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積年の「shutil.copy はメタデータをコピーしません」の回避策

Last updated at Posted at 2018-10-30

Pythonには、ファイル操作のための標準ライブラリ shutil が用意されていますが、そのドキュメントの冒頭には物々しい警告が書かれています。

警告 高水準のファイルコピー関数 (shutil.copy(), shutil.copy2()) でも、ファイルのメタデータの全てをコピーすることはできません。

POSIXプラットフォームでは、これはACLやファイルのオーナー、グループが失われることを意味しています。 Mac OSでは、リソースフォーク(resource fork)やその他のメタデータが利用されません。これは、リソースが失われ、ファイルタイプや生成者コード(creator code)が正しくなくなることを意味しています。 Windowsでは、ファイルオーナー、ACL、代替データストリームがコピーされません。

https://docs.python.jp/3/library/shutil.html

しかし、赤字で警告しているわりに**「ではどうすればいいか」が書かれていない**ため、読む側としては困惑するばかりです。Python 2.6の頃からこうのようです。なんだかな〜。

そこで、具体的にはどんなワークアラウンドをとればいいのかを調べてみました。

TL;DR

  1. shutil.copy, shutil.copy2 では、オーナーや日時がコピーされない
  2. オーナーは shutil.chown でコピーすればOK
  3. 最終手段 subprocess.run(['cp', '-p', src, dst]) で全てをコピーできる(でも、そんな必要ある?)

どんなメタデータがある?

OS独自・ファイルシステム独自のメタデータを調べだすとキリがなさそうなので、今回は stat コマンドで調べられるものだけ考えます。

Dockerで環境を作り stat コマンドを実行してみます。

$ docker run --rm --workdir=/root -it python /bin/bash
root@3d7f163bbb17:~# groupadd foo
root@3d7f163bbb17:~# useradd bar -G foo
root@3d7f163bbb17:~# echo hello > src
root@3d7f163bbb17:~# chown bar:foo src
root@3d7f163bbb17:~# chmod 777 src
root@3d7f163bbb17:~# stat src
  File: src
  Size: 6         	Blocks: 8          IO Block: 4096   regular file
Device: 68h/104d	Inode: 119         Links: 1
Access: (0777/-rwxrwxrwx)  Uid: ( 1000/     bar)   Gid: ( 1000/     foo)
Access: 2018-10-30 03:14:01.198071691 +0000
Modify: 2018-10-30 03:14:01.198071691 +0000
Change: 2018-10-30 03:15:41.571717800 +0000
 Birth: -

いわゆるメタデータとしては以下の属性があるようです。

  • パーミッション(Access)
  • ユーザー(Uid)
  • 最終アクセス日時(Access)
  • 最終修正日時(Modify)
  • 最終状態変更日時(Change)

Blocks などはファイルの格納状況についての指標で、コピーの対象ではないので無視します。作成日時(Birth)は、今回は取得できていないので無視します。

shutil.copy はどこまではコピーしてくれるのか

ドキュメントの説明によると、コピー内容は以下のようです。

  • shutil.copy: ファイル本体 + パーミッション
  • shutil.copy2: ファイル本体 + stat(パーミッション、最終アクセス時間、最終変更時間、その他)

実際に実行してみると、以下のことが分かります:

  • ユーザー(Uid)が、コピーをしたユーザー(root)になっている
  • グループ(Gid)が、コピーをしたユーザー(root)になっている
  • 最終アクセス日時(Access)が現在時刻になっている
  • 最終状態変更日時(Change)が現在時刻になっている

また、shutil.copy では最終修正日時(Modify)も現在日時になっています。

root@3d7f163bbb17:~# python -c 'import shutil; shutil.copy("src", "dst1"); shutil.copy2("src", "dst2")'
root@3d7f163bbb17:~# stat dst1 dst2
  File: dst1
  Size: 6         	Blocks: 8          IO Block: 4096   regular file
Device: 68h/104d	Inode: 597         Links: 1
Access: (0777/-rwxrwxrwx)  Uid: (    0/    root)   Gid: (    0/    root)
Access: 2018-10-30 03:18:51.788627495 +0000
Modify: 2018-10-30 03:18:51.788627495 +0000
Change: 2018-10-30 03:18:51.788627495 +0000
 Birth: -
  File: dst2
  Size: 6         	Blocks: 8          IO Block: 4096   regular file
Device: 68h/104d	Inode: 598         Links: 1
Access: (0777/-rwxrwxrwx)  Uid: (    0/    root)   Gid: (    0/    root)
Access: 2018-10-30 03:18:51.788627495 +0000
Modify: 2018-10-30 03:14:01.198071691 +0000
Change: 2018-10-30 03:18:51.788627495 +0000
 Birth: -

cp コマンドの場合は?

cpコマンドでコピーしてみると、ユーザー・グループ・各種日時が変わっています。また、Linux(Posix)では、パーミッションが umask でマスクされるので、これも変更されます(0o777 & 0o022 == 0o755)。

root@3d7f163bbb17:~# cp src dst-cp1
root@3d7f163bbb17:~# stat dst-cp1
  File: dst-cp1
  Size: 6         	Blocks: 8          IO Block: 4096   regular file
Device: 68h/104d	Inode: 604         Links: 1
Access: (0755/-rwxr-xr-x)  Uid: (    0/    root)   Gid: (    0/    root)
Access: 2018-10-30 03:24:16.760432208 +0000
Modify: 2018-10-30 03:24:16.760432208 +0000
Change: 2018-10-30 03:24:16.760432208 +0000
 Birth: -
root@3d7f163bbb17:~# umask
0022

一方、-p オプションをつけると、メタデータもコピーしてくれます。ユーザー、グループ、パーミッション、最終アクセス日時、最終変更日時がコピーされているようです1

root@3d7f163bbb17:~# cp -p src dst-cp2
root@3d7f163bbb17:~# stat dst-cp2
  File: dst-cp2
  Size: 6         	Blocks: 8          IO Block: 4096   regular file
Device: 68h/104d	Inode: 605         Links: 1
Access: (0777/-rwxrwxrwx)  Uid: ( 1000/     bar)   Gid: ( 1000/     foo)
Access: 2018-10-30 03:18:51.788627495 +0000
Modify: 2018-10-30 03:14:01.198071691 +0000
Change: 2018-10-30 03:28:58.270658164 +0000
 Birth: -

結局、どうすればいいのか?

調べた結果から以下のことが分かります。

  • shutil.copyshutil.copy2 ユーザー・オーナーをコピーしない
  • shutil.copyshutil.copy2 は各種日時もコピーしない
  • shutil.copyshutil.copy2cp とも cp -p と振る舞いが異なる

そのため、例えばシェルスクリプトを、Pythonで書き直す時、単純に cpshutil.copy に置換すると振る舞いが変わってしまいます。

cp -pを完全再現する(日時までもコピーしたい)

osshutilを見る限り、最終アクセス日時や最終変更日時をコピーする関数はありません。cp -p を直接使うしかなさそうです。

import subprocess
subprocess.run(['cp', '-p', 'src', 'dst-workaround-1'])

実行して見ると(当たり前ですが)日時もコピーできています。

しかし、ディスクバックアップツールなどの特殊なケース以外は最終変更日時や最終アクセス日時をコピーする必要はないと思います。

ユーザーやグループをコピーする

shutil.chownを使います。ユーザー・グループは文字列ででもIDででも指定できます。

また、元ファイルのユーザー・グループは os.stat で取得できます。

import shutil, os
shutil.copy2('src', 'dst-workaround2')

# ユーザー/グループがあらかじめ分かっている場合。
shutil.chown('dst-workaround2', 'bar', 'foo')

# ユーザー/グループを、元ファイルからコピーする場合
st = os.stat('src')
shutil.chown('dst-workaround2', st.st_uid, st.st_gid)

パーミッションを変更する

shutil.copyshutil.copy2 はファイルのパーミッションをコピーしてくれますが、パーミッションを変えるにはos.chmodを使います。

import shutil, os
shutil.copy2('src', 'dst-workaround3')
os.chmod('dst-workaround3', 0x755)

また、(あまりないと思いますが)cp のように、umask を適用したパーミッションにしたいという場合は、os.umask で値を取得できます。なお、os.umaskPOSIXのumask(2) の仕様を反映し「値を変更して以前の値を返す」という使いにくいインターフェースになっています。

import shutil, os
shutil.copy('src', 'dst-workaround4')

umask = os.umask(0) # 現在の値を取得するために、適当な値で呼び出す
os.umask(umask) # 値を元に戻す

# パーミッションを umask でマスクする。
mode = os.stat('src').st_mode & ~umask
os.chmod('dst-workaround4', mode)
  1. よく見ると最終アクセス日時が最初に stat src したときと変わっていますが、実際にアクセスがあったので仕方がありません。

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