江戸博物館をまわっているとき、そのころ使われていた土製玩具(オモチャ)が展示してあったので、それをチー(引用註: 小学生である娘)に教えたら
お母さん「ほらほら、江戸時代の子どもってこういうので遊んでいたんだよー」
チー「へーっ」チー「お母さんてかわいそう」
人間にとって、過去の時間感覚を掴むのは難しいものです。
「令和から見れば昭和も江戸も同じだから」と笑うわけにも行きません。ギリギリ昭和生まれの私も「1972年にC言語が登場した」と言われても、今ひとつ「1972年」のイメージがつきません。
また、「Goは10年前の言語」と言われると、ドキっとする人は多いのではないでしょうか?
1972年の作品は?
一方で、こういう言い方をされればピンときます:
「君が子供の頃にビデオ1で見た、帰ってきたウルトラマン。あれが1972年だよ」
子供の頃見た映像作品は、細部までよく覚えているもので、帰ってきたウルトラマンならば・・・
- 車はあんな形をしている
- 男の子はみんな半ズボンを履いている
- 工場が煙をモウモウと上げている
- 貨物船の船長は憧れの職業
なんてイメージがすぐに浮かびます。
プログラミングとウルトラマンとスーパー戦隊の歴史
そこで、プログラミング関係の歴史と、主に以下の2シリーズを比較します:
- ウルトラマンシリーズ
- スーパー戦隊シリーズ
この2シリーズを選んだのは、比較的長寿で尺度として使いやすいため、また単に私がよく知っているためです。本当は女児に人気だった作品なども挙げた方がバランスが良いと思うんですが、私は「とんでぶーりん」ぐらいしか知りません。
言語などの年は概ねバージョン1.0をリリースした年、作品の年は第1話がテレビ放送された年です。同じ年の中での順序はいい加減です。
なお、このリストは「だいたいあの頃」を把握するためのものなので、列挙するにあたって適当に間引きしています。また、コンピュータ史的には、半導体メーカーや日本のマイコンの興亡も重要ですが、現代のプログラマーには直接関係なさそうなので省きます。
第二次世界大戦前
- 1911 IBM設立
- 1936 チューリングがチューリングマシンを定義
IBMが圧巻の1911年設立です。当時の日本は日露戦争翌年の明治44年です。
WW2後 〜 1960年代
- 1948 Plankalkül(発表のみ)
- 1949 EDSAC(世界初の実用的なプログラム内蔵式電子計算機)
- 1952 鉄腕アトム
- 1954 FORTRAN
- 1956 鉄人28号
- 1958 LISP(マッカーシーがMITで考案)
- 1958 月光仮面
- 1959 COBOL
- 1964 ダートマスBASIC
- 1966 ウルトラQ
- 1966 ウルトラマン
- 1967 ウルトラセブン
- 1969 Unix
- 1969 インターネット・プロトコル・スイート
このころの作品では、コンピュータが「電子計算機」と呼ばれたり、真空管やパンチカードを使っていたりするなど時代を感じます。一方で、その時代にUnixやIPが生まれているというのが驚きます。
個人的には、ウルトラセブンの、ウルトラ警備隊の隊員がタバコを吸っている、しかも司令室で堂々と吸っているシーンがのが印象的です。
1970年代
- 1971 仮面ライダー
- 1971 帰ってきたウルトラマン
- 1972 C言語
- 1975 マイクロソフト設立
- 1975 秘密戦隊ゴレンジャー
- 1976 アップルコンピュータ・カンパニー設立
- 1977 Oracle設立
お馴染みの企業が現れ始めた時代です。今の超巨大企業も当時はベンチャーでした。
1980年代
- 1980 Smalltalk
- 1980 ウルトラマン80
- 1980 電子戦隊デンジマン
- 1982 サンマイクロシステムズ設立
- 1983 C++
- 1985 Microsoft Windows 1.0
- 1985 ドイッチュが量子チューリングマシンを定義
- 1987 Perl
プログラミングの世界では、オブジェクト指向言語のSmalltalkとC++、動的スクリプト言語の元祖Perlなど、現在の言語に直接影響を与えた言語が登場し始めています。
個人的には、ウルトラマン80の、主人公が防衛隊のスーツ姿でスキーに興じるシーンが印象的です(当時はスキーが流行っていたから?)。
1990年代
- 1990 Haskell
- 1990 地球戦隊ファイブマン
- 1991 Linux
- 1991 Visual Basic
- 1992 恐竜戦隊ジュウレンジャー
- 1993 マイティ・モーフィン・パワーレンジャー(ジュウレンジャーのUSA向けリメイク)
- 1993 レッドハット設立
- 1994 Netscape Navigator
- 1994 Python
- 1995 Internet Explorer
- 1995 JavaScript
- 1995 PHP
- 1995 Ruby
- 1995 Windows 95
- 1995 超力戦隊オーレンジャー
- 1996 HTTP 1.0
- 1996 Java
- 1997 ウルトラマンティガ
- 1997 電磁戦隊メガレンジャー
- 1998 Google設立
IEが登場するなど、WEBの利用も開発も急速に拡大します。
メガレンジャーはコンピュータをモチーフにした戦隊で、変身するのが高校のデジタル研究会の部員だったり、変身アイテムの1つが携帯電話だったりしました。
ウルトラマンティガでも、隊員がボイスメールを受け取るシーンや、ハッカー少年が電力網をクラックするシーンがあるなど、視聴者にとってコンピュータ通信が身近になっているのがわかります。
2000年代
- 2000 C#
- 2000 未来戦隊タイムレンジャー
- 2001 Mac OS X
- 2001 Windows XP
- 2001 ウルトラマンコスモス
- 2001 百獣戦隊ガオレンジャー
- 2004 Mozilla Firefox
- 2004 Ruby on Rails
- 2005 魔法戦隊マジレンジャー
- 2006 jQuery
- 2006 ウルトラマンメビウス
- 2007 iPhone/iOS
- 2008 Android
- 2008 Google Chrome
- 2009 AngularJS
- 2009 CoffeeScript
- 2009 Go
- 2009 Node.js
- 2009 侍戦隊シンケンジャー
PCの次世代のデバイスとしてスマートフォンが登場しました。
また、Windows 9x系や旧MacOSはそれぞれ新OSに置き換えられました。
JSの世界でも、IEに代わってFirefoxやChromeのようなWEB標準準拠のブラウザが登場したり、ブラウザ間の差異を吸収するjQueryが登場したりしています。
戦隊では、ガオレンジャーで携帯電話が初期メンバー5人の変身アイテムとして採用されます。その後の作品でも携帯電話が定番です。なお、シンケンジャーには江戸時代の侍が携帯電話型アイテム(木製)を使って変身するシーンがあります。
2010年代
- 2011 Kotlin
- 2010 天装戦隊ゴセイジャー
- 2011 海賊戦隊ゴーカイジャー(35周年記念作品)
- 2012 Elm
- 2012 TypeScript
- 2013 Docker
- 2013 React
- 2013 ウルトラマンギンガ
- 2013 獣電戦隊キョウリュウジャー
- 2014 Swift
- 2014 Vue.js
- 2015 Microsoft Edge
- 2015 Rust
- 2015 手裏剣戦隊ニンニンジャー
- 2019 ウルトラマンタイガ
- 2019 騎士竜戦隊リュウソウジャー
流石にこの頃になると、みなさんもよく覚えている時期だと思います。
戦隊では相変わらず携帯電話型アイテムが人気ですが、キョウリュウジャーからはスマホ型アイテムが登場しました。
ウルトラマンでは、一部がYouTube限定で放送されるようになり、TV→ネットへの流れを感じます。
あとがき
C言語の「数を 0 で割ったときの動作は未定義」という仕様に割り切れない思いを抱いていたところ、C言語が初代ライダーや帰マンと同年代だと知って、「だからこんなムチャクチャな言語仕様なのか!!」と奇妙な納得感を得たので、この記事を書きました。
あと、1997年のウルトラマンティガの「クリスマスみたいにハロウィンが日本に定着するかもしれんな」というセリフが感慨深く思えます。
-
ビデオテープ(VHS)のこと。磁気テープに映像をアナログで記録していた。 ↩