb^{n-k}
本問では,二項係数の公式に加え2.6で見た和の公式(平行移動)も用いる.
答案
\begin{align}
{}_nC_r&= \frac{n!}{r!(n-r)!}\\
{}_nC_{n-r}&= \frac{n!}{(n-r)!r!}
\end{align}
より,
{}_nC_r={}_nC_{n-r}
が成り立つ.また,
\begin{align}
{}_{n-1}C_{r-1}+{}_{n-1}C_r&= \frac{(n-1)!}{((r-1)!(n-r)!}+\frac{(n-1)!}{r!(n-1-r)!}\\
&= \frac{r(n-1)!+(n-r)(n-1)!}{r!(n-r)!}\\
&= \frac{n!}{r!(n-r)!}\\
&= {}_nC_r
\end{align}
が成り立つ.次に,数学的帰納法によって二項定理を証明する.
(i)n=1の時,
(a+b)^1={}_1C_0a^0b^1+{}_1C_1a^1b^0=a+b
(ii)n=mの時,
(a+b)^m=\sum_{k=0}^m{}_mC_ka^kb^{m-k}
が成り立つと仮定する.両辺に(a+b)を掛けて,
\begin{align}
(a+b)^{m+1}&= (a+b)\{\sum_{k=0}^m{}_mC_ka^kb^{m-k}\}\\
&= \sum_{k=0}^m{}_mC_ka^{k+1}b^{m-k}+\sum_{k=0}^m{}_mC_ka^kb^{m-k+1}\\
&= a^{m+1}+\sum_{k=0}^{m-1}{}_mC_ka^{k+1}b^{m-k}+b^{m+1}+\sum_{k=1}^m{}_mC_ka^kb^{m-k+1}\\
&= a^{m+1}+\sum_{k=1}^m{}_mC_{k-1}a^kb^{m-k+1}+b^{m+1}+\sum_{k=1}^m{}_mC_ka^kb^{m-k+1}\\
&= a^{m+1}+b^{m+1}+\sum_{k=1}^m({}_mC_{k-1}+{}_mC_k)a^kb^{m-k+1}\\
&= a^{m+1}+b^{m+1}+\sum_{k=1}^m{}_{m+1}V_ka^kb^{m-k+1}\\
&= \sum_{k=0}^{m+1}{}_{m+1}C_ka^kb^{m-k+1}
\end{align}
より(m+1)の時も成立.以上より,帰納的に二項定理が証明された.
参考文献
- 『現代数理統計学の基礎』(久保川達也 著)