なぜアクセシビリティと向き合うのか
「アクセシビリティ」という言葉からは、障害者への対応というイメージを持たれることが多いですが、それだけではありません。
アクセスできる人を増やすため
アクセシビリティが向上すれば、アクセスできる人の母数が増えます。
アクセシビリティへの配慮を行う事は、障害者や高齢者だけでなく、あらゆる人に恩恵をもたらす可能性があります。
さまざまなデバイスに対応するため
デバイスの進化は早い上、この先どのようなデバイスがでるのか予想することは困難です。ウェアラブルデバイス、画面が極めて小さいデバイス、画面を持たないデバイスが登場する可能性もあります。
以前より見落とされている典型例は「印刷」です。モノクロで印刷されることも考慮し対応していくことが必要になります。
特定のデバイスしか想定せずに構築していくと、多用なデバイスに対応できません。アクセシビリティへの配慮を行うと、さまざまなデバイスに対応でき、この先のデバイスへの対応も容易になります。
デバイスの特性でアクセスできないケース
- 情報にアクセスできない
- 通信速度が遅くて画像が表示されない、動画が再生されない
- モノクロで印刷したら、色分けされたグラフの意味がわからなくなった
- 周囲が騒がしくて音声がはっきり聞こえない
- 音声の解説があるが、音がだせないためわからない
- 操作できない
- 画面の小さい端末で、小さなボタンがうまく押せない
- タッチパネルで「マウスポインタを重ねる」という操作ができない
- 環境が対応していない
- iPhoneやiPadでアクセスしたら、Flashコンテンツが表示されない
- 「プラグインが必要」と表示がでたが、インストールが禁止されている
SEOのため
サーチエンジンのクローラーがコンテンツにアクセスできるようになる
画像だけで構成されたページがあったとき、その画像に適切な代替テキストが指定されていなければ、サーチエンジンのクローラーはその画像を「読む」ことが困難になります。サーチエンジンのクローラーは、全盲のユーザと同じような環境に置かれていることになる。
コンテンツの意味が伝わるようになる
サーチエンジンはコンテンツを解析して、キーワードの重みづけを行なっています。
ページタイトルや見出し、リンク、強調箇所などがサーチエンジンに伝わらないと、適切な重みづけができなくなり、うまく検索できなる可能性があります。
実際、SEOの基本的な部分は、アクセシビリティ向上の施策と重なります。
ユーザビリティの向上、改善のため
ある人にとっては「使いにくいが、何とか使える」という状況が、他の方にとっては「全く使えない」という状況になっていることがあります。アクセシビリティの向上で「全く使えない」という状況を解消すると、他のユーザにとっての「使いにくい」状況も改善されることになります。
アクセシビリティ向上の施策は、ほとんどの場合、ユーザビリティも向上させます。両者は重なる部分が多く、ある施策がアクセシビリティのためのものなのか、ユーザビリティのためのものなのかは区別できないこともあります。
ただし、アクセシビリティの向上だけを行えば十分にユーザビリティを確保できるわけではありません。
ユーザ体験の向上、改善のため
アクセスできなかった。というのもひとつの体験です。
情報が得られなかった、操作できなかった、理解できなかったというのはユーザ体験としては最悪です。アクセシビリティが向上すれば、最悪の体験を回避し、それを成功体験に変えられる可能性があります。
規格への対応のため
2016年4月に施行された「障害者差別解消法」では、民間の事業者に対しても、対応を求める努力規定があります。
諸外国においても、国や公共団体に対するアクセシビリティガイドラインの尊重義務を課しているケースは多数あります。
2000年のシドニーオリンピックでは、全盲のユーザが公式サイトにアクセスできなかったため、オーストラリアの障害者差別禁止法に違反しているとして裁判となりました。
取り組みをアピールするため
アクセシビリティに配慮していない企業より、配慮している企業に良い印象を持つ人は多い。また、サイトのアクセシビリティを第三者に評価され、ランキングという形で公開されることもあります。
アクセシビリティに配慮したサイト作りは、ユーザや第三者の印象を向上することにも繋がります。
取り組みをアピールするための適切な方法は、アクセシビリティ方針や試験結果を公開することです。実際にアクセシビリティを確保した上で、きちんと情報を公開することがアピールに繋がります。