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OpenAM を活用し 学認のサービスを Entra ID で利用する

Last updated at Posted at 2024-08-19

0. はじめに

 OpenAM14.5 では学認との連携機能を強化し、学認の IdP として運用しやすくなりました。特に、送信属性同意機能や、SP の自動登録、属性値のスクリプトによる生成など、Shibboleth IdP が持つ機能と同等の機能を強化しています。

 OpenAM は一つのバージョンを長期にサポートすることにより、バージョンアップを気にせずに長期間運用いただけます。また、ソフトウェアを RPM パッケージで提供しており、同梱の Tomcat を含めシステム全体を RPM コマンドなど O.S.と同等の Linux スキルで運用とサポートが可能な製品となっています。

EntraID-OpenAM_html_fbb86b46.png

 以上のように OpenAM 単体で 学認IdP として構築可能ですが、Microsoft Entra ID(以降 Entra ID) を利用している組織では、学認IdP として構築した OpenAM と Entra ID を連携することで Entra ID へサインインで GakuNin RDM などの学認サービス の利用が可能となります。

0.1. OpenAM 単体で 学認IdP 機能を持つ認証基盤を構築した構成例

 OpenAM のアダプティブリスクや OTP/FIDO2 などの多様な認証機能を組み合わせ、OpenAM 単独で 学認IdP 機能に加えてSAML / OpenID Connect / WS-Federation / 代理認証機能の対応により、広くクラウドサービス、オンプレミスアプリケーションの認証基盤となります。

EntraID-OpenAM_html_d582d220.png

0.2. Entra ID と OpenAM を連携した認証基盤の構成例

 OpenAM は Entra ID のユーザー認証を利用し、学認サービス、クラウドサービス、オンプレミスアプリケーションの認証基盤となります。

EntraID-OpenAM_html_980ff28f.png

 本ドキュメントでは、Entra ID と OpenAM を SAML 連携し、OpenAM の認証に Entra ID ユーザー認証を利用するための設定手順を解説しています。

 OpenAM を 学認IdP として構築する手順は、以下のドキュメントを公開しておりますので参考にして下さい。

 OpenAM 学認設定ガイド

1. OpenAM の認証を Entra ID で行う設定

 OpenAM では認証連鎖とよばれる機能で多要素認証を構築できますが、これを SAML を利用して Entra ID の認証が通れば認証完了とする構成を想定します。

EntraID-OpenAM_html_64b3d692.png

設定の流れは以下の通りです。

  1. OpenAM に SAML サービスプロバイダーを作成
  2. Entra ID に OpenAM をエンタープライズアプリケーションとして登録
  3. OpenAM に Entra ID を 外部アイデンティプロバイダーとして登録

SAML連携の仕様

Entra ID と OpenAM の間でアカウントを紐付ける値(共通の値)をUPNとメールアドレスを用いる想定です。
※別の値を用いて連携することも可能ですが、ここでは設定手順が少ない例を選択しています。

1.1. OpenAM SAML サービスプロバイダー(SP)の作成

ここでは OpenAM を SAML のホスト SP として構成します。

ユーザー認証をするレルム(ここでは最上位のレルム)を開き、共通タスクから「SAMLv2 プロバイダの作成」を選びます。
EntraID-OpenAM_html_e5904645.png

「ホストサービスプロバイダの作成」を選びます。
EntraID-OpenAM_html_df39a9b1.png

「名前」の値は現在アクセスしているURLから生成されていますが、必要であれば変更します。
トラストサークルは既存のものがあれば選択し、無い場合は、任意の文字列を指定し新規作成します。
トラストサークルは Entra ID(IdP) と OpenAM(SP) が所属できれば、名称には特に制限はありません。
※ロードバランサー経由のアクセス等で、ユーザーがアクセスするURLが、現在設定中の URL と異なる場合はベースURLを変更して設定すると、エンドポイントの URL 生成に使われるので便利です。右上の「設定」ボタンで作成されます。
EntraID-OpenAM_html_945c97fd.png

作成が完了すると下のダイアログがでます。
リモートアイデンティティープロバイダの作成は、Entra ID 側の SAML 設定が終わっていないので、「いいえ」を選択し、Entra ID の設定時にメタデータを取得してから作成(設定)します。

作成が終わりましたら、上メニューの「連携」を開き、「エンティティープロバイダ」リストから作成した SP を開きます。
EntraID-OpenAM_html_19bf2f8d.png

「表明コンテンツ」タブの「NameID の書式」を選択します。
EntraID-OpenAM_html_4e2472fe.png

「NameID の書式リスト」内の、urn:oasis:names:tc:SAML:1.1:nameid-format:emailAddress を残して他を削除し、ページ右上又は右下の「保存」を選び設定保存します。
EntraID-OpenAM_html_eb56bd3.png

次に「表明処理」タブを開き、「属性マッパー」の設定をします。
「現在の値」の「*=*」を削除します。
「新しい値」に http://schemas.xmlsoap.org/ws/2005/05/identity/claims/name=mail を追加します。

Entra ID と OpenAM のユーザーの紐づけは、「http://schemas.xmlsoap.org/ws/2005/05/identity/claims/name」として user.userprincipalname が送信されてきて、それを OpenAM ユーザーの mail と突き合わせることで実現しています。

※NameID 値はユーザーの紐づけには利用していません。

EntraID-OpenAM_html_12a92003.png

次に下へスクロールし、「自動連携」の設定を以下のように設定します。

有効 チェック
属性 http://schemas.xmlsoap.org/ws/2005/05/identity/claims/name

ページ右上又は右下の「保存」を選び設定保存します。
EntraID-OpenAM_html_6c77452f.png

 
次に「サービス」タブの一番下までスクロールし「表明コンシューマサービス」の設定をします。
EntraID-OpenAM_html_e68b2e62.png

表明コンシューマーサービスのデフォルト値を「HTTP-Artifact」ではなく、「HTTP-POST」にチェック入れます。

既定で入っているURLに赤字のように「Auth」を追加して「AuthConsumer」と変更して保存します。

HTTP-POST https://openam.example.co.jp:443/openam/Consumer/metaAlias/sp

↓下のように変更

HTTP-POST https://openam.example.co.jp:443/openam/AuthConsumer/metaAlias/sp

※これはSAML2認証モジュールを動作させる際にのみ必要な追加設定です。
EntraID-OpenAM_html_a9e54f4.png

1.2. Entra ID(IdP) への OpenAM エンタープライズアプリケーションの登録

Entra ID側にSAML連携するOpenAMに作成したSAML SPをエンタープライズアプリケーションとして登録します。

「Microsoft Entra 管理センター」にログインし、「エンタープライズアプリケーション」の画面より「+新しいアプリケーション」から追加します。
EntraID-OpenAM_html_c28e810e.png

「Microsoft Entra ギャラリーを参照する」のリストには適用できる雛形が無いので、「独自アプリケーションの作成」をえらび、以下の値で作成します。

  • アプリケーション名  OpenAM
  • ギャラリーに見つからないその他のアプリケーションを統合します(ギャラリー以外)
    EntraID-OpenAM_html_b9edfaa7.png

アプリケーションのシングルサインオン設定を選びます。
EntraID-OpenAM_html_1d451ab4.png

「シングルサインオン方式の選択」では「SAML」を選びます。
EntraID-OpenAM_html_94a91262.png

「SAMLによるシングルサインオンのセットアップ」画面が開きます。

①基本的な SAML 構成画面

「基本的な SAML 構成」の右の「✐ 編集」を押し、前の章で作成した OpenAM SP の情報を元に登録します。
EntraID-OpenAM_html_620e9c9.png

ここで OpenAM(SP)の作成で利用した以下の値をそれぞれ設定します。

識別子(エンティティID) https://openam.example.co.jp:443/openam
応答 URL(Assertion Consumer Service URL) https://openam.example.co.jp:443/openam/AuthConsumer/metaAlias/sp

EntraID-OpenAM_html_4e79c9b3.png

②属性とクレーム

「属性とクレーム」の Entra ID から送られる「一意のユーザー識別子(名前ID)」は既定で「user.userprincipalname」となっており変更の必要はありません。

※NameID 値はユーザーの紐づけには利用しておりません。

Entra ID と OpenAM のユーザーの紐づけは、「追加の要求」部分「http://schemas.xmlsoap.org/ws/2005/05/identity/claims/name」として user.userprincipalname を送信する部分で行っています。
Entra-SAML-NameID.png

要求の管理の内容

名前識別子の形式とソース属性の設定は、既定で以下内容であり変更の必要はありません。

  • 名前識別子の形式 電子メールアドレス(既定)
  • ソース属性 user.userprincipalname(既定)
    Entra-SAML-Request.png

③SAML証明書

Entra ID(IdP) メタデータを「フェデレーション メタデータ XML」のダウンロードリンクよりダウンロードします。
※このメタデータは加工してから OpenAM へ読み込みますので、加工内容は読み込み工程に記載しています。
EntraID-OpenAM_html_38aeb56e.png

Entra ID(IdP) エンタープライズアプリケーションへのユーザーとグループの割り当て

SAML 連携した OpenAM を利用できる Entra ID (ユーザー)を指定するため「ユーザーとグループの割り当て」をします。
この「割り当て」により利用の認可と、利用者の「マイアプリ」内への表示が行われます。
※この割り当てが無い Entra ID (ユーザー)は OpenAM および連携している学認へ SSO できません。
EntraID-OpenAM_html_4972544e.png

割り当ての追加
EntraID-OpenAM_html_f5765902.png

「+ユーザーまたはグループの追加」からユーザーを追加します。
EntraID-OpenAM_html_792e05fe.png

OpenAM に割り当てるユーザーにチェックし、「選択」を押します。
EntraID-OpenAM_html_de3c500b.png

割り当てられたリスト
OpenAM にユーザーの割り当てが行われた結果画面
EntraID-OpenAM_html_769f7b9d.png

これで Entra ID 管理画面側の設定は完了です。
※まだ OpenAM への Entra ID (SAML IdP) の追加が終わっていないので「サインインのテスト」はエラーになります。
EntraID-OpenAM_html_c906fc2.png

1.3. OpenAM への Entra ID(IdP) の登録

Entra ID のフェデレーションメタデータXMLの加工

Entra ID からダウンロードしたフェデレーションメタデータ XML には SAML 以外に WS-Federation のメタデータもあるため、WS-Federation 部分を削除して、OpenAM へのインポートの準備をします。
<EntityDescriptor ID="XX...> タグの中は <IDPSSODescriptor protoco....攻略> タグのみを残し、以下の <Signature>, <RoleDescriptor> タグは削除します。

<Signature>
</Signature>
<RoleDescriptor xsi:type="fed:SecurityTokenServiceType" protocolSupportEnumeration="http://docs.oasis-open.org/wsfed/federation/200706">
</RoleDescriptor>
<RoleDescriptor xsi:type="fed:ApplicationServiceType" protocolSupportEnumeration="http://docs.oasis-open.org/wsfed/federation/200706">
</RoleDescriptor>

画像の黄色い網掛け部分が削除部分となります。
EntraID-OpenAM_html_eeda4428.png

Entra IDをリモートアイデンティプロバイダ(IdP)として登録

OpenAM管理コンソールへログインし、該当のレルムにて「SAMLv2 プロバイダを作成」を選びます。
EntraID-OpenAM_html_88b95971.png

「リモートアイデンティティープロバイダを登録」を選びます。
EntraID-OpenAM_html_c02a7c96.png

加工したフェデレーションメタデータ XML をアップロードします。
EntraID-OpenAM_html_5ca0c208.png

XML ファイルからアイデンティティープロバイダの登録が成功すると以下の画面となりますので、「了解」を押します。
EntraID-OpenAM_html_f41f7b6.png

次に「連携」タブを開き登録済みの Entra ID(https://sts.windows.net/056ca7bd-xxxxx) を開きます。
EntraID-OpenAM_html_f6b3c9d6.png

「表明コンテンツ」タブの「NameID の書式」を選びます。
EntraID-OpenAM_html_796b070b.png

NameID の書式リストに urn:oasis:names:tc:SAML:1.1:nameid-format:emailAddress を追加します。
EntraID-OpenAM_html_cd33a0cf.png

外部SAML IdPによる認証をするモジュール設定

登録した外部アイデンティープロバイダへ認証を移管するための認証モジュールを設定します。

該当のレルムの認証ーモジュールを開き「+モジュールの追加」をします。
EntraID-OpenAM_html_38472fed.png

名前は任意で「EntraID」とします。種類は「SAML2」を選択し、作成を押します。
EntraID-OpenAM_html_73778f86.png

SAML2認証モジュールの詳細画面が開きますので、必要な項目を記載します。

特に以下の項目は初期値から変更が必要となります。

IdP エンティティー ID https://sts.windows.net/056ca7bd-xxxxxx/
レスポンスバインディング HTTP-POST
NameIDフォーマット urn:oasis:names:flag_tc:SAML:1.1:nameid-format:emailAddress

EntraID-OpenAM_html_6651596f.png

認証連鎖の作成

次に作成した認証モジュールを利用する認証連鎖を作成します。
左メニューの「認証連鎖」を開き、「+認証連鎖の追加」を選び、任意の名前をつけて作成します。ここでは名前は「saml」認証連鎖とします。
EntraID-OpenAM_html_c4964a8d.png

saml認証連鎖の内容を編集する画面が開きますので、利用する認証モジュールを追加し条件は「Required」として「OK」を押します。
EntraID-OpenAM_html_6195a7a4.png

認証連鎖の内容は「entraid」認証モジュールとなり「変更の保存」を押します。
EntraID-OpenAM_html_66d61792.png

ユーザーの認証に作成した「saml 認証連鎖」を利用するために左メニューより認証ー設定メニューの「コア」タブを開き、組織認証設定を「saml」へ変更し、「変更の保存」を押します。
EntraID-OpenAM_html_9f0f24c6.png

以上で、OpenAM の認証に Entra ID を利用する設定は完了です。

2. 動作確認

ブラウザで OpenAM のログイン URL を開くとそのまま SAML 連携した Entra ID のサインイン画面へ遷移します。
EntraID-OpenAM_html_96ac3e63.png

Entra ID にサインインが完了すると OpenAM のユーザープロファイル画面になります。
これで OpenAM への SAML 連携による Entra ID を利用したログインは完了です。EntraID-OpenAM_html_ccd4e302.png

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