(2023-12-25追記)
GitHub上で関数の引数の順序を変更したため、本記事のプログラムを変更しました。
はじめに
TypeScript Advent Calendar 2023 の12日目が空いていたので初めて参加します。
学生実習で使用するWebアプリケーションを自作するためにTypescript言語で常微分方程式を解く必要があり、実装したコードを独立させて他の用途に使用できるようにしたので公開します。以下の内容は基本的にGitHubのSolveOdeリポジトリのREADME.mdファイルの内容そのものです。
参考URL
基本的にyondaさんのJavascriptで8次のルンゲクッタに記載されているプログラムを参考にさせて頂きました。
"本記事のコード自体はお好きにコピペをどうぞ"と書かれていたため、改変した上でMIT Licenseで公開しています。
主な特徴
- ソルバー関数(rk45, dopri5, dop853)の引数に常微分方程式の関数で使用するパラメータを取れるように変更した
- 変更前はパラメータをグローバル変数として設定する必要があったため
- 常微分方程式を数値的に解く関数
SolveOde
内で指定した終了時間まで値を求めるようにした-
開始時間 =+ 間隔
のようにプログラムしていると、小数の丸め誤差によって終了時間のデータが欠損してしまう - Rust言語の
ode_solvers
にはこの不具合がある
-
ソルバー関数
- rkf45
- ルンゲ=クッタ法 (Runge-Kutta method)
- dopri5
- ドルマン=プリンス法 (Dormand-Prince method order 5)
- dop853
- ドルマン=プリンス法 (Dormand-Prince method order 8)
使い方
Javascriptで8次のルンゲクッタに記載されている例
常微分方程式
- $\dfrac{dx_{0}}{dt} = x_{1}$
- $\dfrac{dx_{1}}{dt} = -2\gamma x_{1} - x_{0}$
- パラメータ値: $\gamma = 0.15$
- 初期値: $x_{0} = 1, x_{1} = -0.15$
必要な型および関数のインポート
import { TypeFuncRes, TypeParam } from "./solve_ode";
import { SolveOde, rkf45, dopri5, dop853 } from "./solve_ode";
TypeParam
およびTypeFuncRes
ともnumber[]
のように定義しているため、型定義をインポートしなくてもnumber[]
とすれば大丈夫です。
常微分方程式の定義
// Definition of ODE
function func(x: number[], param: TypeParam, _t: number): TypeFuncRes {
return [
x[1], // dx0/dt = x1
-2 * param[0] * x[1] - x[0] // dx1/dt = -2 * param[0] * x1 - x0
];
}
- 引数
-
x
: 常微分方程式で使用する変数の配列 -
param
: パラメータ値の配列TypeParam
(実態はnumber[]
) -
_t
: この関数内では使用せず(ソルバー関数内で使用)
-
-
パラメータ値を引数として渡すようにした。
- もともとのコードではグローバル変数としてパラメータ値を設定する必要があったため、複数のシミュレーションをする際に不具合があった
- パラメータ値を引数として取るように変更したことでソルバー関数 (rkf45, dopri5, dop853) もパラメータ値を引数として取るように変更した(少し面倒でした)。しかしその結果、意図しない挙動を防ぐことができた
- 時間を示す引数を
_t
とした。- 関数内で時間を示す変数を使用していないためトランスパイル時に警告が出るが、アンダーバーをつけることでそれを回避した
パラメータ値の設定および解析
const param = [0.15];
const res = SolveOde(
func, // ODE
dop853, // solver
param, // parameters
0, 20, 0.5, // start, end, step
[1, -0.15] // initial values
);
console.log(res)
SolveOde
関数を使用して値を求めます。今回は刻み幅を0.5としました。
- 引数
-
func
: 定義した常微分方程式 -
solver
: ソルバー関数 (rkf45, dopri5, dop853) -
param
: パラメータ値(要素数は常微分方程式に使用された数) -
start
: 開始時間 -
end
: 終了時間 -
step
: 刻み幅 -
amt
: 初期値の配列(要素数は常微分方程式の数)
-
- 返り値は
[number[], number[][]]
- 要素1: 時間の配列
number[]
- 要素2: "値の配列(要素数は常微分方程式の数)"の配列
number[][]
- 要素1: 時間の配列
実行
今回はwebpackでバンドルしてdist/main.js
として出力するように設定しています。各自の環境に合わせて変更して下さい。
# download from repository
npm install
npm run build # bundle using webpack
node dist/main.js
コンソールへの出力です。実際は得られた結果をもとにグラフを描画したりしますが、今回は省略します。
[
[
0, 0.5, 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 3.5,
4, 4.5, 5, 5.5, 6, 6.5, 7, 7.5,
8, 8.5, 9, 9.5, 10, 10.5, 11, 11.5,
12, 12.5, 13, 13.5, 14, 14.5, 15, 15.5,
16, 16.5, 17, 17.5, 18, 18.5, 19, 19.5,
20
],
[
[ 1, -0.15 ],
[ 0.8166746082016955, -0.557692153141863 ],
[ 0.4732068547304446, -0.7817998448337315 ],
[ 0.06999369577839351, -0.796942079229001 ],
[ -0.29296876631077856, -0.6287833580492583 ],
[ -0.538764437154819, -0.3410884006508845 ],
[ -0.6278299171850139, -0.015917620080742143 ],
[ -0.5617466546837617, 0.2675784748910966 ],
[ -0.377150240555385, 0.45074951486228504 ],
[ -0.1325182233446417, 0.5059244391806383 ],
[ 0.108167684175686, 0.4383875833898941 ],
[ 0.29073509407040543, 0.2805868154348402 ],
[ 0.38177114949700197, 0.0809725652433621 ],
[ 0.37332759332299786, -0.10924683419221558 ],
[ 0.2811808583957149, -0.24813196381575087 ],
[ 0.13794049725821486, -0.31125652705202045 ],
[ -0.01670960459052124, -0.2948214440471942 ],
[ -0.14601910585511502, -0.21364539900084717 ],
[ -0.22411810217094255, -0.09520237647253792 ],
[ -0.24038331741250435, 0.02838757207966796 ],
[ -0.19972966488592925, 0.12830826343618923 ],
[ -0.11932845288765788, 0.18513879181538354 ],
[ -0.02299611928126133, 0.19196035473015535 ],
[ 0.06514625783123669, 0.15418786007944127 ],
[ 0.12619953247723414, 0.08662081192625241 ],
[ 0.1500560037190719, 0.008771314213723642 ],
[ 0.13647291184074287, -0.060228604569482015 ],
[ 0.09375352427278882, -0.10592388418793355 ],
[ 0.03566892159044637, -0.12117145286237656 ],
[ -0.022434601049273587, -0.10674576554678848 ],
[ -0.06734406337492452, -0.07005987649144976 ],
[ -0.09068673306717923, -0.02255531249078119 ],
[ -0.09015953186782914, 0.023460392555516397 ],
[ -0.06920720620196623, 0.05773255117331912 ],
[ -0.03543850777137111, 0.07410487021245042 ],
[ 0.0016837355195970214, 0.07134826438697033 ],
[ 0.03325233441033073, 0.052753978829039525 ],
[ 0.05286346976044077, 0.024755649705834232 ],
[ 0.05772395744096257, -0.004971149328666756 ],
[ 0.048783370558624965, -0.029427008029129665 ],
[ 0.0299968094632241, -0.043785872625261305 ]
]
]
denoを使用する場合
Typescriptランタイムのdenoを使用する場合には以下のように拡張子.ts
をつけるだけで大丈夫です。
import { TypeFuncRes, TypeParam } from "./solve_ode.ts";
import { SolveOde, rkf45, dopri5, dop853 } from "./solve_ode.ts";
ファイルがあるフォルダ(今回はts
)に移動して
deno main.ts
で同じ結果が得られます。