先日、会社の決算報告会でApple Watchアプリ開発の技術発表をおこないました。
無事に終えることができて、さらにお褒めの言葉もいただいたので、調子にのってこの記事を書いています。
この記事では、わたしが発表するまでに実践したことや注意点をまとめています。これから発表するかた、発表してみようかなというかたのご参考になれば幸いです。
わたしが発表するなんて……
実践にはいるまえに、まずは準備です。
「人前で発表する」ということは、とてもハードルが高く感じてしまいます。
わたしのように人前で話すことが苦手だと、そのハードルの高さはエベレスト級です。発表と聞くだけで、「いやいや、わたしが発表するなんて……」と尻込みしてしまいます。
そこで、わたしはハードルをのりこえるために、つぎのような準備をしてきました。
1.小さくはじめる
2.失敗してもいい場で試す
3.練習する
1.小さくはじめる
まずは「小さくはじめる」です。
山登りの初心者がいきなりエベレストに登らないように、発表初心者がいきなりスティーブ・ジョブズのようなプレゼンテーションをすることはできません。
そこでオススメなのが、小さなプレゼンLT(ライトニングトーク)です。
LTは、Lightning(稲妻)の名前のとおり、5分〜10分くらいの短い発表です。時間が短いので、準備や発表の負担もすくないです。
2.失敗してもいい場で試す
つぎは、「失敗してもいい場で試す」です。
いきなり社運をかけたビッグプロジェクトの発表をする、なんてことになると、顔面蒼白で手は汗まみれです。
まずは、失敗してもいい場で試してみましょう。
たとえば、会社の勉強会のように、身内だけが集まる場なら失敗もしやすいです。もしくは、発表の練習会をするのもオススメです。発表の練習をしたい人で集まって、めいめいに発表をして、それぞれアドバイスをします。
そのような場所で経験を積み重ねて、すこしずつなれていきましょう。
3.練習する
最後は「練習する」です。
個人的には、これが一番効果があります。
「練習をした」という事実が自信となり、本番での落ち着きを支えてくれます。落ち着いていれば、大きな失敗をすることもありません。
準備が長くなりましたが、ここから先は実践編です。
資料をつくるための前準備 〜いきなり資料を作らない〜
最初のころにやってしまって失敗だったなーと感じたことは、「いきなりKeynoteで資料をつくる」です。
考えをまとめるまえに資料をつくると、目のまえの資料に思考が引っ張られてしまいます。その結果、話の流れがよくわからない、断片的な発表になってしまいました。
そのため、いまはつぎのような手順で資料の準備をすすめています。
ターゲットを考える
まずはターゲットを考えます。
発表は、発表を聞いてくれる誰かにむかってするものです。
とてもあたりまえなことですが、いざ発表をするとなると、発表をするということだけに目が向いてしまい、それを聞いてくれる人にまで考えがおよばなくなってしまいます。
ですので、まずはターゲット、つまり発表を聞いてくれる人のことを考えましょう。
どんな人なのか、どういうことに興味を持っているのか、逆にどういうことには興味を持たないのか。初心者向けなのか、上級者向けなのか。技術発表でしたら、相手はエンジニアなのか、それともデザイナーなのか、はたまた営業なのか。などなど、様々な切り口があります。
上級者エンジニア向けでしたら、ディープな技術ネタでもいけますが、初心者向けではそうはいきません。また、営業向けでしたら、商談でつかえそうな技術ネタを盛り込めば喜んでもらえます。
このように、まずはターゲットを考えて、発表の方向性をおおまかに決めておきましょう。
思いつきを書き散らかす
おっと、まだKeynoteを開くのは早いです。
つぎは思いつきを書き散らかします。
先ほど考えたターゲットを頭に思い浮かべながら、思いつくネタを書き散らかします。書く場所はなんでもかまいませんが、あとでまとめるために一覧性が高いほうがオススメです。
アナログなら、付箋やルーズリーフがあつかいやすいです。
デジタルなら、エディタやアウトライナーでもかまいませんし、EvernoteやScrapboxもいいですね。手に馴染んだ方法で書き散らかしてください。
このときのポイントは、思いついたことは否定せずに、とりあえず書くことです。
思いつきを整理する
思いつきがたくさん生まれたら、つぎは整理します。
整理するときのポイントは、
- まとめる
- 動かす
- 並び替える
です。
たとえば、「デザイン」や「通信」というカテゴリごとにまとめてみたり、まとめた物を近づけたり遠ざけたりして動かしてみたり、順番を並び替えてみたりします。
そうやっているうちに、脳の神経回路がつながるかのように、思いつき同士がつながってネタへと成長します。
流れをつくる
短時間の発表でなにかを伝えるためには、話の流れが大事です。流れが淀んだり逆流したりすると、せっかくの内容が伝わりにくくなるので、しっかりと流れをつくりましょう。
まずは、ターゲットを思い浮かべて、話のゴールを決めます。話のゴールとは、「発表で一番伝えたいこと」と言い換えてもいいでしょう。
つぎに、ゴールに向かうための道しるべを置いていきます。道しるべは、発表を聞く人たちをゴールへと導くための、話のポイントです。ポイントが決まれば、1ページにひとつずつ、ポイントをひとことで書いていきます。
1ページにたくさんのポイントがあると、話の焦点がぼやけてしまいます。ですので、なるべくポイントは1ページにひとつ、もしくはふたつくらいまでにしておきましょう。
資料をつくる
資料をざっくりとつくる
ようやくKeynoteの出番です。
さきほどのポイントがページごとのタイトルになります。
タイトルを補足するための内容(文字や絵など)を追加していきましょう。あとで詳しく説明しますが、この段階ではざっくりとつくるだけにします。
文字や絵が多すぎると内容がぼやけてしまいます。また、資料をつくるときは、つい過剰に説明を書いてしまうので、ちょっと説明不足かな? と思うくらいシンプルにしましょう。
資料はあくまでも発表を補助するためのものです。ポイントだけを書いて、あとはあなたの口で説明しましょう。
発表者ノートに話す内容を書く
資料をざっくりとつくったら、つぎは発表者ノートに話す内容を書きます。
発表者ノートには、原稿を書くつもりで話す内容をすべて書きましょう。たとえば、冒頭のあいさつや、途中で仕込むネタや、最後の「ご静聴ありがとうございました」も書きます。
発表者ノートを「声に出して」読む
資料と発表者ノートができたので、つぎは練習にはいります。
まずは、発表者ノートを「声に出して」読みます。この段階では、まだ時間は気にしなくてかまいません。ゆっくりでいいので、流れを意識してください。
ここで重要なのは、「声に出して」読むことです。
頭の中で読むだけだと、なんとなくうまく話せているような気がしてしまいます。じっさいに声に出すことで、話がつまるところや、話す内容の違和感に気づくことができます。
もうひとつ重要なのは、話の流れと資料の流れを合わせることです。
たとえば、話の流れがA→Bなのに資料はB→Aになっている、ということがあります。そういったところを補正していきましょう。
資料と発表者ノートをつくりこむ
さきほど、資料をざっくりとつくったのは、声に出して読むことで補正をするためです。
ここまでくれば、話の流れと資料の流れがうまくあっています。
声に出して読むことで気がついた修正点を盛り込みながら、資料と発表者ノートをつくりこみましょう。
練習する
さあ、いよいよ練習です。
時間をはかりながら声に出して練習する
さきほどは、時間を気にせずに読みあげましたが、今回は時間をはかりながら練習しましょう。
まずは、暗記する必要はありません。発表者ノートを見ながら、声に出して読みあげていきます。できれば、実際の発表を意識して、緩急をつけたり、資料を指差したりというような動きも練習しましょう。
時間が少なかったり、オーバーしたりするなら、資料と発表者ノートを見直して、内容を追加したり削ったりして調整します。
少しずつそらで話す
何度か繰り返して時間の調整ができたら、少しずつそらで話すようにします。
細かい部分は気にせず、そのページで伝えたいポイントと、全体の流れを意識しましょう。
発表者ノートをつくりましたが、その通りに話す必要はありません。少しくらい話が飛んでしまっても大丈夫です。一番伝えたいポイントは、資料に書いてあるのですから。
あとはひたすら時間の許す限り練習をしましょう。繰り返しているうちに、だんだんと自分が話しやすい形に収束していきます。
いざ発表本番
わたしは人前で話すのが苦手なので、どうしても緊張してしまいます。
しかし、前述したように、「練習をした」という事実が自信となり、本番での落ち着きを支えてくれます。
それに、ここまできたらジタバタしても仕方ありません。せっかくなので発表を楽しみましょう。
One More Thing
最後におまけです。
練習しても、どうしても詰まりやすいところがあります。
そういうときは、メモを用意しておきます。発表者ノートに書いておいてもいいですが、iPhoneなどの小道具に書いておいて話の流れで自然と手元に用意しておくのもいいです。
また、時間配分に自信がないときは、発表用資料の片隅に書いておくといいです。
6ページ目で5分なら、6ページ目のスライドの下の端に小さく5と書いておいて、発表中にさりげなくチェックします。
あとは、可能でしたら事前に現地で確認しましょう。
プロジェクターで資料をうつして、文字や絵の色合いが見にくくないか、文字が小さくないかチェックします。
また、席の配置によって見えにくい箇所がないか(後ろの席だと、前の人の頭で下の方が見えないことがある)もチェックしておくといいでしょう。
追記 聞き手とのコミュニケーション
コメントをいただいたので追記しました。コメントありがとうございます!
聞き手とのコミュニケーションもプレゼンの大事な要素です。
内容にもよりますが、問いかけなどで聞いてる人を巻き込むことで、より一体感をつくることができます。
また、問いかけることで、聞くモードから考えるモードに切り替えることができます。話の流れにうまく組み込んで、より深く印象に残るようにしましょう。
ただし、コミュニケーションをとると想定外の進みかたをすることがあります。慣れないうちは、想定外のことが起きると頭が真っ白になってしまったり(体験談)、時間をオーバーしてしまう(体験談)ので、あるていど慣れてから取り組むのがおすすめです。
終わりに
それでは、ハッピープレゼンライフを!
ご静読ありがとうございました。