はじめに
製造現場において、PLCなどの機器のデバッグやモニタリング作業を行う際、
接続ケーブルの長さによる移動制限や、物理的な作業負荷は地味ながらも確実にストレスの原因となります。
特に「PCをPLCに接続したまま、離れた場所のセンサやアクチュエータを確認したい」といったシチュエーションでは、
ケーブルの長さがネックとなり、現場とPCを何度も往復する必要が生じます。
本記事では、そうした問題を解消するために筆者が構築した、
**モバイル型の無線デバッグボックス「ICF(仮称)」**について、その構成と実運用の所感を紹介します。
解決したかった課題
PCがLANやUSBケーブルで機械に接続されているため、自由に動き回れず作業効率が低下していた
ケーブル延長では対応できない距離があり、デバッグやトラブル対応の即応性が著しく損なわれていた
特に、PLCとPCをオンライン接続した状態でセンサ確認が必要な際に、物理的な往復移動のコストが高かった
解決策:「ICF(仮称)」の構成
使用構成機器(抜粋)
無線LANルータ:GL.iNet製 [GL-AR300M-Ext]
↳ Wi-Fi環境を構築し、PCと無線接続
スイッチングハブ:ロジテック製 [LAN-SW03PSWE]
↳ PLCやHMIなどのLAN接続機器の中継
USBデバイスサーバ:サイレックス製 [DS-510]
↳ USB機器を無線でPCに接続可能に
モバイルバッテリー:Anker製 [PowerCore Essential 20000]
↳ 5V/2A出力で長時間駆動が可能(約14〜15時間)
筐体:タカチ電気工業製 [BCAP162113T]
↳ 可搬性・防塵性を考慮した樹脂ボックス
その他使用部材(簡易記載)
USB A-A ケーブル(25cm、1m)
USB A-microB 三股ケーブル
USB A-DCジャック変換ケーブル
USB変換コネクタ(KAUMO KM-UC210 / KM-UC179)
防水USBコネクタ(ANMBEST製)
LANケーブル(Cat6 フラット15cm)
Panasonic製のウォールプレート、LANジャック類
運用フロー
モバイルバッテリーを接続し、ICFを起動
ノートPCをWi-Fi経由でICFに接続
GX Works2/3、または任意のCOMポートソフトを起動
USB接続が必要な場合は、SX Virtual Link(サイレックス製)でデバイス割り当て
実運用で得られた効果
PC片手に機械周辺を移動しながらのデバッグが可能に
リアルタイムモニタリング中のセンサ確認・修正作業がスムーズに
古いPLC(例:三菱 Aシリーズ、富士電機 F120、東芝 T3 など)も
USBシリアル変換器を介せば使用可能 → 汎用性が非常に高い構成
筆者はこの構成を 5年間継続運用 していますが、
安定した電波環境下では「PLC全書き込み」や「RUN中書き込み」も問題なし。
安全性を優先するならモニタ専用と割り切るのも選択肢です。
従来構成との比較:USBの価値
従来の「Wi-Fiアクセスポイントのみの設置」と比較すると、
本構成では USB機器との接続を無線で維持できる 点が大きな強みです。
たとえば、HMIとPLCがイーサネットケーブルで直結されていて、
制御盤内にHUBが存在しない構成でも、
このボックスを経由すれば、物理USB接続と同じ感覚 でモニタ操作が可能です。
要するに、LANポートもUSBポートも、「自分のPCの物理位置」に縛られず使える のです。
運用上の注意点と工夫
USBデバイスサーバにはわずかな遅延の可能性があります
↳ 通信頻度の高い用途では注意(ただし実用上は問題なし)
Wi-Fiの干渉対策として、チャンネルの変更や電波調整が有効
樹脂ボックスは防塵性・電波透過性を考慮し、
外部端子から電源・接続ケーブルを扱えるように加工しています
おわりに
この「ICF(仮称)」は、市販の部材と少しの工夫で構築できるにもかかわらず、
現場作業のストレスを大きく削減してくれる実践的なツールです。
「ケーブルからの解放」は、思った以上に技術者の集中力と判断力を取り戻してくれます。
同じような課題に直面している方へ、少しでも参考になれば幸いです。