3.1 データリンクの役割
- データリンクとは、直接的に接続されているコンピュータ間の通信を可能にするプロトコル(または具体的な通信手段を表す用語を意味する)
- データリンクはネットワークの最小単位
3.2 データリンクの技術
3.2.1 MACアドレス
- MACアドレスは、データリンクに接続しているノードを識別するために利用される
- MACアドレスは48ビットの長さを持ち、3~24ビットはベンダ識別子、25~48ビットはベンダ内での識別子が割り当てられている
3.2.2 媒体共有型のネットワーク
- 通信媒体(通信、メディア)の使い方という観点から見ると、ネットワークは媒体共有型と媒体非共有型に分けることができる
- 媒体共有型のネットワークは、通信媒体を複数のノードで共有するネットワークで、同じ通信路を使ってデータを送受信する制御も行い、通信の優先権を制御する
- 媒体共有型のネットワークで優先権を制御する仕組みとして以下がある
- コンテンション(CSMA)方式
- 早い者勝ちで通信路を使用してデータを送信する
- トークンパッシング方式
- トークンと呼ばれるパケットを巡回させ、このトークンで送信権を制御する(トークンを持っているステーションだけがデータを送信することができる)
- コンテンション(CSMA)方式
3.2.3 媒体非共有型のネットワーク
- 通信媒体を共有せずに占有する方式で、ステーションはスイッチに直接接続され、スイッチがフレームを転送する
- 現在広く利用されているイーサネットで主流
- スイッチが故障すると接続されたすべてのコンピュータ間の通信が不可能になってしまうという欠点もある
- 半二重通信と全二重通信
- 送信をしている間受信ができるかどうか
- CSMA/CD方式は半二重通信、スイッチとツイストペアケーブルを使う方式は全二重通信が可能になる
3.2.4 MACアドレスによる転送
- 同軸ケーブル上で利用されるイーサネットなどの通信媒体を共有する方式では、同時に一つのホストしかデータを送信できないため、媒体非共有型で利用されていたスイッチ技術をイーサネットでも利用できるようにする機器(スイッチングハブ、イーサネットスイッチ)が登場した
- イーサネットスイッチでは、フレームの宛先MACアドレスを見て、転送表(フォワーディングテーブル)からどのインターフェースから送り出すかを決める
- 転送表はパケットを受け取った時に、送信元のMACアドレスと受け取ったインターフェースの対を転送表に書き込む自己学習によって作られる
- スイッチの転送方式にはストア&フォワード方式と、カットスルー方式があり、前者はFCSをチェックしてから転送を行い(エラーフレームは転送しない)、後者はMACアドレスが分かり次第転送を行う(遅延が短いがエラーフレームも転送する)
3.2.5 ループを検出するための技術
- ブリッジでネットワークを接続する際、ループを作ると、フレームが増殖して最悪ネットワークをメルトダウンさせてしまう可能性がある
- スパニングツリー
- スパニングツリーは、BPDUというパケットを各ブリッジが交換し、通信に使用するポートと使用しないポートを決定し、ループを消すように制御する方式
- 障害時には使用していないポートを使って通信ができるなどのメリットがある
- リンクアグリゲーション
- LANスイッチ間を複数のリンクで接続することで、耐障害性の向上と高速化を実現
- LLDP(Link Layer Discovery Protocol)
- ネットワークにつながっている機器の情報を収集する仕組み
- ホスト名、機器情報、ポート/インターフェース情報を定期的にマルチキャストMACアドレスに送信
3.2.6 VLAN(Virtual LAN)
- スイッチのポートごとにセグメントを分けて、ブロードキャストのトラフィックが流れる範囲を区切ることで、ネットワークの負荷を軽減したり、セキュリティを向上させたりできる
- VLANを拡張し、異なるスイッチを跨いだセグメントを構築できるようにしたものをタグVLANという
3.3 イーサネット(Ethernet)
- イーサネットは他のデータリンクに比べて制御の仕組みが単純なため、普及しやすく、現在では最も互換性と将来性を備えたデータリンクといえる
3.3.1 イーサネットの接続形態
- 当初は複数端末で1本の同軸ケーブルを共有する媒体共有型の接続が一般的だったが、現在では、端末とスイッチ間を占有のケーブルで接続して、イーサネットプロトコルで通信する形態が一般的になっている
3.3.2 イーサネットにはいろいろな種類がある
- 用途に合わせて、通信ケーブルや通信速度が違う数多くの仕様がある
3.3.3 イーサネットの歴史
- 当初のイーサネットでは、アクセス制御方式としてCSMA/CDが採用されており、半二重通信が前提とされていたが、ATMで培われたスイッチ技術の進歩とカテゴリ5のUTPの普及により、媒体非共有でスイッチと接続されるようになり、高速化への障壁がなくなった
3.3.4 イーサネットのフレームフォーマット
- 1と0を交互に並べた8オクテットのプリアンブルと呼ばれるフィールドでイーサネットフレームの始まりを示す
- 最後の1オクテットは、末尾が11のSFD(Start Frame Delimiter)と呼ばれるフィールドで終わる
- フレーム本体の先頭に来るイーサネットのヘッダは合計14オクテット
- Ethernet
- 宛先MACアドレス(6オクテット)
- 送信元MACアドレス(6オクテット)
- タイプ(2オクテット)
- データ(46~1500オクテット)
- FCS(4オクテット)
- IEEE802.3 Ethernet
- 宛先MACアドレス(6オクテット)
- 送信元MACアドレス(6オクテット)
- フレーム長(2オクテット)
- LLC(3オクテット)
- SNAP(5オクテット)
- データ(38~1492オクテット)
- FCS(4オクテット)
- Ethernet
- タイプにはデータ部で運んでいるプロトコルを表す番号が格納される
- FCSは、フレームが壊れていないかどうかチェックするフィールド
- フレーム全体を特定のビット列(生成多項式)で割った余りを格納する
- 受信側でも同じ計算をしFCSの値が同じになったらフレームが正しく届いたと判断する
- VLANを利用する場合は、送信元MACアドレスとタイプの間に4オクテットのフィールドが追加される
- タイプ(16ビット)
- 優先度(3ビット)
- CFI(1ビット)
- VLAN ID(12ビット)
- データリンク層を細かく分けると、媒体アクセス制御と論理リンク制御に分けられる
- 媒体アクセス制御は、イーサネットやFDDIなどのデータリンクごとに決まっているヘッダ制御のこと
- 論理リンク制御とはイーサネットやFDDIなどのデータリンクの違いによらず、共通になっているヘッダや制御のこと
- LLCとSNAPは論理リンク制御のヘッダ
3.4 無線通信
3.4.1 無線通信の種類
分類 | 通信距離(例) | 企画化団体など | 関連団体や技術名称 |
---|---|---|---|
短距離無線 | 数m | 個別 | RF-ID |
無線PAN | 10m前後 | IEEE802.15 | Bluetooth |
無線LAN | 100m前後 | IEEE802.11 | Wi-Fi |
無線MAN | 数km ~ 100km | IEEE802.16, IEEE802.20 | WiMAX |
無線RAN | 200km ~ 700km | IEEE802.22 | - |
無線WAN | - | 3GPP | 3G, LTE, 4G, 5G |
3.4.2 IEEE802.11
- 無線LANプロトコルの物理層とデータリンク層の一部(MAC層)を定義した規格
- CSMA/CA
- 無線LANが利用する電波は有限(媒体共有型)のため、衝突を回避する必要がある
- CSMA/CAは、アイドル状態を確認し、ランダムな時間待ってからデータ送信を開始することで衝突を回避する仕組み
3.4.3 IEEE802.11b、IEEE802.11g
- 2.4GHz帯の電波を利用し、最大11Mbps(IEEE802.11b)、54Mbps(IEEE802.11g)までの伝達速度を実現する規格
3.4.4 IEEE802.11a
- 5GHz帯の周波数を利用し、最大54Mbpsまでの伝達速度を実現する規格
3.4.5 IEEE802.11n
- IEEE802.11g、aをベースに複数のアンテナを同期させて通信するMIMOという技術を採用することで高速化を実現
3.4.6 IEEE802.11ac
- 11nよりも大幅に使用する帯域幅を増やし、ギガスループットを実現する規格
3.4.7 IEEE802.11ax(Wi-Fi 6)
- 伝達速度の改善でなく、周波数の利用効率を向上させ、接続する端末それぞれの平均スループットを向上し、全体のパフォーマンスを向上させるもの
3.4.8 無線LANを使用する場合の留意点
- 無線LANの規格では、盗聴や改ざんを防御するために送受信されるデータの暗号化などが定められている
- 現在はAESベースのWPA2が広く普及している
- 無線LANの使う電波が他の通信機器と干渉し、動作が不安定になることもある点に注意
- WPA2は、Wi-Fi Allianceの認証プログラムであるWPA( Wi-Fi Protected Access)を拡張し、IEEE802.1iの必須部分を実装した規格
- WPA3はWPA2のセキュリティ機能をさらに拡張した規格
3.4.9 WiMAX
- WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)は、マイクロ波を使って、企業や自宅への無線接続を行う方式
- DSLやFTTHのようなラストワンマイルを無線で実現する方式の1つ
- WiMAXは、無線MAN(Metropolitan Area Network)に属し、大都市圏をエリアとする広範囲なワイヤレスネットワークをサポートする
3.4.10 Bluetooth
- BluetoothはIEEE802.11b/gなどと同じ2.4GHz帯の電波を使って通信する規格
- データ伝達速度はバージョン2で3Mbps
- 通信可能な距離は、電波強度によって最大1m、10m、100m、400m
- 通信可能な端末は原則として最大8台
- 携帯電話やスマートフォン、キーボードやマウスなど小型で電気容量の小さな機器を対象としている
- Bluetooth4.0では、低消費電力・低コストを実現するBluetooth Low Energy(BLE)が策定され、省電力が必要とされるIoTデバイスなどで利活用されている
3.4.11 ZigBee
- 家電などに組み込むことを前提に、低消費電力で短距離の無線通信を実現する規格
- 最大65556個の端末間を無線通信で繋ぐ
3.4.12 LPWA(Low Power, Wide Area)
- 明確な定義はないが、IoTなど低消費電力で1回の送信データ容量が大きくなく、長距離のデータ通信が可能な通信ネットワークのこと
- 無線局免許が不要なものと必要なものがある
- LoRaWAN
- 標準化団体LoRa Allianceによって使用が公開されているオープンな企画
- 免許不要の920MHz帯を利用
- 送信データは11バイト
- 最大10km程度の長距離データ通信が可能
- 自営でネットワーク構築可
- Sigfox
- 仏Sigfox社が開発する独自企画
- 免許不要の920MHz帯を利用
- 送信データは12バイト
- 最大10km程度の長距離データ通信が可能
- 自営でネットワーク構築不可
- NB-IoT
- 携帯電話のモバイル通信技術(LTE)を利用したLPWA
- 通信速度は上り62kbps、下り21kbpsと低速で半二重通信
3.5 PPP(Point-to-Point Protocol)
3.5.1 PPPとは
- 1対1でコンピュータを接続するためのデータリンクプロトコル
- PPPだけでは通信できず、何らかの物理層が必要になる
- 電話回線やISDN,専用回線(専用線)、ATM回線などで利用されている
- PPPoEはイーサネットのデータ部にPPPのフレームを格納して転送する方式
3.5.2 LCPとNCP
- PPPではデータ通信を開始する前にPPPレベルでコネクションを確立する
- 認証や暗号化などの設定を行う
- PPPの機能のうち、上位層に依存しないプロトコルをLCP(Link Control Protocol)、上位層に依存するプロトコルをNCP(Network Control Protocol)という
- 上位層がIPのNCPはIPCP
- LCPはコネクションの確率や切断、パケット調の設定、認証プロトコルの設定(PAPかCHAPか)、通信品質の監視をするかどうかなどの設定を行います
- IOCPでは、IPアドレスの設定やTCP/IPのヘッダを圧縮するかどうかなどのやりとりをする
- PAP(Password Authentication Protocol)はPPPのコネクションの確立時に1回だけIDとパスワードをやりとりする方法
- 平文で送信されるため、盗聴やコネクション確立後に回線を乗っ取られるなどの危険性がある
- CHAP(Challenge Handshake Authentication Protocol)は毎回パスワードが変更されるOTP(One Time Password)を使用して、盗聴の問題を防ぐ
- コネクション確立後も定期的にパスワードを交換することにより、通信相手が途中から入れ替わっていないかをチェックすることができる
3.5.3 PPPのフレームフォーマット
- PPPのデータフレームのフォーマット
- フラグ(1オクテット)
- アドレス(1オクテット)
- 制御(1オクテット)
- タイプ(2オクテット)
- データ(0~1500オクテット)
- FCS(4オクテット)
- フラグ(1オクテット)
- PPPはHDLCを参考に作られている
- HDLCではフレームの区切りを0111110(フラグシーケンス)で表現するため、フレーム内部では1が6つ以上連続することは許されない
- 0の挿入や削除、FCSの計算をCPUが処理するため、PPPはコンピュータに大きな負荷をかける方式といえる
3.5.4 PPPoE(PPP over Ethernet)
- インターネット接続サービスによっては、イーサネットを利用してPPPの機能を提供するPPPoEが利用されている場合がある
- 通信回線をイーサネットであるようにエミュレートする
- PPPoEによりイーサネット上でコネクションを管理すれば、PPPの認証機能などを利用してプロバイダが顧客の管理をしやすくなる
3.6 その他のデータリンク
3.6.1 ATM(Asynchronus Transfer Mode)
- データをヘッダ5オクテット、データ48オクテットのせると呼ばれる単位で管理するデータリンク
- 回線の占有時間を短くすることにより大容量のデータを効率よく転送できるようにしており、主に広域を結ぶネットワークで利用されてきた
- ATMはコネクション型(通信開始前に必ず通信回線の設定をする)
- 従来の電話に似た形式だが、ATMでは同時に複数の相手と通信回線を接続することができる
- 固定的に回線を接続する方法もありPVC(Permanent Virtual Circuit)という
- PVC↔SVC(Switched Virtual Circuit)
- ATMにはイーサネットやFDDIのような送信権の制御はないため、全てのコンピュータが同時に大量のデータを送信すると、ネットワークが混雑して輻輳状態(ルーターやスイッチがパケットやセルを処理しきれなくなった状態)になる
- これを防ぐため、ATMには帯域をきめ細かく制御する機能が備えられている
- 同時多重と非同時多重
- 複数の通信機器を束ねて1つの回線で接続する方法を考える
- TDMは特定の時間単位でデータを区切り、宛先ごとに順番に送信する
- 回線の順番にスロットにデータを入れる
- スロットの空きができてしまい回線の利用効率が悪い
- ATMはTDMを各調理料して通信回線の利用効率を向上させる
- 到着した順番にスロットにデータを入れる
- どの通信か識別するため、送信側では5オクテットのヘッダをつける
- VPI(Virtual Path Identifier)、VCI(Virtual Channel Identifier)という識別子で識別する
- ただしヘッダがオーバーヘッド隣、その分だけ実際の通信速度が低下する
- ATMのセルは1つでは48オクテットのデータしか運べないため、データ部にIPヘッダやTCPヘッダを入れてしまうと、上位層のデータをほとんど送れない
- このため通常はATMを単独で利用するのではなくAAL(ATM Adaption Layer)と呼ばれる上位層とともに利用する
- AALはATMから見ると上位層、IPから見ると下位層
- IPのパケットは、最終的には最大で192個のセルに分割されて送信されるが、このうちの1つでも失われるとIPパケットは破壊されてしまう
- ATM網を利用する場合にはセルが1つ失われても最大で192個全てのセルを再送することになり、ATMの大きな問題となっている
- 特にATMには送信権を制御する仕組みがないため、ネットワークが輻輳する可能性が高くなる
- ATMネットワークを構築する時は末端のネットワークの帯域の合計がバックボーンの帯域よりも小さくようにするなど、セルの喪失が発生しにくいようなネットワークを作ることが重要
3.6.2 POS(Packet over SDH/SONET)
- デジタル信号を光ファイバーでやり取りするための物理層の規格であるSDH(SONET)上でパケット通信を行うためのプロトコル
- SDH(Synchronous Digital Hierarchy)は、電話回線や専用線などで、信頼性の高い光伝送ネットワークとして広く利用されている
- SDHの伝送速度は、51.84Mbpsを基準として、その倍数になる
3.6.3 ファイバーチャネル(Fiber Channel)
- 高速なデータチャネルを実現するデータリンク
- 133Mbps~4GBpsのデータ伝送速度を実現
3.6.4 iSCSI
- パソコンなどにハードディスクを接続するための標準規格であるSCSIを、TCP/IPネットワーク上で利用する規格
- SCSIのコマンドとデータをIPパケットに包含し、データの送受信を行う
- パソコンなどの内蔵SCSIハードディスクと同様に、ネットワーク上に直結された大規模ハードディスクを利用することが可能になる
3.6.5 InfiniBand
- ハイエンドサーバー向けに作られた超高速インターフェース
- 高速、高信頼性、低遅延
- 2Gbps~数百Gbpsに及ぶ伝達速度を実現
3.6.6 IEEE1394
- AV機器を結ぶ家庭向けのLANで用いられるデータリンク
- 100~800Mbps以上のデータ伝送速度を実現
3.6.7 HDMI
- High-Definition Multimedia Interface
- 1つのケーブルで高品質な映像と音声をデジタル伝達できる規格
- 著作権保護機能を備えている
3.6.8 DOCSIS
- ケーブルテレビ(CATV)でデータ通信を行うための業界標準規格
- ケーブルテレビの同軸ケーブルにケーブルモデムを接続し、イーサネットとの変換を行うための仕様を標準化
3.6.9 高速PLC(高速電力線搬送通信)
- 家庭内やオフィス内にある従来の電力線(電灯線)を利用して数MHz~数十MHzの帯域を使い、数十Mbps~200Mbpsの伝送速度を実現
- もともと通信を行う前提ではない電力線に高周波の信号を流すため、電波の漏洩による影響が懸念されている
データリンク名 | 媒体の伝送速度 | 用途 |
---|---|---|
イーサネット | 10Mbps~1000Gbps | LAN、MAN |
802.11 | 5.5Mbps~400Gbps | LAN〜WAN |
Bluetooth | 下り2.1Mbps、上り177.1kbps | LAN |
ATM | 25Mbps、155Mbps、622Mbps、2.4GHz | LAN〜WAN |
POS | 51.84Mbps~約40Gbps | WAN |
FDDI | 100Mbps | LAN、MAN |
Token Ring | 4Mbps、16Mbps | LAN |
100VG-AnyLAN | 100Mbps | LAN |
ファイバーチャネル | 133Mbps~4Gbps | SAN |
HIPPI | 800Mbps、1.6Gbps | 2台のコンピュータ接続 |
IEEE1394 | 100Mbps~800Mbps | 家庭向け |
3.7 公衆アクセス網
- 公衆通信サービスとは、電話のようにNTTやKDDI、ソフトバンクなどの通信事業者に料金を払って通信回線を借りる形態
3.7.1 アナログ電話回線
- 固定電話回線を利用して通信を行う
- コンピュータをアナログ電話回線で接続するためには、デジタル信号とアナログ信号を変換するモデムが必要
- モデムによる通信速度は56kbps程度と低速で、現在はほとんど利用されていない
3.7.2 モバイル通信サービス
- 時代とともに高速化、高度化がはかられ、現在は4G-LTEが主流
- ほぼパソコンと同等の使い勝手を実現
- 通信速度も実効速度で数Mbps~数十Mbps程度のデータ通信を行える
3.7.3 ADSL
- 既存のアナログ電話回線を拡張利用するサービス
- 近年の電話網はデジタル化されており、電話回線を通る信号は電話局の交換機を通る時に64kbps程度のデジタル信号に変換されてしまう
- このため、64kbps以上の伝送速度で通信するのは原理的に不可能
- ADSLでは電話機と電話局の交換機の間の回線を利用する
- 間にスプリッタと呼ばれる分配器を設置し、音声周波数(低周波)とデータ通信用の周波数(高周波)を混合・分離する
- 回線速度は、通信方式や電話回線の品質、電話局からの距離などによって異なるが、ISP→家庭・オフィスが1.5Mbps~50Mbps、家庭・オフィス→ISPが512kbps~2Mbps程度
3.7.4 FTTH(Fiber To The Home)
- 高速の光ファイバーを、ユーザーの自宅や会社の建物内に直接引き込む手法
- 光ファイバーをONUという装置で、光を電気信号に変換してからコンピュータやルーターに接続するのが普通
- FTTHを利用すると、常時安定した高速通信が可能になる
- マンションや会社、ホテルの建物の直前まで光ファイバーを利用し、そこから先は建物内の配線を利用する形態をFTTBと呼ぶ
- 自宅周辺まで光ファイバーを利用し、周辺の住宅で共同で利用するような形態をFTTCと呼ぶ
- 光ケーブルは通常は送信用と受信用で別々の2本をペアとして利用するが、FTTHでは簡易WDMを用いて送信用信号と受信用信号の両方を1本のケーブルで賄う
- 各家庭へと引き込まれる光ケーブルは、ONUとOLTの間にある光スプリッタで分断される
- ダークファイバー
- 社会インフラ関連の事業者などが施設した光ファイバーケーブルのうち、使用していない光ファイバーを借り受けられるサービスが提供されている
- このようにして借り受けた光ファイバーをダークファイバーという
- 両端に利用者が必要と思う機器を接続すればどのような通信も可能
- 完全に占有しているので、第三者が侵入できる可能性を限りなく低くできる
3.7.5 ケーブルテレビ
- 本来、電波を使うテレビ放送を、ケーブルを使って放送するサービス
- 電波による地上放送はアンテナの設置状況や周りの建物によって受信状態が悪くなる場合があるが、ケーブルテレビではそのような影響が少ないため、鮮明な画像でテレビ放送を楽しむことができる
- ケーブルテレビを使ったインターネット接続サービスでは、放送に使われていない空いているチャネルをデータ通信専用に利用する
- ダウンストリームはテレビ放送と同じ周波数帯を利用し、アップストリームは放送では利用されていない低周波数帯を使用するため、下りに比べ上りのデータ転送速度が低いという特徴がある
- インターネットの接続は、加入者宅からケーブルモデムで信号変換され、ケーブルテレビ網を通り、さらにISPに接続される
- ケーブルテレビ網ではDOCSISという企画を利用しており、現在では最大320Mbpsの通信サービスが行われている
3.7.6 専用回線(専用線)
- インターネット利用者の急速な増加により、専用回線サービスの低価格化、広帯域化、多様化が進み、現在様々な専用線サービスが提供されている
- 主なサービスとしてはイーサネット専用線サービスで1Mbps~100Gbpsのサービスが提供されている
- 専用回線の接続形態は必ず1対1になる
3.7.7 VPN(Virtual Private Network)
-
離れた地域を結ぶVPNサービスには、IP-VPN、広域イーサネットがある
-
IP-VPN
- IPネットワークにVPNを構築する
- IPネットワーク上にMPLS技術を用いてVPNを構築するサービスを通信事業者が提供しているものがある
- MPLS(Multiprotocol Label Switching)はラベルと呼ばれる情報をIPパケットに付加して通信を制御する
- このラベルを、顧客ごとに異なるように設定し、MPLS網を通過する際に、このラベルで宛先の判断を行う
- 通信事業者が提供しているIP-VPNサービスを利用する以外に、企業などが独自にインターネット上にVPNを実現する方法もある
- この場合はIPsecを使ってVPNを実現する方法が一般的
- IPsecによりVPN上での通信時にIPパケットの認証、暗号化を行い、インターネット上で閉じたネットワークを構築する
-
広域イーサネット
- 通信事業者が提供する離れた地域を結ぶイーサネット接続のサービス
- IP-VPNがIP層での接続サービスであるのに対して、データリンク層であるイーサネットを用いたVLANを利用するもの
- IP-VPNと異なりイーサネットをそのまま利用するので、TCP/IP以外のプロトコルも利用できる
- 広域イーサネットでは、通信事業者が構築するネットワークのVLANを、利用企業が専用で利用する形になる
- データリンク層を利用しているため、不要なパケットを流さないように利用者が工夫した上で運用することが必要になる
-
SD-WANサービス
- WANを構成するMPLSやインターネット、4G LTEなどを取りまとめ、仮想的なWANリンクを構成するサービス
3.7.8 公衆無線LAN
- Wi-Fi(IEEE802.11bなど)を利用したサービス
- ホットスポットと呼ばれる電波受信可能エリアを駅、飲食店などの人の集まる場所に設置し、無線LANインターフェースを持ったラップトップ型のコンピュータやスマートフォンなどから接続する
- 公衆無線LANを利用する際には、セキュリティ保護(暗号化)の有無を確認する、通信するWebサイトなどが暗号化されているかなど、注意が必要となる
3.7.9 その他の公衆通信サービス(X.25、フレームリレー、ISDN)
- X.25
- 電話網の改良版的なネットワーク
- 1つのポイントから複数のサイトに同時接続可能なサービスで9.6kbpsまたは64kbpsの伝送速度を持つ
- フレームリレー
- X.25を簡素化して高速化したネットワーク
- 各通信業者から64kbps~1.5Mbpsのサービスが提供されていた
- ISDN
- Integrated Services Digital Network
- 電話、FAX、データ通信など、いろいろな通信を統合して扱うことのできる公衆ネットワーク