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『システム運用アンチパターン』の輪読会が結構うまく回った話

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これは SRE Advent Calendar 2022 18日目のエントリです。

はじめに

どうも、SREをしている@toro_ponzです。今回は今年オライリーから発売された『システム運用アンチパターン』がとても良書だったのでその紹介も兼ねて、実施した輪読会について触れられればと思います。
4月発売なので今更、という感じかもしれませんが今年を振り返ると言う意味も込めて。

形式

本書は発売する前から気になっていたのですが、発売後にも良書らしいとの噂を伺ったので、目次だけざっと見て所属するSREチームでの輪読会を提案しました。
私自身ちゃんとした輪読会というものを今まで経験したことがなかったということもあり、かなり探り探りの実施でしたが、できるだけ意味のあるものにすることを意識していました。
ざっくり形式は下記の通りです。

  • 隔週開催、30分
  • 1回につき一つの章
  • 各人好きな章を選び、実施までにスライドにまとめておく
  • 前半はLT、後半はそれを聞いての議論
  • 可能であれば具体的なアクションに落とし込む

輪読会と言っていますが、実際の実施時間には全員で黙って読む時間は取りませんでした。書籍をぱらぱらとめくりながらLTを聞く形式です。

良かった点

1. チームの現状にマッチした内容だった

輪読会実施においていくつかの書籍候補があったのですが、この本を選んで良かったなと感じています。一言で表すと チームの現在の状態にマッチした内容だったから です。

本書は各章ごとにシステム開発および運用に関係するアンチパターンを上げながら、それを解決する手法としてDevOpsの観点を織り交ぜて言及しています。GoogleのSRE本などが 理想論 的な本であるとするならば、この本はかなり 足元の泥臭い点 に目を向けた書籍です。わたしたちSREチームも各種理想論・ベストプラクティスを追い求め日々業務をしていますが、足元の課題が見えてないことに輪読会を通じて気づくこともいくつかありました。

具体的には 第10章「情報のため込み:ブレントだけが知っている」 を読んで、「確かに誰が何に詳しいか正確にわかっていない部分もあるので、可視化しよう」となったりしました。メルカリではスキルマップと呼ばれるものがあるみたいです。参考にしたい。
https://engineering.mercari.com/blog/entry/20221104-souzoh-skill-map/

理想論的な書籍でも悪くないとは思うのですが、実際の業務内容や目標に則していた方が業務時間を割く意義も高いですし、初回の選定書籍としてはとても良かったと思っています。

2. 各章ごとに独立した構成だった

本書は基本的にどの章から読んでもある程度内容がわかるようになっていて、1章から順番に読み進めなくても良い形式になっています。各人が好きな章を選び好きな順番で話すことができました。特に今回は担当者が事前に読んで資料化する輪読会だったため、この構成はかなり相性が良かったです。輪読会向きの書籍でした。

むしろ連続した書籍の場合はどのように進めるのが良いのでしょう。コメントお待ちしています。

3. SREチーム外にも共有できる章があった

我々のSREチームはいわゆる プロダクトSRE 的な側面が強いチームで、サーバーサイドエンジニアやWeb/アプリエンジニアに各種DevOpsの知見共有をし、組織全体の文化醸成を推し進めることも重要な業務の一つです。本書はSREに特化した書籍ではないため、私たちSREチームだけの知見にするには勿体無い章および資料もいくつかありました。そういった内容についてはより広い会議体でLTをし、知見共有することができました。

具体的には 第2章「パターナリスト症候群」 の「2-1. 安全装置ではなく障壁を作ってしまう」で言及されている 歴史的経緯によって承認プロセスは増え続けるがそのほとんどは形骸化して意味を成していない 点などについて開発責任者を含めて議論をし、実際に無駄な承認プロセスを減らすことに繋がりました。

それ以外にも、テストについて書かれた 第5章「最後の味付けとしての品質」 やデプロイ頻度等に言及した 第8章「業務時間外のデプロイ」 などもチーム外に共有し議論に役立てました。

4. ネクストアクションに落とし込むまでを輪読会にした

全ての会ではありませんが、議論を踏まえて実際に改善が行われたものもありました。輪読会がただの自己満足で終わらないようにちゃんと議論から集約する時間も必要だと感じました。
担当者が事前に「議論したい点」を議事録に書いていたり、参加者LTを聞きながら追記したりして議論したのち、実際の業務で改善できる箇所がないか顧みました。足元のケーススタディが多い本書だからこそうまく回ったと考えていますが、次回以降にもうまく活かせるようにしたいです。

改善点

ここからは改善点ですがあまり大した内容でもないので箇条書きで。

  • 実施時間
    • 30分だと短い場合があった、特にネクストアクションを話し合う時間が少ない
    • とはいえ1時間だと時間が余ること必死な気もするので要検討
  • 実施されないネクストアクション
    • これしたいね、で終わっているものもちらほらあった
    • ポストモーテムのアクションと同じように、タスクトラッキングツールで継続的に追うことを検討

総評

『システム運用アンチパターン』自体は多くのエンジニアに読んでほしいものですが、文化醸成を担うSRE、特に私と同じ プロダクトSRE の皆様には是非読んでほしい一冊です。特に 第11章「命じられた文化」 は必読です。組織における価値観・指針の重要性のみならず文化醸成のための採用にまで言及されており、目から鱗と感じるのと同時に文化醸成は一筋縄ではいかないという現実も知ることができます。

また、輪読会についてはかなり初回にしてはうまく回ったかな、と思っています。改善点もいろいろ見つかりましたので、それを踏まえて次回につなげて輪読会文化を醸成したいところです。次の輪読会で読む本はまだ決まっていませんが、『SREの探求』や『チームトポロジー』なども視野に検討中です。もしオススメの書籍などござましたらコメントいただけると幸いです。

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